第86話 ◯人居ても四天王!


 孫の手の四天王を狩り続けて数える事記念すべき十人目を降した。


 うん、俺ちゃんも何を言ってるのかイマイチよく分からない。

 七大罪をコンプする前に白虎とか漆黒とか煉獄とかの二つ名を名乗る輩が出始めてから何か色々と諦めた。

 現時点で七大罪も3組くらいしか出てきてないかな?

 揃いも揃ってトカゲの尻尾なので一々エピソードを挙げていってもマンネリ過ぎてたまれない気持ちになる事請け合いだ。

 それでも帝都の夜を統べる組織なのはあながち間違いとも言えず、それっぽい連中を辿っていくと四天王に行き当たるのだ。

 だが四天王で途切れるのである、これが悪人特有の電波を受信して「俺達のバックには影の手がいるんだぜ!!」ってゆー拗らせた集団妄想ならば良かったのに確実に資金提供なり情報供与なりしてる組織の痕跡だけはしっかりと残ってるのである。

 何回でも言おう、俺ちゃん達は正義の味方でも何でもないのだ、それなのに気がつけば帝都の世直しみたいな事に奔走している。

 誠に不本意である、本当に何してんのう?なのだ。

 

 スパイダーネットもお陰様でそろそろ王国の首都に届こうかと言う段階でもあり、更には王国の南に位置する教国にも届こうとしている。

 現状はパペットが流通する場所から広がっている為に大都市とそれらを繋ぐ街道沿いがテリトリーとなっているので随分と抜けはあるのだが、まぁ贅沢は言うまい。

 冒険者ギルド本部への定期便にこっそりと同行させた一群もいるのだが、随分前に所在不明ロストとなっている。

 到着地にて新たにコロニーを形成する様に指示してあるので何時かは拡がる本隊と接続されるだろう。

 海洋プラットフォームも無人島に接する形で建造が開始されている。

 半潜水式の移動可能なメイン棟、そして随伴する船団を接続する事で展開する構造となっており、随分と融通の聞く“洋上移動基地”となる予定だ。


 そんな中で何時までも帝都にかまけてる訳にも行かないのだが嫉妬兄弟を焚き付けた指令書が残っていたのでキッチリとしたOTOSHIMAEを付けない選択肢は存在しない。

 宇宙開拓軍は技術転用により軍事力を備えた組織であり戦争を目的とした組織では無い、最悪の選択として戦争と言う手段の選択も辞さないと言うだけの組織なのである。

 そして同時に防衛軍でも無いのだ、相手との技術力の差異にもよるが一定以上の超文明技術を擁する集団からの攻撃を受ける事はイコール壊滅的な打撃を受けるのと同意義語なのだ。

 そうなる前の対話や調整に尽力すべきであり、攻撃を受けて尚生き残り反撃の余力を残すのは些か現実味が少ないと言えるだろう。

 だからこそ同朋への攻撃に対する報復には手は抜かないし、抜けないのである。

 使用者責任どころでは無い、上部組織の最上位にまで追求していくのだ。

 トカゲの尻尾切りなどでお茶を濁すなんて逃げは受け付けない。


「生命を奪った弾丸を放ったのはこの銃です、この銃を裁いて下さい」

 

 冗談ではない。


「銃を撃ったのはアイツなのでアイツを裁いて下さい、私の指示を曲解して暴走したんですから」


 チャンチャラおかしくてヘソでオデンでも茹でようってか?熱々オデンは勿体無いからそれに準ずる熱湯入れた洗面器にでも顔突っ込んだ土下座してから話を聞いてあげますよ。

 宇宙開拓軍は不当な攻撃を許さないし、責任は取らせる方針なのだ。

 現実味と言えば現時点での正規メンバーはたったの8人と1隻だ、対策を打ってはいるが関連する人間全てを守ると言い切るには無理がある。

 守るべき全てを必ずしも守りきれないのだから正義の味方を名乗るには力不足も甚だしいのだ。

 それに正義の定義はそもそもがあやふやだ、心に正義を宿すのは一つの理想だろう。

 しかし正義を振りかざすのは往々にして間違いなのだ、正しいとされるのは何時の時代も共存を前提とした妥協であり譲歩なのだ。

 そして妥協や譲歩を限りなく理想に近づけるのは技術であると技術至上主義テックイズムは説いている。


 話を戻そう、スルリスルリと探索の手をすり抜けてきた影の手を遂に掴みかけたのだ。

 もう影踏みは飽き飽きだ、そもそもが共存を否定し他者を害する事を飯の種にしている組織だ。

 正直、対話の成立は期待していないが礼儀作法に則りノックして入室してのりこんでやろう。




 そのままノックアウトにならない事をお祈り申し上げる次第ですよ。



 

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