第82話 ユーゲンの可能性
図らずも孫の手の幹部を名乗る連中と戦う事になり辛くも勝利を収めた…幹部だよな?四天王とか言ってたし幹部なんだよな?少し不安になってきた…四天王なのに七大罪の二つ名?みたいな事言ってたし謎がミステリーを呼ぶので後で確認しておこう。
やたらタフだったし兄弟とか言ってたからきっと多分息の合った連携が強みだったのだろう…速攻で分断されてたから良いところも魅せ場もなく只々ボコられてただけだったけどなぁ…。
パイセンも途中から弾薬が勿体無くなって投げてバウンドしたところを再度拾って投げるとか格ゲーの超必投げみたいな事してたもんなー。
え?俺ちゃん?似たよーなもんですよ、本来ならタフさってイコール強さになる要因のファクターなんだけどさ、それに見合った反撃手段とか無理矢理通して有効な手痛い攻撃とか無いとゲージ回収が美味しいボーナスキャラになっちゃうんよねー。
もちろん横槍とかカットとか入る様な状況だと話は変わってくるんだけど疑似タイマンな上に初撃で「村雨」喰らったビハインドな相手でしょう?余計な事させないで完封すればまず余裕なのよ。
ここで少しユーゲンについて語らせて貰おう、その歴史は決して順調なものでは無かった。
3D格闘ゲーム作成ツールとして公開されたが当時はそもそも3D格闘ゲームは黎明期にして速攻で冬の時代に突入、それでも一部のマニアによる運用により本来とは違う楽しみ方が流行ったのである。
格闘ゲームとして成立しないだろ?位の鬼CPUを積んだ有名キャラや改変キャラ同士を戦わせて観戦モードで“観て楽しむ”のである。
2D格闘ゲーム作成ツールでも同様のムーブはあったのだがユーゲンのプログラムはプレイする上では割とシビアな調整がされてるのに対して根幹となるプログラムが結構ガバガバで、コンバート元のゲームが美麗でヌルヌル動く様な高度なプログラムを組まれていればいる程、まんま取り込んで再現してしまうのである。
取り込まれたプログラムの最上位を基準とされる為、古いプログラムで組まれたキャラは上位プログラム準拠で様々な補完がされた上でステージに上がるのだ。
サーバーへの負担は大きいのだが元より多種多様なゲームデータで膨れ上がる事を想定されていた為にネタで扱われる程度で許容されてしまったのである。
お気にのキャラや憧れのキャラに懐かしのキャラが最新のゲームシステムを支えるプログラムで高解像度でスピーディーに暴れまわる、しかも鬼CPUで超絶コンボをキメる…それを自由度の高いカメラワークで観戦できるのだ、普通にアガるだろう?
それをトーナメントで大会と称して開催し動画をアップするのも2D格闘ゲーム作成ツールの歴史をなぞる形で流行った。
歴史は繰り返す、レギュレーションなり趣旨なりで
それはユーゲンで鬼CPUが組み上げた超絶コンボを元ゲームに逆輸入すると言った
ガバプログラムで丸っと吸い取ったシステムは本家でも再現可能なコンボルートを開拓してしまったのである。
ここで言及したいのは、一言で言わせて貰うとユーゲンとは本来FPS視点の本格派格闘ゲームを想定してあり、必殺技固有の無敵も無ければダウン無敵も打撃ガード中の投げ無敵も無い超リアルでストイックな各ゲーム制作会社の殆どが切り捨てた、超マニアックな3D格闘ゲームにすら対応させる事を想定して組まれていた事である。
例を挙げると無敵対空で名高い必殺技も実は初動での踏み込みでサイドステップアウトして相手の攻撃を避ける動きをパッと見すると悟られぬ様にして放ってたりとか、ガード不能な打撃技は技の構えを三次元的に分析すると出どころを相手の視線から見えない様にしていたり、と研鑽すれば現実で再現可能(かも知れない)レベルまで解析してしまったのだ。
勿論、気とか氣とか謎のパワーとか一流アスリートの運動能力でも再現不可能な跳躍とか握力は別にして、である。
こんな逸話もある、飛び道具が一切存在しない“本格派”を売りにした格闘ゲームがあった。
モーションアクターもその筋の有段者や実力者を招聘してゲームに落とし込んだのだが、某大陸系武術の奥義が乱舞系の連撃としてキャプチャーされた。
本家では猛威を振るった連撃だったのだがユーゲンでは繋がらない事案が発生したのだが、一人のプレイヤーが実況プレイ中に答えを出してしまったのである。
「……あー、そーゆー事か。コレはアレだわ」
全十三段に及ぶ乱舞を3・3・4・3段の連撃に分けて其々の入力ディレイを相手の体重や防御力に合わせて入れ込む事で初めて成立する奥義だと解析してしまったのである。
当時の大陸武術協会の上層部は揺れに揺れた、だが実戦投入には結局のところ十三連撃を一息で入れられるだけの狂気のポテンシャルと修行が必要な事実に変わりはなく静かに収束していった。
妙にリアルで妙にゲームなのがユーゲンであり、突き詰めれば全てのコンボはキャラ限なのである。
そうなると“見切り”や“様子見”が初見の相手には重要になり、ましてや何処からデータを引っ張ってきたか分からないオンライン対戦では必須なスキルになってくるのである。
それに対する俺ちゃんの答えだったのが格ゲー界屈指の遠距離特化で出方を分析するサエキさんであり、相手のポテンシャルを浮かび上がらせるトリッキーなニンジャであり、読み切った上で有無を言わせぬ連撃でトドメを刺す古武術使いなのである。
まだまだ語り尽くせぬアレコレがあるのだが、ユーゲンで培いパイセンとの模擬戦で磨き上げた超能力格闘術はゲームがリアルになった世界線でこそ有効な戦術だって事なのねん♪
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