歌うかぼちゃ。
かぼちゃのお化け?を両手で受け止める。
軽い。
大きさはタマと同じぐらいなのに、重さは半分ぐらい。
大きな単眼をギョロリと動かし、頭の上に少しだけ生えた蔦をくねくねさせている。
「ぎゅあ!、ぎゅあ!。」
何を伝えたいのか分からないが、顔がわかりやすく笑顔なので嬉しいんだろう。
取り合えず机の上に戻し、名前を考える。
機嫌よく机の上で左右に揺れているカボチャオバケの名前を考える。
考える。
………
考えるが、何も思いつかない。
しかたない。
野良猫に名前を付ける時のいつものパターンでいこう。
「よし!。とろけるお肉を食べてたから、今日から君の名はトロケだ!。」
しかし、何だか周りの反応が良くない。
むっ、とした顔になるかぼちゃオバケ。
呆れてやれやれだぜ、と言わんばかりのタマ。
どうもこの名前は不評のようだ。
別の名前を考える。
「目がぎょろっとしてるから、ギョロギョロ!」
タマに叩かれる。
ダメらしい。
「元はタマの姿だったから、タマモト!」
もっと叩かれる。
カボチャオバケも蔦を伸ばして叩いてくる。
かなり駄目らしい。
……
どうしよう。
二面楚歌。
悩んでいると、ふっと自分の好きな映画の推しヒーローを思い出す。
鋼鉄の男。
不退転意思。
「自分の好きな最強のヒーローから名前をもらって、君の名はアイアンだ!」
一瞬の間の後、机の上を飛び跳ねるカボチャのアイアン。
気に入ってくれたのか、嬉しそうな笑顔だ。
タマも何だか穏やかにうんうんと頷いている。
そのまま机を飛び降り、畳の上を跳ね回りながらどこかで聞いたような歌を歌いだした。
「あぎゃ!、あぎゃ!、ぎゅあぅあ~♪!」
「あぎゃ!、あぎゃ!、ぎゅあぅあ~♪!」
楽しそうに歌い行進するアイアンを見て自然と顔が笑顔になる。
陽気な仲間が増えた。
ならば今必要なことはただ一つ。
祝い酒あるのみ!
冷蔵庫の中からこういう時のために買っておいた秘蔵のお酒、芋焼酎「真・はりもぐら」を取り出す。
ストレートも良いがここはお湯割りでいこう。
鉄瓶でお湯を沸かす。
音につられてアイアンが寄って来るが、危ないかもしれないので、持ち上げて机へと運び、待っててもらう。
ついでにお酒のあてとして、とろけるお肉を取り出し、焼く。
アイアンがあんなに美味しそうに食べてたんだから、滅茶苦茶美味しいのだろう。
火を通せば人間も食べられるはず。
………たぶんね。
良い感じに湧いたお湯と皿に移したお肉を手に持ち、机へと戻る。
お肉の御到来に目を輝かせて喜ぶアイアン。
半分に切り分けてアイアンの前に置くと、お酒も飲みたそうにしていたので、コップに注いで横に置く。
タマは食べないし、お酒は飲まないので、タマ用のお皿に水を注ぐ。
自分用にお茶碗にお湯割りを作り、準備完了。
「新たな仲間と世界平和のために」
「ぎゅあ!、ぎゅあ!」
乾杯。
コップと皿と茶碗を、そっとあてる。
焼いたとろけるお肉を口に入れると、死ぬほど美味しかった。
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