第107話 バカンス in 自由都市


 自由都市内における逮捕劇は取り敢えず一区切りついた。

 よっぽどの下っ端か運良く都市の外に出ていた者を除いて全員収監した為に監獄内がエラい人口密度になってる様だが快適に過ごして頂く謂れも無いので肉サウナで痩身に勤しんで欲しい。

 

 現時点でのは最高責任者である4支部長は例外無く現場主義且つ現場大好き人間なので逮捕後の処理が滞っているらしい。

 本部勤めでシロだった者で最上位の役職は中間管理職まで、その中に調査室長さんもいて鬼の様な尻拭いをさせられてるらしい……

 当然、帝国への出張計画も延期になってしまい物凄く謝られた。

 別に俺ちゃん達は最終的に落とし前をつけて貰えれば文句も無いんだけど……さっさと裁いてやんないとハッシュタグとファッション眼鏡の勾留期間が伸びてくだけなんよねw

 例え帝都支部が何か言ってきても既に本部決裁案件になってるのをズニノール家も把握してるし交渉相手として完全に切り替えてるから門前払いだもんなぁ。

 

 そんなギルド本部の唯一の希望が、腐敗してた上層部のインチキ人事で左遷されてた有能な人達の緊急呼び戻しなんだそうだが……それでも明日明後日で解決する様なもんじゃないしな、監獄ダイエットが捗りそうだw


 連合議会も現地の冒険者ギルドからお薬議員の引き渡しを勧告されて阿鼻叫喚だったらしい。

 議会の会期中だから皆さん揃って同じ街にいるので、冒険者達による監視網が敷かれて逃げるのは不可能っぽいね。

 首謀者5名は先行して身柄確保した旨も冒険者ギルドから議会と宗主国元首宛てに通告済みだ。

 本来なら手続きを踏んでいない不当な誘拐として非難の一つもされる様な事なのだが、ヤラカシが酷すぎてナンモイエネー状態の様だ。

 仮に何か言ってきたら、その時点で実力行使するからヨロシクって初っ端に宣言したのが効いてるっぽいね。

 大義名分も無いままに冒険者ギルドと武力衝突したって他国の理解も協力も得られないまま磨り潰されるのがオチだもんなぁ。

 さっさと引き渡せばいいのに半々で意見が分かれると何も決まらないのが議会制の弱点だ、その間に包囲網が盤石になるだけなのにね。

 3日目には宗主国元首による鶴の一声で議会解散→お薬議員引き渡し、となったそうだ。


 そんなワケで事態が落ち着く迄ヒマになってしまった。

 都市封鎖と解除に絡んだ混乱もあったが現場は通常運転になったんだが、なんだか4支部長達が頻繁に飲みの誘いに来るようになった。

 アンタらそんなヒマあんのかよ?って聞いたら口を揃えて「ふん縛ってブン殴って解決するなら直ぐにでもヤる。けど本部の事務方連中にソレじゃあ解決せんから大人しく現場を回していてくれって涙目でいわれちゃあ、なぁ?」との事。

 

 しょうがないから連れ回されたんだけど流石地元民の御案内、隠れた名店がワンサカあるのw


「カレー?あんなもんは観光客向けの客寄せパンダだ、他の国の奴らにも分かりやすい料理だからな。本当にウマイのは豆や米や肉を香辛料スパイスで炒めたり炊いたりした郷土料理、そしてラム酒だ」


 海賊のオススメは見た目に違わずラム酒の様だw

 郷土料理の方は全体的にキューバ料理に近いと言えば伝わるだろうか、特に記憶に残ったのはサンドイッチだ。

 柔らかいバケットにマスタード、チーズ、ハム、ピクルス、そして香辛料スパイスと果汁に漬け込んだ豚肉をローストして更にカリッカリに焼いたものを挟む。

 バケットにバターを吸わせながらプレスして焼き上がったらカットして出来上がりだ。

 決してギコギコはしないでスーッとカットした断面は食欲をそそり、ザクザクのパンから始まる混然とした食感と旨味のハーモニーは目からウロコを、顔からホッペを落とさせる。

 またコイツをミストスタイルで仕上げたモヒートで流し込むと気分は南国バカンスそのものである。

 デザートはバニラアイスにダークラムを、又はシャーベットにホワイトラムをかけたのが最高だった、ケチらずドバドバかけるのがコツらしいw


 夜は酒場巡りなのだが、地元民御用達の店はこぞってラム酒のオリジナルカクテルを研究していた。

 香辛料スパイス香草ハーブで味付けした独自の炭酸飲料は揃って褐色で独特の味わいがあるクラフトコーラだ。

 ソイツでラム酒を割ってライムジュース又はフレッシュライムを入れたりガーニッシュでカットライムを添えたりするのだが、コレが又シンプルなレシピの割に腕の良いバーテンダーが作ると繊細な味に仕上がるのだ。

 素人が作ってもそれなりに外れない黄金レシピではある、だが是非一度プロのカクテルを楽しんでいただきたい。




 自由都市シウダー・リブレ乾杯サルゥ




 

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