第112話 パレードしようよ


 ハイランド騎士国の首都スプリング、王城へ続く中央通りを簡易拘束具で身動きを封じられた罪人を引き摺りながら練り歩く。

 

 主役の引き摺られ役には自称皇太子をはじめ装飾の凝った高そうな鎧着た奴らを見繕って適当にチョイスしてきた。

 鎧を着たままの成人男性を10人ほど引きずっても何の問題もないのは流石の横綱だ。

 ポッポポッポと囀られても面倒くさいので猿轡もサービスしてやったのは、ザッキーの優しさ。

 ちなみに更地になった迎賓館跡地には連れてこなかった連中を拘束して駐在員の方々にお任せしてきた。

 

 執事っぽい駐在員さんは責任者なのかな?報告義務があるだろうから数人の側近と一緒に市中引廻しパレードに随行してもらってる。

 流石に絵的な問題なのか、ズリズリ引き摺られてる芋虫達をチラチラ見ている。

 一丁前に全身鎧とか着てるから大根おろしにはなって無いんだよなー、その分面頬も下ろして誰だか分からない様にして余計なトラブルに繋がらない様に配慮してやってはいるんだけどね。

 まー、見る人が見れば鎧の装飾とかで何処の誰兵衛だかはお察しされちゃうんだろうけどね。

 ギャラリーである一般人に即バレしなけりゃいーかなー?くらいの配慮なんで細かい事はキニシナイ♪


 いよいよ貴族街の入口まで来ると流石に止められるだろうから先に職員さんに頼んで先触れを出してもらう。

 取り敢えず迎賓館襲撃犯の確保、逃走の恐れがあるので主犯格引き渡しの為にお届けに参上した旨。

 そして会見場予定だった迎賓館が襲撃犯との戦闘の余波で更地になっちゃったんだZE☆って伝えてもらう。


 敢えてギリギリのタイミングで先触れをお願いしたので、衛兵さん達が事情を飲み込むのに難儀してる最中の貴族街入り口に到着。

 流石の円卓都市、定期的に他国の議員を会議場に迎えるだけあって立派な詰め所が建てられてる。

 取り敢えず詰めてる衛兵さんの中で偉い人を呼んでもらうと、芋虫達が着ている鎧の紋章とかに多大なる心当たりがあるらしく口をパクパクさせていた。


「あー、え〜と隊長さん?でいいのかな?ボク達国賓、こいつら現行犯逮捕の襲撃犯。ここまでオーケー?」


 推定隊長さんに事態を飲み込む前に現状確認させて反射的に頷かせる、ここは畳み掛けてしまおう。


「何やら高貴そうな装備をしてますけど、国賓を襲撃する様な用意周到なテロリストですから本物かどうかは非常に疑わしいと踏んでます。我々に毛ほどの傷を負わせていないとは言え襲撃の事実だけで間違いなく国際問題になりますからねぇ。早急に火消しが出来る、あるいはその判断が出来るお偉いさんに直接持ち込みたいんですよ」


 ここで声を落として耳打ちする。


「もし……もしですよ?本物だったらどうします?ここで四角四面に身分を暴いたら間違いなくオオゴトですよね?手に負えます?」


 そうなった場合を想定したのか若干目眩がした様に額を押さえる推定隊長。


「幸いな事に私は冒険者上がりです。世界平和に水を差す不届き者に対する義憤を抱き、是が非でも自らの手で騎士王に襲撃犯を献上したい。そして隊長さんには騎士国の栄えある治安部隊として随伴をお願いしたいのですよ……これなら職務放棄にもならずに武力持つ冒険者上がりの国賓への対応って事で貴族間のトラブルにも巻き込まれずに済むと思いますよ。何なら私も一言添えます“彼は職務と国賓の要請との板挟みだったが、義憤に駆られた私を見守る事を選んでくれた。流石は円卓都市の治安部隊だ、大局を見る目が備わってますね”ってね」




 かくして衛兵をはじめ、その後も巡回兵やら各所の番兵やらを吸収した市中引廻しパレードは大名行列の様相を呈してきた。

 中には様子見に寄こした家人からざっくりと話を聞いて、これは一大事と助力を申し出る貴族当主なんかも現れたりもした。


「あいや待たれい、某は騎士国貴族の末席に預かる子爵シーシャークと申す。昨今の国家の根幹を揺るがす難事に心憂う者である。此度は天下の道理に仇なす不届き者を捕らえたる英傑の凱旋と相聞き及び馳せ参じた次第、微力ながら御一行の露払いなぞの与力を是非とも御一考頂きたい」とか何とかw


 最終的には騎乗した騎士団に先導されて王城にまで辿り着く始末だw


 トドメが何処でどう話が通ったのだか分からないのだが王城は正門が開放されてズラリと儀仗兵が並び、盛大に迎え入れられたのであった。




 とどの詰まり、色んな意味で色んな人が後に引けなくなっちゃったのだw



 

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