ダンジョンってなんだ?

 ダンジョンに行こうと方針を決める。

 決めたはいいが、


 さすがにジーパンとTシャツでは良くないか。


 財布の中身をみる。


 入っていたのは百円玉一枚に10円玉6枚。

 おまけにかなり昔の硬貨が一枚。


 なんだったか。


 どっかの本で見た、

 『財布に昔の硬貨を入れるとお金の巡りが良くなる』ってことで

 入れたんだった。    


 金運UPのオマジナイ。

 

 まぁ、いいか。


 260円あれば二駅先の初心者ダンジョンにたぶん行ける。

 ジーパンとTシャツでも

 一階でスライムを倒すぐらいなら大丈夫でしょう。

 

 そう、

 大丈夫。大丈夫。



 大丈夫ついでに冷蔵庫を開き、景気付けにお酒を飲む。

 流し込むはウルトラストローグ11。


 半分飲めば強くなった気になるすごいやつ。


 グビッ、グビッ、グビッ、


  ぷはぁーーー、      


 「うめぇ! まじでうめぇ!」



  おめでとう!

  みつかい そうじ の やるきがUPした!

  みつかい そうじ の ざいあく かん が downした!

  みつかい そうじ は げんじつ が みえにくく なった! 



 目の前に青白いウインドウが現れ、ステータスの変化を報告する。

 

 やったぜ!なんか強くなったに違いない!

 HAHAHA!オレは最強だああああぁぁ!


 勢いのまま時計を確認する。午前8時50分。

 これなら昼までにダンジョンに入れそうだ。


 戸締りをして家をでる。

 タマもダンジョンに行きたいのかついてくる。


 道すがら自販機で缶コーヒーを買って飲む。うん、うまい。


 なぜだかタマに叩かれたが、よくわからない。(サビ猫のタマはかわいいなぁ)


 10分程歩いて駅に着く。

 切符を買おうとするが足りない。

 

 お金さんが足りない。

 足りないのである。


 なぜだかわからない。

 家を出る時には260円あったはず。


   そうか!缶コーヒーを飲んだからか!

             ならしかたないな!

               缶コーヒー美味かったもん。うん。



 なにはともあれ、初心者ダンジョンへ向けて二駅分歩くことにする。


 よくよく考えてみれば、ここ半年まともに運動してなかった。

 良い機会なのかもしれない。


 ポジティブシンキングでいこう。


  横を歩いてくれる猫がいる。

    朝から酒も飲めている。

      缶コーヒーだって飲めているんだ。


  自分は今、三国一の幸せものかもしれないなぁ。

  ハピハピハッピー!ハーッピー!



 なんたって口うるさい上司もいないんだ、上司も…上司……



 感じる悪寒。胸痛。

 吐き気。震えだす手、足。



 両手で体を抱きしめ、言葉にする。



「大丈夫、もう退職したんだ。」「大丈夫、自分はまだ生きている。」



 言葉にして落ち着かせる。

 だんだん落ち着いてくる。



 忘れよう。忘れちまおう。


 タマを撫でる。

 撫でてると嫌なことが忘れられる。


 ありがたい。





 一時間ほど歩いてダンジョンセンターに無事に到着。



 あ、



 ダンジョンライセンス、持ってくるの忘れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る