第105話 デッドエンド
「つまり現状は内部抗争の体でゴリゴリやり合ってるって事なん?」
あれから俺ちゃん達は解放されて高みの見物ポジションなので状況を整理してみる。
「結局、東西各支部もシロだったみたいで本部上層部は四面楚歌状態っぽいな……本部も中間管理職以下の人間は大体シロクロ半分って感じみたいだな」
「本部内でも真っ二つに分かれて喧々囂々且つ侃々諤々な議論の末とうとう掴み合い取っ組み合いの有り様ですねぇ(苦笑)」
「けれどその密輸組の
「黒幕の上層部組は、普段ご意見番気取って会議中昼寝してる商人ギルドの上層部と一緒に立て籠もってるみたいだなwww」
「そして東西南北支部が連携して都市から脱出させまいと包囲網をジワジワ狭めてる←イマココ。って感じですかねぇ(苦笑)」
「特に東西支部のギルマスがブチ切れてるみたいよな」
「そうそう、“本部検閲済重要機密送付品”とか仰々しく関所スルーさせられてたブツが密輸品だったと知って烈火の如く怒り心頭らしい……日頃真面目に
「真面目にやってるのは現場と一部の部署だけ……形骸化した組織の末期症状ですねぇ。折角組織として集約した力で得た利益を組織の維持に当てないとか無駄もいいトコですからねぇ」
「健全な収益の分配は健全な組織維持の必須条件ですってマニュアルの最初の方に書いてあるのになw」
「眼の前にある金額の数字は分かっても、何のためにどうやって生まれた利益なのか分かんなくなっちゃったんだろ?ヤダねぇ、人間ボケると品性まで無くなるのかねぇ?www」
「逆じゃ無いですか?品性が無いから
「で、このままだと十中八九、密輸組は逃げ場も無く磨り潰される感じよな?w」
「街を完全封鎖してるからな……普段から堂々と正門から出入りして密輸してたもんだから街壁の抜け道みたいなモンも存在しない、正門内外で行き来を止められた連中にも一切耳を貸さずに閉鎖……連中ガチだぜ?www」
「問題は周辺国から軍事介入ですね、まぁ建前上は御立派な御題目唱えてても実情は密輸組救出部隊ですね。事情を知ってるクロと知らずに命令に従ってるだけのシロの色分けは間に合いません、全員等しく無力化します。ツケは背後でふんぞり返ってる連中にタップリと払ってもらいましょう。我々だって襲撃された被害者なんですからねぇ?しっかりと報復させてもらいますよ(苦笑)」
あーあ、怒らせちゃいけない人を怒らせちゃったねーw
――――――――
月明かりの下、自由都市へと繋がる街道沿いで野営を行う一団がいた。
自由都市にてクーデターの疑いありと急遽編成された連合軍の部隊である。
率いる隊長は雲がかかる月の様に気持ちが翳っていた。
そもそも情報の出所が曖昧であり、冒険者ギルドが治める街でクーデターとは現実味に欠ける。
例え事実であったとしても内政干渉に当たるとして派兵の是非には大きな疑問ありと連合議会では意見が真っ二つに割れた。
派兵派の急先鋒は例え承認が得られなくとも有志を募り駆けつけると頭のオカシイ事を言い出して議会は荒れに荒れた。
最終的に治安維持協力と称して小規模な派兵がやむ無く認められた。
確かに二日ほど物流が滞っている様だが自由都市は大森林の一部を切り拓いて作られた都市であり、その北には深き森が広がっている。
だが自由都市が誇る戦力の四分の一、即ち北支部は常日頃から森へ深く入り込み狩りに勤しみ都市や街道の安全に貢献している。
そして街道の保安は実に保有戦力の半分に当たる東西の支部が警護している、時として北支部との情報共有で敢えて街道の往来を止めて安全の確認を行う事すらあるのだ。
確かに連絡無しで二日の滞留は普通ではないのかも知れないが、態々派兵する程なのか。
治安維持協力隊と称した部隊を任されたが疑問と嫌な予感が止まらない、何より派兵急先鋒の貴族からねじ込まれた義勇兵とやらの存在も不穏なものしか感じられない。
まんじりともせずに迎えた夜半、大地を揺るがす衝撃と鈍い音が走った。
何事かと確認しようと立ち上がる間もなく身体が痺れ意識が混濁して、やがて完全に意識が途切れた。
気がつくと身体を拘束されたまま椅子に座らされていた。
正面には対面する椅子に座り、独特の髪型をした巨漢を側に控えさせた、どことなく理知的な顔つきをした男がこちらを観察していた。
「ふむ、時間通りですね……えー、まずは貴方がたは現在、我々の保護下にあります。平たく言えば捕虜です、何点か確認して頂ければ開放しますのでご静聴願います。只今自由都市では大きな不正が発覚して、逮捕や事実確認、証拠品の確保・保全を十全に行う為に完全封鎖してます。明日の昼には封鎖は解除される見込みです。不正内容は連合指定の禁制薬物密輸です、残念ながら連合議会の議員の約半分が顧客又は関係者です。今回貴方が指揮してる隊員の中にも顧客との関係者を確認しておりますが、その方達の拘束は解きません。そのまま引き渡し可能ですが手に余るようでしたら引き続き我々の保護下に置きましょう。こちらが顧客及び関係者のリストになりますので後ほど御確認の上、議会ないしは宗主国にお届け下さい。」
リストを手渡され思わず受け取ってしまったが何時の間に拘束が解かれていたのだろうか。
「それでは隊員さん達の所に御案内致します……あぁそれと二つだけ伝えておきます。今回の件、確かに冒険者ギルドの落ち度でもありますが商人ギルドと顧客議員の結託で冒険者ギルド上層部の切り崩し・乗っ取りが行われていた事実が判明してます。面子を潰されたマトモな冒険者ギルド員達は必ず報復します、まず逃げ切れないと思って下さい。そしてリストの上位5人、上級貴族の方々は逮捕に少々手こずりそうなので我々が手を貸すことになってます。絶対に逃がしませんので御安心下さい」
掛けてない筈の眼鏡を直す仕草で有無を言わせぬ通告をしてくる。
射抜く目つきで笑顔を貼り付ける上官は何人も居るが世間話のテンションで理路整然と反論させない話術まで持ち合わせてる者は皆無だ。
間違い無い、コイツは筋金入りだ。
それに理解不能な拘束力……否、恐らくコレでもかなり手加減されてるのだろう、想像するだに恐ろしい制圧力だ。
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