おまつり。

 悲しい。

 

 ただ、ただ悲しい。

 エラーで6日目の入場ボーナスが手に入らなかった。


 楽しみの一つが消えて、意気消沈。

 頭にズーンとおもい影。 


 「あぎゃあぎゃ。」


 落ち込んでいるのを察したのか、アイアンがふくらはぎの辺りをポンポンと叩いて励ましてくれる。

 

 ありがとう。


 しょうがないよね。

 気を取り直して進もうとすると、入場ボーナスウインドウが消えていないことに気づく。


 いつもだったらカプセルを開けたらすぐに消えていたのに。

 取り合えず受け取るボタンをもう一度押す。


 ポンと出て来る青色のカプセル。

 今度こそは!と開けようとすると、同じようにノイズが入り、青い粒子となって消えていった。


 ガックリ。


 期待させやっがって…。


 しかし、まだボーナスウインドウは消えていない。

 

 おや?


 ……


 もう一度押す。

 出て来る青色のカプセル。

 開けようとすると、消えて無くなった。


 しかし、まだボーナスウインドウは消えていない。



 これ、無限ループ。

 …無限ループっていいよね?



 頭の中の司令官が良い笑顔で「私にいい考えがある。」と仰っているので、指示に従うことにする。


 もう一度受け取るボタンを押す。

 出て来る青色のカプセル。


 今度は開けようとせず、そのまま砂利道に置く。


 そしてもう一度ボタンを押す。

 出て来る青色のカプセル。



 あっ、、、

 

 

 青色のカプセルが二個。



 きた!きた!きたぁぁぁぁぁ!



 もう一回押して3個。

 もう一回押して4個。

 もう一回押して5個。


 

 開けなければ増えるカプセルに、脳内がお祭り状態。



 もう一回押して6個。

 もう一回押して7個。


 ここまで来たら、どこまで増えるか試したくなるのが人というもの。



 連打、連打、連打。



 どんどん増えていく青色のカプセル。

 タマにお願いして端から全部回収してもらう。

 

 アパートに帰ったらどれだけ増えたか見せてもらおう。



 連打、連打、連打。



 青カプセル無限増殖をしていると、前方からこちらへ歩いてくる複数の人影。

 一旦増やすのを止める。


 何事も無かったかのように頭を下げてすれ違おうとするが、なぜか話かけられる。


「あら、そちらの猫ちゃん、とても可愛いですわね。」


 ドキリ。


 声を発した人を見ると、昨日見かけた誘拐されそうなお嬢様だった。

 周りには護衛っぽい怖い人達に、デカくて白い狼もいる。


 怖っ。


「はは、はい。うちの可愛い相棒なんですよ……。」


 しどろもどろに成りながらも、どうにか言葉が出た。

 偉いぞ、自分。

 

 そのまま「すみません、先を急ぐんで。」と断りを入れ、駆け足で逃走。

 まだなにか話したげなお嬢様には少し罪悪感を感じたが、それ以上に周りにいた護衛っぽい人達の、中の一人が怖すぎた。


 よく『生きて積み上げたものが顔に出る』と言うが、どれだけのことを成したら、あそこまで恐ろしい顔になるのだろう。


 人を百人殺めてもああはなるまい。

 



 




 追跡は無し。

 無事、人がいなそうな奥まった所まで逃走することに成功。

 お酒を飲んで気合を入れ、カプセル無限増殖を再開する。



 連打、連打、連打。


 

 カプセルは開けようとすれば消えてしまうが、何か使い道はあるだろう。



 連打、連打、連打。



 途中、アイアンもやりたそうにしてたので、代わってあげようとしたが、アイアンでは受け取るボタンを押すことが出来なかった。



 連打、連打、連打。


 

 一時間ほど連打を続けていると、急にウインドウが切り替わり、




 メンテナンス中です。




 の文字。

 受け取るボタンが消えて無くなる。


 どこの誰が運営しているのか知らないが、対応されてしまった。

 カプセルラッシュのお祭り、これにて終了。


 にじむ両手。

 いい汗をかいた。


 アパートに帰るのが楽しみだ。

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