第98話 王国への旅路


 結局、アシュリーはシーナット公爵麾下との繋がりは確認できたものの現在の行方はようとして知れない。

 万が一にもアシュリーが捕縛されて関係性が暴かれる事を恐れた公爵から転移用魔道具を貸与されていたが、厳密には軍部保有の支給品でありアンカーが設置されていたのも軍の極秘施設だったのだ。

 しかも異常を察知して逸早く駆けつけたのが元老院派閥とは言え常備軍の兵士だった為に隠蔽工作も施せずに相当苦しい言い訳をしていたらしい。

 実はその時に施設の守衛室の通信魔道具がアシュリーと繋がっていたらしい、何らかの通信系魔道具

が作動しているのは察知していたけど軍本部ないしは諜報本部から確認の通信だとばかり思い込んでいたザッキーが物凄く悔しがっていた。

 常備軍が駆けつけるまでの限られた時間に施設の最重要機密であるアンカー周辺の様々な情報収集に集中してたのだから早々責められるもんでもないし、俺ちゃん達だって気にもしなかったし仮に通信機器がアクティブだと知らされていても下手な音声記録なんか残したくなかったから近づきもしなかっただろう。

 だが今になっても所在不明ロストしている事を考えれば、悔しい気持ちは正直あるのだ。


 そして黒騎士団は解体されて様々な部署に配置転換されたって話だ。

 まー、公爵の後ろ盾で天狗になって「歴代最強」とか謳っちゃってたみたいだからねぇ。

 一般公開されてないとは言えド派手に負けてしまったから肩身も狭いだろうね。

 どんくらい増長してたかは知らないけど、これからの御活躍で取り戻せるかは各人のやらかし具合と努力次第だろうねー。


 S.P.F商会はソニックマスク1号2号に任せる事にした、普段は変身前の姿で過ごして有事には変身して解決していくスタイルだ。

 もちろんボッタクー商会への顔つなぎもバッチリだ。

 余談だが横綱の偽装である人工皮膚顔にも最近ようやく慣れてきた、メカメカしい方が個人的には好みなんだけどなw

 但し相撲力炉直結式言霊砲セイ・ハロー・リキシ・キャノンを初めとする幾つかの力士技スモウアーツには人工皮膚は耐えられないらしい。

 

 ボッタクー商会と言えば北部統括支部から俺ちゃん達に連絡があった。

 なんでもズニノール伯爵家に冒険者ギルド本部から調査員が派遣されたらしい、一通り証拠品やらの確認を済ませて調査員は帰ったらしいけど申請書類が上申書の形を取った報告書だったのに告発状への変更がなされていて色々確認したいのに当の本人達はギルド退会しているのだ。

 内々に処理も出来ない上に、そもそもノーザンパイアでは刑事事件として処理されているのだ。

 帝国支部に確認を求めるもやたらと歯切れが悪い上に辻褄が合わないらしい。

 どうにかしてタロハナコンビに最終確認を取りたいんだそーな。

 あんだけハッキリした立体映像再生機3Dホロムービーで一連の肝となるシーンを確認してる筈なんだけどなー…こっちはとっくに終わった話だと思ってたからビックリですよ、動画だったから動かぬ証拠にならなかったのかな?

 いずれにせよ何らかの形で冒険者ギルド本部とのやり取りをしなくちゃいけない様だ…正直面倒くさい。

 ズニノール伯爵家には処分保留中の日数分色んな費用の請求できるよね?って入れ知恵しといた。

 冒険者ギルド本部には帝国の冒険者ギルドは全体的に問題しかない隠蔽体質だから早々に監査した方がいいですよ?ってお手紙書いてとりま終了、正直付き合いきれないし将来的に詰めに行こう。

 本部のある自由都市とやらまでスパイダーネットを繋ぐだけの資材調達の目処が立つ時まで寝かしておくのだ。

「秘密結社美味しく酒を楽しむ会」では伯爵家の面々と話に花を咲かせたが問題はくだんの冒険者ギルドくらいで領内の綱紀粛正も進み次期伯爵を迎える体制は盤石に近いものになるらしい。

 久々にドワーフ達の顔も見たいので、近いうちに又顔を出す約束をして旅を続ける。

 そして帝都までの道をさかのぼる様にテイキョータウンに辿り着いた時、未知ヤツとの遭遇ニアミスが起きたのだ。




 ――――――――


 


「今日の俺様も絶好調!そう!ハイポーションで今日もハイ!馬れながらの伊達男は縦にしても横にしてもタテガミがセクシーだろ?」

 軽く茶でもシバこうかと通り沿いの店に入ろうかと入り口に近づいた時に中の喧騒が聞こえてくる。

 テイキョータウンに入ってすぐに街が活気づいているのが空気感で分かってはいた、連絡も受けていたが王国から流れてきたプレイヤー達が活性剤になっていたらしい事も。

 つまりはその流れによってもこの街で暴れているらしい…

 俺ちゃんとパイセンの華麗なる回れ右で未知との邂逅を免れた一行は感謝しても良い筈だ。

 ザッキーなんかは疑問を呈してきたが、まずは店から距離を取ってから説明してやる。




「「いいか?奴は馬じゃないUMAだ、ウマく付き合うには常に適度な距離を保つ事だ。酔い潰す御神酒がなければ間違いなく面倒事に巻き込まれるぞ?奴は生きたヒノエウマだ」」


 パイセンと俺ちゃんスパイ&エスパーの熱い説得により一同の束の間の平和は保たれたのである。




 

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