第111話 迎賓館包囲網
周辺国連合宗主国であるハイランド騎士国の首都スプリングは「円卓の都市」と呼ばれている。
それは騎士王と呼ばれた初代国王、そして忠義を尽くす12人の騎士達が円卓を囲み国政を担った故事に由来する。
“揺るぎなき力にて建国したが、力のみで統治するに非ず”
席次に上下を付けない円卓を用いたのは、その様な意図であったと解釈されている。
自由都市が貿易の要として発展する中、周辺国の土地の価値が上がり侵略の矛先に挙げられる窮地に立たされることになった。
同じ悩みを抱えた国々で突出した武力を誇るハイランド騎士国を宗主国として連合が発足した。
周辺国の紛争を嫌った自由都市も連合発足に賛同し有事の際の協力を表明、一種の不可侵地帯が形成された。
以降、連合議会は円卓都市を会場とし“力持つ者たちの理性ある話し合い”にあやかっていた。
そして俺ちゃん達は円卓都市の迎賓館にて、武装集団に囲まれていた。
正直、来ても来なくてもどっちでも良かったのだが冒険者ギルドの顔を立てたのと宗主国に貸し1って事で今後の何らかの足しにでもなるかなー?と足を運んだ次第だったのだ。
蓋を開ければ、ノコノコ出て来てこのザマだったワケなんすけどね。
取り囲んだ武装集団は突入を敢行するも敷地内に勝手に設置しといた魔道具による攻性障壁にて第一陣がダウン、そしたらなんかザコっぽいのが一人おっかなびっくり前に出てきてギャーギャー騒いでいる。
「我こそはハイランド騎士国皇太子ピージオン=ハウト=フーデリューである!貴様達には不逮捕特権を持つ議員を会期中に誘拐した嫌疑がかけられている!大人しく縛に就くならばそれなりの対応は約束しよう!」
カボチャパンツに白タイツと時代がかった古典的王子様ルックのおっさんが何やら喚いている姿がライブで映し出される。
「巻きヒゲ生やしたオッサンの白タイツとかリアルで見せられると結構シンドイもんがあるなw」
「一応、俺達は国賓の筈だったよな?www」
「仲介した冒険者ギルドの顔も見事に潰してますね(苦笑)身柄さえ確保できれば何とかなるとでも思ってるんですかねぇ」
「出張ってきたのが皇太子?下手しなくても国際問題だなコリャw」
「
「さしずめお薬議員を輩出した国が起死回生でも狙って焚き付けたってとこでしょうね、武装集団は……会期明けの五害老逮捕を妨害する予定だった護衛隊ですかね。流石に騎士国正規軍を動かそうとしたら誰かが止めるでしょうからねぇ(苦笑)」
国王の名で招待しとして皇太子が拉致ろうとしてるんだもんなー、立つ瀬も無いよなー。
都市内には大小様々な迎賓館が存在し、今俺ちゃん達は一番小規模なものだ。
総勢6名、俺ちゃん・地味子・パイセン・中佐・ザッキー・横綱の首脳陣なのだが国賓として迎えるにはあまりにも小規模。
通常ならば然程重大ではないが軽々と扱うべきでない折衝・交渉事で訪れる役人を迎える様な規模だが諸事情でお忍びで訪れた貴賓を迎えるにも
口の字型の建物は回廊からは常に中庭を、外側の廊下からは取り囲む庭園で客人の目を楽しませる設計だ。
建屋に対して広めに取られた敷地は本来ならば贅沢に使った空間と手入れの行き届いた景観は武装集団により踏み荒らされている、マップ上では最外縁の植込みすら各所で踏みならされて侵入者全てを敷地内に収めている。
――――逆に好都合でしょう――――
ザッキーがアルカイックスマイルで
執事っぽい駐在員さんに館内の職員全員を中庭に集める様、指示を出す。
周辺を固めてるインセクトやビーストにより中庭と外側の庭園にガイドビーコンが設置される。
館内の生体反応が無くなって駐在員さんに全員が中庭に集合した事を確認する……あ、
高度1万メートル、実に10キロ高度の無人機から射出されたのは直径約30センチ長さ約10メートルの裁きの杭だ。
総数32本の重量物が空を切り裂き地上のビーコンを目指し、大地を貫かんとばかりに自由落下に任せて加速する。
一呼吸程度の間をおいて腹の底を揺るがす地響きが周囲を包む。
「ビーコンと制御尾翼を使用して最大誤差が約130センチメートル……取り敢えずは合格ラインと言った処でしょうかねぇ(苦笑)」
ザッキーの
描くラインは中庭を守護るライン、そして建物の外側ギリギリのラインを描くライン、最外縁は敷地を切り取る三重のラインだ。
地上に穿たれた杭は音叉の如く共鳴しタイムラグ
中庭からは半ばまで刺さった杭を起点に砂状に崩壊していく建物が見て取れる。
杭より内側は力場が守っており、そよ風すら吹かぬ有り様だ。
使命を果たした杭は、その存在を維持するエネルギーすら使い果たしたのか風化して消えてゆく。
ゆっくりと晴れていく視界の先には無力化されて死屍累々と意識を失い地に伏せた討伐隊?捕縛隊?……アレだ、皇太子と愉快な仲間たちだ。
上空から見たならば、無力化された包囲軍、完膚なきまでに分解・風化された迎賓館、そして荒れ狂った魔術的・物理的奔流をつゆとも感じさせない中庭……その様な状態に落ち着いた。
「自由落下と尾翼制御のみではこの辺が限界なのかもですねぇ……もう少し手を加えて精度を出したいものです(苦笑)」
うん、
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