適正判定。向き不向きは人それぞれ。

 ダンジョンライセンスを忘れた。

 いやぁ、うん。


 あれがないと多分ダンジョンに入れない。


 どうしたものか。


 受付のお姉さんに無理言って入れてもらえないだろうか。


 ………迷惑だろうな。

 手間のかかる探索者が来た、と不快にさせるのは申し訳ない。


 

ため息一つ。



諦めて家に戻ろうと考えていると、足首をタマに叩かれる。

タマがなにかくわえている。




 ……なんということでしょう。


そこには家に忘れてきたはずのダンジョンライセンスがありました。


 ヤッタゼ!ありがとう!タマ!

 これでダンジョンに入れる!


一瞬、「どうやってタマが持ってきたんだ?」と思考が流れて来る。


が、


どうでもいいか。そんなの。


今ダンジョンに入れる喜びに押し流されて、不思議に思う気持ちは消えてなくなる。

こ踊りしながら受付に向かう。



  TIPS  

   ダンジョン。およそ30年前に地球上に現れた異界に繋がる渦。門。

   穴。内部は地球環境に酷似しており、スライムやゴブリンなど空想

   上とされてきたモンスターが活動している。討伐することで獲得で

   きる魔石はエネルギーに転用でき、民間企業や一部団体によって管

   理、運営されている。なぜ現れたのか。なぜモンスターが活動して

   いるのか。一切が不明。




 意気揚々と受付のお姉さんにダンジョンライセンスを見せて入場申請をする。


 申請をする……。


 申請をする………。

 

 ………。



 長い。  



 名前を書く書類が多い。


 書いてある規約もよくわからない。

 取り合えず、同意する。


 なんでもライセンス取得が10年以上前だから色々手続きがあるみたいだ。

 

 そういえばダンジョンライセンス取ったの大学の時だったなぁ。

 あれから13年か。月日が流れるのは早いなぁ。


 ぼんやりと昔のことを考えながら書類に名前を書いていく。

 写真を撮り、10分程待つと新しいライセンスカードが交付される。   


 やったぜ!

 



 ……ライセンスカードの発行手数料が2500円だそうだ……。




 あれれー? おかしいぞー? 

 財布の中に10円しか現金さんが入ってないのですが。


 いやいや、10円 も!  も!  

 現金様が入っていらっしゃる。




 ………はい。

 はい。



 ……。

 


 持ち合わせがないことを伝えると後払いでもいいらしい。

 ありがてぇ。ありがてぇ。


 受付のお姉さん神に従って別室に向かう。


 部屋に入ると目の前に真っ黒いでかい球。

 球から伸びる無数の配線。


 この黒い球の前に立つと適正やステータス、スキルとかが簡易的に分かるらしい。


 立ったまま30秒ぐらい待つ。


「はーい。終わりましたー。ありがとうございまーす。」


「あ、はい、ありがとうございます。」

 ありがとうと言われたので、


 取り合えずありがとうをかえす。


 部屋を出ると受付のお姉さん神から、簡易的なステータスが書かれた紙が手渡される。 


 確認する。

 自分は魔力が多くヒーラーに適正があるらしい。 はぁ・・・。

 本心ではNINJA!になりたかったなぁ、と落胆。



「素晴らしですね。ヒーラー適正のある方って本当に少ないんですよ。おめでとうございます。」



 受付のお姉さん神に手放しで褒められる。



「はぁ、ありがとうございます。」

 

気のない返事をかえしてしまった。

やばっ。反省。笑顔を作る。 笑顔に変えてもう一度、


「ありがとうございます!」


と言葉にする。



受付前に戻り、

お姉さん神からもろもろの説明を5分ほど受ける。

これで手続きは終わりとのこと。


やったぜぇ!

ようやくダンジョンに入れるぜぇ! いぇー!



「はい!。後は、10時からのダンジョン探索注意動画を2時間見て頂ければダンジョンに入れますよ!。」



……ハァ?



……


……ハァ?

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