第99話 山肌残し
なんやかんやでドワーフ自治区まで帰ってこれた。
ブルース達ともテイキョータウンで久々に会えて宴会もしたしボッタクー商会の支店にも一応顔を出しといた。
本部からの通達もちゃんと来てたみたいだし番頭さんの仕切りならそうそう間違いも起きないんじゃないかな。
ドワーフの皆も元気そうで何よりだ、また一段と広く快適になってる御山はどこまで開拓されてるのか謎だ。
以前ドワーフ達と飲んでる時に聞いた、連中の伝承にこんな話がある。
鍛冶と酒をこよなく愛するドワーフにとって鉱山掘りは趣味と実益を兼ねたレジャー感覚に近いものがあるらしい。
もちろん本業は鍛冶なのだから採掘ばっかりしてる訳にはいかないのだが変わり者って奴はどの時代どの場所にもいるもので、本業そっちのけで掘り続ける変わり者がいたのだとか。
もちろん分業化が進み採掘専門家として成立していれば問題無いのだが、ゴダワリの強い職人集団である大抵のドワーフは採掘から精錬、鍛冶まで全てを手掛けたがるので中々分業化は進まないのだとか。
その変わり者のドワーフはとにかく掘るのが好きで
流石に一族の中でも問題になり、事あるごとに注意を受けていたのだが、ある日からふいと居なくなってしまったそうだ。
単独採掘の最中、崩落に巻き込まれたとか山に魅入られたとか神隠しだとか様々な憶測を呼び騒ぎになったが居なくなってしまったものはしょうがないとなり、数年の歳月が経ったと言う。
そこは山々に囲まれた郷だったのだが、ある日誰かが不思議な事に気がつく。
確か去年か一昨年くらい迄は間違いなく日陰だった筈の場所に日が差す様になっていたのだ。
最初は誰も大した問題ではないと気にも止めなかったのだが、そんな中で変わり者がヒョッコリと生還してきた。
聞けば南の山の鉱床を掘り尽くしたのだとか……そう、山の形を変えるほどに掘り尽くしたのだ。
その変わり者は“山崩し”とか“山肌残し”と呼ばれ語り継がれる様になったのだとか。
うちのザッキーも似たような事をやらかしそうだな、と笑い話で流そうとしたら当のザッキーが視線を合わせようとしない。
「……」
「……なぁ、ザッキーさんや。御山の中ってどんくらい掘ったん?」
「……まぁ、地形に影響が出ない程度ですかね……」
視線が泳ぐとは良く言うが、視線で見事なバタフライをキメるとか初めて見たぞオイw
「……山崩し(ボソッ)」
「大丈夫です、地形は変化させてませんし保水力等環境に与える影響はシミュレート上問題ありませんし随時確認もしております。防衛上においても浅層は独立エリアとなってますので万が一侵入されても逆に虎口になる仕組みです。それ以前に郷周辺の監視体制は万全にして盤石、文字通り猫の子一匹たりとも通しません」
つまりはコイツ、やりやがったって事だ。
「……山肌残し(ボソッ)」
「グッ……」
ドワーフの
「なぁ、まさか離陸して巨大ロボに変形とかしないよな?www」
「そんな変形時の避難が遅れた居住区の人間潰しそうなギミックなんて搭載しませんよ?そもそも通常の航空兵器だって開発が難航してるんですから穴掘って基地拡張するくらいが限界ですよ」
どうやらS.P.FのFがフロンティアになる未来は無さそうである。
「しかしザッキーでも手こずる問題なんだなw」
「一介の
なんかカッコつけてるけど一介の
「そんだけ掘ってもインセクトの増産には間に合わないん?w」
「増産はしてはいるのですよ、ただ必要な材料がそこそこレアですし、そもそも製造ラインを増やしても精々が倍数的増加にしかなりませんけど監視対象面積の増え方は乗数的増加になりますからねぇ…優先度評価したりして運用で誤魔化してますけど限界はありますよねぇ(苦笑)」
やはり予想していた通りのボトルネックで詰まってるらしい、それでもメタルシリーズにテイミング機能を搭載して水増ししたり愛玩パペットの隠し機能で中継させたりと中々に㌧でも技術で貢献してくれてるからこれ以上を望むのは贅沢と言えr
「但し途中の地域の情報収集をスッ飛ばした遠隔地のコロニーとスパイダーネットを繋ぐ事は近々可能になります。アンカー技術の流用で安定した長距離通信の実用化に目処が付きました」
何この有能な変態w
「「流石の山肌残しw」ww」
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