人生回し車。

 スケルトン無限周回。

 魔石無限回収。


 無限回収、なんていい響きなんだ。

 心が洗われる。


 スケルトンの群れをワンパンで吹き飛ばして、ぽろぽろ落ちる魔石を笑顔で回収していく。

 そういえば大学生の頃ハマってたカードゲームの、推しのイラストレーターさんが描いたスケベなカード、他県のカードショップまで行って無限回収していたなぁ。

 オークションやトレードまで手を出して6千枚集めたけど、引っ越しを機に手放しちゃったな。

 

 懐かしい。

 今となってはなぜあそこまで熱意を持って収集していたのか不思議に思うけれど、あの時の自分にとっては黄金以上の価値があったんだろう。


 いい思い出として記憶の宝箱にしまっておく。


 過去のよき日に、乾杯、、、と行きたくなるが直前で思いとどまることに成功。

 お酒をリュックに封印する。

 家まで我慢。



 魔石をどんどん集めていく。

 リュックがずんと重くなる。


 途中、他の探索者がこちらを見て指さしていたが、気にせず走り抜ける。

 

 4時間スケルトンを倒し続け、リュックも一杯になり、いい時間になったので帰ることにする。

 ドロップでそれなりに出たスケルトンの骨は買い取ってくれないだろうが、日本人特有?の勿体ない精神が働き、捨て置けずに持って来てしまった。


 きっと何かの役に立つだろう。


 心地よい疲労を感じながらダンジョンを出る。


 出る時に警備の人に心配されたが「大丈夫です。無傷なんで。」 と言ってそそくさと逃げ出し、買い取り窓口へ。


 買い取り待ちの間も、やはり服がボロボロだからか視線を感じる。

 微妙な気分。

 

 早く服を変えたい。


 本日の成果である4万1000円を受け取り、内心大喜びしながらも、小走りでダンジョンセンターを後にした。


 ちなみに、スケルトンの骨は予想どうり買い取ってくれなかった。



 そのまま大型量販店へ向けて靴と服を求めてタマと歩いいると、警察に呼び止められる。


 ……はい。


 ……はい。


 ……はい。


 ……気を付けます。


 恰好酷すぎ罪でしょっ引かれるのかとドキリとしたが、そうでもなかった。


 何でも、この辺で逃げ出した大きいカボチャのモンスターが目撃されたらしく、それの聞き取り調査だったらしい。


 ネットのニュースで見た話しだったから、どこか遠くの出来事だと思っていたら案外近かった。世の中広いようで本当は狭いのかも。


 恰好に関しても聞かれたが、ダンジョン帰りで服を買いに行く途中だと伝えたら、すぐに開放してくれた。




 数分ほど歩き、要塞のような大型量販店に到着。

 直ぐに2階の衣服売り場へと移動し、一番お求め安い服と安全靴を購入。

 即座に装着。


 新しい服に新しい靴。

 気分を新たにして一階の食品売り場で夕食を選ぶ。


 悩み抜いた末に丁度半額のシールが張られた10個入りの餃子と3割引きのメロンパンを購入し退店。


 帰り道。

 久々のメロンパンを「うめぇ。うめぇ。」と喜びながら食べ歩いていると、

 違和感。

 

 視線を感じる。

 服を変えたのに。


 しかし周りでこちらを見ている人は見当たらない。

 何だか嫌な感じになってきた。


 勿体ないがメロンパンを胃に流しこみ、タマを肩に乗せ、駅へと駆け込む。

 幸いなことに、駅に入ると視線を感じなくなった。


 そのまま何事もなく電車に乗り、無事に帰り着くことが出来た。


 

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