第118話 海洋国家エレブン
海洋国家エレブンは自由都市周辺国連合を囲む国々の更に北に広がる海に浮かぶ、先進国と呼称してる島国である。
海に囲まれた天然の守りに任せ、結構やりたい放題やって来た国だ。
高い造船・操船技術による軍事力を背景に遠方の後進国に外征を行い、不平等な貿易条件を飲ませて植民地化し富を蓄え更に軍事に資本投下する。
それらを繰り返し決して広大とは言えない国土でありながら列強国として名乗りを上げていた。
海を挟んだ先の諸国に対して時には肩入れし、時には裏切り、戦乱によるパワーバランスを保たせる事で自国の優位性を確保する政策を採っていた。
エレブン国宰相オースチン=P=デラベッピは決断を迫られていた。
執務室の机上には概ね2種類の書類がまとめてあった。
国内における王族や貴族の
そして手紙が一通、シンプルに「おたくの国はやりすぎた、列強の代理戦争から手を引け」と。
恐らくは自由都市周辺国に関する様々な政治的関与の事を指しているのだろう。
自由都市に絡む利権は年々大きくなっており冒険者風情に任せるには些か荷が重いと考える列強諸国は、周辺国に介入する事でその利権を勝ち取ろうと画策してきた。
東の大国ホステショ、南海の玄関口ミニスタ、大陸の覇権を唱えるファーマ等々、介入していると考えられる列強諸国は枚挙に暇がない。
様々な肩入れや裏切りにより国力を疲弊させた後に後ろ盾として利権をさらう、考える事は皆同じなのだろう。
確かにエレブンは自由都市から手を引いたとしても海洋貿易による黒字で国家としては左団扇を気取っていられる。
それに突きつけられた各種資料は致命的なものばかりだが、其れ故に安々と引く事は強国としてのプライドが許さない。
だが握り潰すレベルを大きく超えてる為、国王セブ=フライバードへの報告は必須である。
「ふむ、よく調べてはあるが裏付けのある話は何一つ無かろう。主力艦の構造上の問題も機密ではあるが運用で解決出来る、そうであったな?」
鷹揚に書類を眺めながら気怠げに述べる国王、どうやら大して問題視してない様だ。
「大方、尻尾を掴んだ気になって調子に乗った小バエが粋がっておるのであろう?朕が認めなければ何事も事実にならぬのに憐れな者よ」
絶対的上位者として驕りは事実すら捻じ曲げるのに何の躊躇も無いのだろう、だが機密漏洩が発生した事は看過し難く緊急対策を練る必要に駆られた。
そして急遽召集された対策会議にて、事件は起きたのだ。
すり鉢状の会議場、その斜面に配置された各席は最上段に国王が座し、以下身分ごとに高さの違う席次で埋められる。
今回の漏洩した設計図の管理体制の在り方や責任者への糾弾、漏洩ルートの割り出し等々一頻り盛り上がった処で突然空中に風景が浮かび上がる。
何事かと騒然とする中で映し出されるのは港の風景、特徴的な形状のマストに飜える国旗はエレブン国の主力艦だと言うのが見て取れる。
そしてそのマストが次々と倒れ、艦の後部から沈んでゆく。
予てより指摘されていた脆弱性を抱えていた部位だ。
新型艦も、そして同様の設計思想で組まれていた旧型艦も画面が切り替わる度に轟沈してゆく。
目ざとい者なら気付いたであろう、風景の切り換わりからも単独の港では無く国内のあらゆる軍港の景色が映し出されていた。
呆然とする中で画面が切り替わる、暗転して映し出されるのは「SOUND ONLY」の文字列だ。
「レディース&ジェントルマン!只今ご覧になって頂いたのは栄えあるエレブン国の軍事関連港7と軍事試作港4を合わせたライブ映像でした!」
突然のアナウンスにざわめく場内、それに被せるように
「ご安心下さい、国営軍事試作港は1つだけですが王家と公爵家そして侯爵家が隠れて作った港もそれぞれキチンとカウントしてますので数字に間違いはありません!沈んだ船はマストと竜骨、そして舵に深刻な損傷が発生した為に再起不能とお考え下さい。エレブン国籍の軍艦、これは私掠船も含めててすが実に八割以上が海のもず……藻屑となりました!w」
再びざわめく場内、何やら叫びだす者まで出てくる始末だ。
沈黙を守る
「皆さんが静かになるまで12分かかりました。有事の際に決断を迫られる立場にある方々としては反省すべき数字です。ま、それはさておき先程の映像は皆様が後進国と定義なされてる国々にも配信させて頂きました♪貿易に関する取り決めは全て見直されるでしょうねぇ(苦笑)」
三たびざわめく場内、今度は流石に程なく潮が引く様に静かにはなった。
「学習能力低いんだなwwwあー、もう最後まで一気に話すから口を閉じてろよ?現在稼働してる
そしてトレーラームービーが流れ出した。
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