よし、壁を叩こう!

 そうじ は スライム に こうげき しようとした!

 しかし ざいあくかん が うまれて こうげき できない!


 厄介だ。これは厄介だ。


 ゲームでエンジョイ勢の敵さんとハートの建物を一緒に作って、仲間意識だか罪悪感が生まれて、撃てなくなるあの時の気持ちだ。


 最後には勝利まで譲ってもらって…………。


 ………


 ………


 無言でリュックに手を入れる。お酒を取り出す。

 最強のお酒ウルトラストローグ11。


 グビッ、グビッ、グビッ、ひと息で飲み干す。うめぇ!


 湧き上がる全能感、無限のやる気。

 打ち消される罪悪感、見えなくなる現実。


 ふふっ……お酒に体を支配させ、元の自分に戻ることが出来た。

 おかげで……今は、いい気分だぜ…。




   TIPS 

   酒。 人に笑顔と喜びを与える命の水。百薬の長。依存性が

   非常に高く、緩慢に苦をまき散らす民間に溶け込んだ毒。

   「禁酒なんて簡単ですよ。今月はもう10回やりました。」



 


「これも生活のためなのよね」と足を振り下ろし、スライムを倒していく。

 

ふらふらとタマの後をついていき、3階層への階段もあっさり見つける。

そのまま降りる。


2階層と同じ草原に晴天。

確か3階層から宝箱が出るんだっけか。ちょっと楽しみ。


中身は殆ど木の枝や木の皮と聞いたが、自分が開けたらなにか良い物がでるにちがいない!


何故かわからない圧倒的な自信。

100点満点中一億点ぐらいの自己肯定感。多分酒パワー、もう一本飲もう!


30分程、意識もうろうとしながらスライムを倒していると無事、宝箱を発見。

木で出来てて思ってたよりでかい。幼稚園児なら二人ぐらい入れそう。


意気揚々と宝箱を開ける。わくわくがとまらねぇ!



しかし木の枝。


顔から笑顔が消える。


更に30分後、今度は2つ並んだ宝箱を発見。これは良い流れの予感!


今度こそはっ!と宝箱を開ける。



しかし木の枝。


いや! まだもう一つある!きっとすごいのが出る!



しかし木の枝。


真顔になる。

酔いも覚める。


確かに、誰も開かないと言われるだけのことはあった。

A4印刷用紙よりちょっと大きいぐらいの枝。使いどころが分からない。


まぁまぁ、しょうがない。

一応、記念に持って帰ることにする。3本ともリュックに入れる。


もう帰ろう。

そうしよう。


帰路につこうと一歩を踏み出した瞬間、天啓がひらめく。



ダンジョンってゲームみたいだし、壁の中に隠し部屋があるのでは?



夢の次元収納鞄や不老不死の秘薬が、隠し部屋にあるかもしれない!


善は急げ。

というわけで草原を走る。走る。疲れたのでやっぱ歩く。


2分走り10分程歩いて草原の端っこ、透明な見えない壁にたどり着く。


よし、叩こう!

叩けばきっと隠し通路が現れるはず。きっと。多分。may be。


叩く、叩く、1mずれる。

叩く、叩く、1mずれる。


………そういやこの透明な壁、どうなってんだろう……?


叩く、叩く、1mずれる。

叩く、叩く、1mずれる。


………今日の夕飯、何にしようかなぁ……?


叩く、叩く、1mずれる。

叩く、叩く、1mずれる。


………もしかして叩く回数が少ないとか……?


叩く、叩く、叩く、1mずれる。

叩く、叩く、叩く、1mずれる。


………なんか眠くなってきたな……


叩く、叩く、叩く、1mずれる。

叩く、叩く、叩く、1mずれる。


………


……



タマに叩かれてはっとなる。

時計を確認。19時30分。


叩くことだいたい6時間。


なんとなく3階層の壁を全て叩き切ったことを理解する。


ああ、そうだ。

このセリフを言わねばならない気がする。



なんの!


成果も!!


えられませんでした!!!

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