第95話 御前試合包囲


 いやー、失敗したわーテヘペロ。

 流石にテレポで逃げ回ってアウトレンジからチクチクやるのは気まずい結果になるだろうから封印してたんですけどね。

 二人目辺りで気付いてしまったのですよ、「あれ?精鋭部隊ってひょっとしてVIT型テンプレビルドしかいなくね?」って。

 もっとさー、アニメや映画の特殊部隊みたいにAGI型スペシャリスト!とかDEX特化の搦め手得意ないぶし銀!とかいるもんだと思い込んでたんスよねー、騎士団とかリアル軍隊なんだから実用性汎用性重視の教練で…要は替えの効く量産型肉盾育成機関だなんて冷静に考えれば当然だったんよねー。

 ゲームがリアルになった世界なんだからってちょっと思考がファンタジー寄りになり過ぎてたよね、反省反省。

 で、そーなるとですね、一般的なテンプレビルドをベースにINTをどれだけ上乗せしてスキル連打に余裕を持たせるかってスタイルの帝国風に落ち着く訳なんですよ。

 そして騎士のスキルなんて殆どが近接スキルな訳で、如何に近づくかが肝なのに騎乗もしてない重装騎士が防御力に任せてジリジリプレッシャー与えながら詰めてくる一択になってくるんですよ。

 それってテレポバースト(not チートバースト!)の格好の的なんですよ、もちろん駆け寄ってきてもいーんですけどソレはソレで足元に転がすグレだったり頭上から曲射で降ってくるグレだったりカウンターのリフレクターで弾き返したりとナンボでも対処出来てしまうんですよ。

 えぇ、はっきり言ってしまうと俺ちゃんってば碌にAGI振ってないVIT前衛の完全メタになってしまってたんです。

 よっぽど勘の良い特例か実践経験豊かな読み合い上手でも無いと俺ちゃんの攻撃を捌ききらんだろーなー、きっと多分俺ちゃんのメタはAGI=DEX二極の弓士アーチャー系もしくは銃士ガンナー系になるだろう。

 まー、それが分かってしまうと作業になってしまうんですけど出来るだけ黒騎士の戦力は挫いて置きたいので煽って連戦を受けさせる流れで上位陣を潰しときましょーかねぇ。



 

 指揮官クラスを半分くらいK.O.した当たりで空気が又一段怪しくなってきた。

 個人的には色んな近接武器が見れて非常に勉強になった、実践で双剣とか初めて見たよん。

 攻防一体のセットプレイは強力でスタミナさえ持てば理論上最強かも知れない。

 モールの変幻自在な打突は鈍重な見かけとは裏腹に想定以上の踏み込みからの近い間合いで軽妙な追い込みをかけてくる。

 嫌がって追い立てられて間合いを外すと本命の大ぶりが襲ってくるのだろう。

 斧槍も同様に至近距離での攻防が肝のようだ、見た目の凶悪さ以上に繊細な武器捌き…特に突きの戻しで斧頭で引っ掛けてくる攻撃が上段中段下段と散りばめてくる。

 いずれにしろ中の人達が勝負に逸る思考に囚われてたので機を外してカウンターを合わせて一撃離脱からの迎撃で幕引きだ。

 

 そろそろ潮時だと判断して騎士団の真骨頂は集団戦だろう?と提案する煽る

 こちらは付添い人の地味子と二人、小隊(30〜40人)でも問題ないよって言ったんだけど分隊(10人前後)で揃えてきた。

 見たところタイマンでは不安が残るが一芸特化で集団戦でこそ活きる様な連中が並んでいる。

 相撲取りみたいな巨漢やフルプレートアーマーを部分的に剥ぎ取って軽量化した大槍使い、長身の双剣使いにギロチンをまんま大剣?大斧に拵えた様な偉丈夫。双戦棍に刺突剣…コンセプトは見事にバラバラなんだけど奇跡のバランスが取れてるドリームチームなんだろーなー。


 だけど地味子は俺ちゃん程優しくない、とゆーかそれまでの観戦で得たデータから遊びのない連撃で圧倒したかと思うと俺ちゃんの方に蹴り込んでリーサルを決めさせる。

 本人曰くそれでも安全マージンは取ってるらしいのだが端からパッと見ギリギリのラインで攻め崩してる様にしか見えないのは恐ろしいw

 スフィアで動きを封じた相手に容赦なく超必で追撃してくるとか大正解なんだけども躊躇いの無さも恐ろしいw

 しかも初お披露目だった筈の「村雨:改」、P:1プロジェクト:ワンで培った多段テレポートで遥か上空に連れ去った相手に超必殺技サエキボール・ミーティアで地面に叩きつける荒業に絶妙のタイミングで追撃を合わせるとか人間業じゃないよなーw

 相撲取りみたいなタフさが自慢ぽかった巨漢が自身の重量も相まって虫の息だったもんなー…


 そんな訳で場内は大波乱だったんだけど、場外も中々の大騒ぎだったらしい。

 軍部と暗部による一大査察が執り行われ、数の暴力によりシーナット公爵子飼い直属の暗部連中は敢え無く瓦解、普段は公務を守護る正義は我にありと大手を振って黒騎士部隊に守られていた下っ端汚職貴族が軒並み検挙されていた。

 武力制圧による身柄確保の後は内務卿手配の特務査察隊によりあらゆる物証が抑えられたが指示を出していた層は全員御前試合に出席中だ。

 そして残存兵力である黒騎士団に至っては目ぼしい実力者達が俺ちゃん達によって足腰立たないスクラップ状態だ。

 本丸である皇帝は近衛によりガッチガチに守護されていて御前試合会場は軍務卿麾下の常備軍と内務卿麾下の衛兵隊により包囲されていた。




 そう、色々やりすぎていた元老院筆頭シーナット卿詰んでいチェックメイトだったのだ。




 

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