第110話 それでも現場は回ってる
自由都市の機能は辛うじて麻痺せずに回すことが出来ている様だ。
良くも悪くも上層部の腐敗だった為に現場を回している実務担当者達は揃ってシロだし、平常運転しとけば取り敢えず現場は回る。
4支部の役割が明確であり支部長達が揃いも揃って現場叩き上げだったのが良かったのであろう。
ただ何時までもそのままではいずれ立ち行かなくなるのは明白なので本部の立て直しは相変わらず急務なのである。
ポツリポツリと左遷されてた有能な者達が戻って来ているので、なる様になっていくだろう。
中佐の檄により当面の方針は組織の復元よりも根本からの立て直しを旨として大鉈を振るっている様だ。
当事者全員が共通の問題意識を持って事に当たる事が出来れば大抵の事は成せるのである……まぁ決して長続きはしないのであるのだが。
喉元過ぎればと揶揄するつもりは無いのだが、常に足並み揃えて全力疾走など出来ないものなのだ。
だから中佐も口を酸っぱくして期間限定の一時措置である事を強調していたのだ。
中佐にしろ誰であれ俺ちゃん達は組織論や政治論に言及する事を厭わない。
何故なら
政治における
未プレイだったりファンじゃない人には、たかがゲーム内のフレーバーテキストなのに政治に何でそんなに言及してるの?と疑問を持つことだろう。
その原因はサブ・スペースのプロデューサーであるクラーク=ニコルソンの出自にある。
とある民主主義国家が彼の故郷なのだが、祖父が国会議員をしていた。
それも極めつけの金満政治家だったのだ。
父親は二世議員として期待されていたが、祖父との折り合いが悪く政治家の道を歩む事は無かった。
そしてクラーク本人は学生時代に政治学に傾倒し、一時期は祖父の後継者として後援者達に嘱望されていた。
しかし彼が政治学に傾倒した理由は至ってシンプルで、SF映画の金字塔と呼ばれる作品内の帝国と共和国との対立関係を、より深く知りたいが為に勉学にハマっただけだったのだ。
そう、「好きな事には本気で取り組みなさい」と言う両親に育てられた彼は筋金入りのギークだったのだ。
そんな彼の興味が辿り着く場所は唯一つ、「宇宙」であった。
しかし現実は厳しく過去には月にさえ人類の手が届いていたにもかかわらず、その技術の一部が喪失されている事に絶望した。
なまじ政治学を齧っただけに時の政府の宇宙開発の打ち切りは、資本主義と民主主義の悪しき化学反応だと断じた。
政治家であり金に汚い祖父、その晩年の口癖が「昔は何でも出来た」だったのだがそれが「昔は月にでも行けた」と言う風に聞こえて大きな嫌悪を抱いた。
拝金主義と金満政治が国の技術を衰退・喪失させたのだと信じて疑わなかったのだ。
ではどの様な社会、どの様な政治体制ならば人類は再び宇宙へと足を踏み入れられるだろうか。
様々な考察やシミュレートの末に一つの理念に辿り着いた、「
ゲーム会社に就職していた彼は新しい企画として宇宙開発を題材にしたゲームをブチ上げた。
王道ストラテジーを踏襲した解りやすいゲーム性と斬新なアイデア、惑星開発を通じた現地勢力との協力と対立、綿密且つ重厚な歴史背景。
そして人類を宇宙へと導いた
サブ・スペースはSFファンを中心に爆発的なヒット作品となったのである。
宇宙飛行士という一部の専門家だけではなく、それを望んだ人類全てを宇宙というステージに導く理想論、ファン達は揃って
話を戻そう。
自由都市と相似した問題を抱えている集団がいる、周辺国連合である。
面倒なのが共同体でありながら別々の国であり、各々のメンツや利害関係が存在しているので簡単に右に倣えが出来ないのだそうな。
そこを右に倣えするから連合ちゃうん?と思ってしまうんだけどね。
で、なんで連合の話になるかって言うと例の虎の巻扱いされつつある自由都市再建緊急対策会議議事録(なんか後付けで仰々しい命名されたらしい)が巡り巡って連合宗主国元首にまで渡ったんですってさ。
そんで「知見ある者の忌憚無き意見を聞きたい」とかでお呼ばれされちゃってんですよ、メンドクサ。
貴族制が罷り通ってる世界だから政治論とか組織論とかを研究する機関って存在してないんよね。
帝王学っぽいのも門外不出扱いとかになってるらしい。
そんなんで「統治者とは孤独だ」とか気取られても「あ、ハイ」としか言えないんスけどね。
無視しても一向に構わないんだけど自由都市経由での依頼でギルドも大義あれども五害老を先行逮捕しちゃってる手前、何とか対応してくれないかってお願いしてくんのよねw
君主論のコピー本とか送りつけるだけで勘弁してくんないかな?w
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