第119話 エレブンどんな気分?


 画面が切り換わり派手な音楽が流れる。


「国王:セブ=フライバード」


 眉間にシワを寄せた国王の執務シーンがアップになる。


「宰相:オースチン=P=デラベッピ」


 部下に指示を出してるシーンだろうかピシッと指を差した処で絵が止まりパンする。


「その他豪華キャストでお届けする渾身の話題作」


 静かな音楽に切り換わりナレーションが続く。


「激務に耐えて国を支える者達には、健康を支える秘訣があったのだ……国王は奥様に御提供頂いて飲尿健康法を、宰相は最早何も出ないお母様のオッパイを吸う安眠法を実施。他の貴族様達の健康の秘訣も漏れ無くチェケラぅ!」


 映像はダンディなスマイルで乾杯する国王、そして我が子を慈しむ聖母の笑顔で五十路越えの宰相を寝付かせる老婆。

 シーンは切り換わり宮殿の奥深く、或いは上位貴族の寝室や怪しい感じの部屋などが次々と映し出される。

 期待感を煽るドラムロールをハイハットが締める。


「第一部で国民の耳目を王侯貴族に集めた処で第二部の目玉は国内の賄賂や着服、杜撰な予算管理の実態を余すこと無くお伝えするぜ!安心してくれ、特製パンフレットも漏れ無く無料配布するからな!ドンミセット!」


 エイトビートでパワーコードが刻まれながらゴキゲンなメロディがスウィングする。


「そして待望の第三部!……舞台は最早国内に収まらない……複数の国との辻褄の合わない数々の秘密協定が今、白日の元に晒される!小国の対立を煽り自国の国益に還元する政治的手腕は国際社会のお手本になり得るか!?乞うご期待!!」


 壮大なオーケストラで締められたと思いきや取ってつけたようなシーンが流れる。

 

「大方、尻尾を掴んだ気になって調子に乗った小バエが粋がっておるのであろう?朕が認めなければ何事も事実にならぬのに憐れな者よ」


 アップで映し出される国王、そして被さる“これで認めてくれるかな?”の1文。 


 コメディタッチのギターフレーズで締められて暗転すると、天井付近から何らかの機械が焼き切れたような小さい煙が吹き出す。




 ――――――――




「しかしまぁ……情報集めるより編集の方が時間かかってるってのは正直どーなのよw」


 一段落して一服する俺ちゃん達、お?中々の紅茶ですなぁ。


「それなwwwけれど今でも最後のキャッチフレーズは“これで認めてくれるかな?”よりも“ねぇ、どんな気分?”が良かったんじゃないかと悩むけどなwww」


 流石のコダワリを見せるパイセン。


「次回作に取っとけばいいんじゃないですか?あるかどうかは定かではないですけれど(苦笑)」


 海洋生物型ビーストの試験運用が出来たザッキーはご機嫌の様子。

 ちなみにザッキー曰く「情報収集も最新ホットではなく慢性的なものばかりでしたから手間なんて掛かってないんですよね……それよりもあんだけ薬好きなんだから摂取させた上でのご乱行らんぎょうをスクープする手筈だったんですが、皆さん揃いも揃って持病持ちなのは閉口しましたね(苦笑)」との事。


 間を置かずに他の列強国にも同様の処置がなされた、もうやる事は焼き直しなので編集含めてA.I.に丸投げだ。

 反応は大同小異だったのだが、軍事力(とついでに好感度)がお互いに下がったところで侵略行為に割けるリソースも無いので戦争も起こらない。

 船は勿体無かったけどこれからの造船ブームで技術を高めて欲しい所存。


 赤い国には軍事力を下げられるとカオスな事になりそうだったので醜聞スキャンダル砲三弾撃ちに留めておいた。

 カーッ、俺ちゃん達ってば優すぃね♪

 赤い国各国首脳には薬絡みのチョッカイの件は闇に葬ってやるからシッカリ粛清しとけよ?ってメッセージも伝えておいた。

 周辺国連合の関係者、主に外国窓口も綺麗にナイナイしといた。

 むしろソレが一番手間が掛かったまである。



 

 そしてと思う、多分この星の魔王最有力候補はザッキーなんじゃあないかって。



 

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