第81話 ニュースタイル


 建物は不法占拠している倉庫の様だ、一般的な建築物より高い天井だが荷の上げ下げに使うのだろうか吹き抜けになっている二階から見下ろす影が二つ。


「よう!ウチの若い衆を端から可愛がってくれてる莫迦がいるのは聞いてたが乗り込んでくるとは余程死にたいらしいな!」


 ……ウソだろ?トゲ付きの肩当てとか付けてるけど何処で買ったんだよ?目ぼしい武器屋や防具屋は回ったけどそんなオサレアイテムとか売ってなかったぞ!まさか…まさかオーダーメイドなのか?


「先に手を出したのはオタクらだろ?それにオタクらの若い衆?ちょっと撫でただけで泣きを入れるなんざ箱入りもいいトコだ、大事にしまっとけよwww」


 珍しくパイセンが煽る、舎弟をやられて相当お冠の様だ。

 ちなみに地味子と中佐は裏口とか周辺を固めてくれている。


「言うねぇ、カッコ良すぎて嫉妬しちまうぜ。だがなぁ、喧嘩売る相手を間違ってるのを教えてやんよ」


 何だと?さっきの左肩トゲトゲとオソロの右肩トゲトゲだと?なんか二人揃ってクマドリみたいなメイクとかしてるし日常生活に物凄く興味が湧くぜ!


「ハッ!そっちのアンチャンはビビって声も出ねぇ様だな!道場もどきを開いてお山の大将気取っても高が知れてるみたいだな!」


 そりゃビビるよ、銭湯とか居酒屋とか食堂とかどーやって入るんだよ。

 親戚の子供とかに「トゲのおじちゃん」とか言われるの待った無しだぜ?

 パイセンも良く見れば肩を震わせているので同じ想いに囚われてるのだろう。


「おいおい?ココに来てビビっちゃってるのか?悪ぃけど逃さないからな!」


「帝都の闇を牛耳る影の手が四天王、嫉妬を司る我ら嫉妬兄弟ブラザーズがボコってやんよ!」


 ちょ、四天王何人居るんだよ!w

 左トゲと右トゲが呼吸を合わせて二階から飛び降りてくる。

 すかさずパイセンが取り出すは新兵器モデル870ライオットサプレッサー、各所に補強が入ったポンプ式の散弾銃ショットガンだ。

 選択チョイスした弾丸は低致死性レスリーサル系一粒弾、高質量の軟質セラミックが容赦の無い打撃をもって暴徒を調伏する。

 特別製スペシャルカスタムなジャジャ馬は実用性を疑う程の恐ろしい反動を生み、銃を取り落とさないように身体に抱え込むように引き付け衝撃を逃がしやすい独特の射撃姿勢を取ることになる。


 轟音と共に弾かれる様に宙を舞う左トゲ、落下運動をまともに跳ね返すエゲツナイ威力の代償は身体を半回転以上捻る衝撃を逃がす動作であり大きく隙を晒すことになる。

 右トゲがチャンスとばかりに飛びかかる、崩れた体勢のパイセンは明後日の方向に銃撃すると反動で銃把ストックが右トゲに突き刺さる。

 辛うじてガードが間に合うも吹き飛ぶ方向が俺ちゃんのいる場所なのだからデッドエンドだ。

 今までも好んで使っていた仕込みグレネードからのテレポート、ニンジャの必殺技「ウツセミ」を模倣する事で更なるブラッシュアップがなされたのである。

 正直、古武術使いの諸々の技よりニンジャの技は超能力者エスパーである俺ちゃんには良く馴染む。

 ニンジャ……gotta 2ごった煮で分身を多用して敵を翻弄するトリッキーなキャラである。

 勿論、超能力を使った模倣には限界もあり変幻自在な忍術の完全再現には程遠い。

 そもそも必殺技の名前を叫びながら実体のある分身に攻撃させるとか、まさしく忍者では無くニンジャなのだと納得せざるを得ないのだ。

 それでも可能な限り再現してしまうのがゲーマー魂、「翔天奈落落とし」はニンジャの代名詞とも言える投げ技で敵を天高く連れ去り分身が捕えたまま地面に叩きつける大技だ。

 今回はグレネードの被弾で宙に浮く受け身が取れない右トゲをテレポートで宙高く拉致する、生憎と分身は出せなくとも俺ちゃんには分身とも呼べる使い込んだ必殺技がある。

 敵の頭上から地面に叩きつける様に放つはサエキ・ ボール、基本にして奥義に通ずる身体に馴染んだ必殺技だ。

 サエキ・ボールをガードすれば受け身が取れず、サエキ・ボールを受けるがままにすればそれこそ体勢が崩れる、自由落下速度を超えて地面に叩きつけられては堪らないだろう。

 そして天に我あり地に敵ありの状況下は既に詰んでいるのだ、追撃のサエキ・グレネードが驟雨しゅううの如く降り注ぐ。

 名付けるならばサエキ流忍術「村雨」、今日も左眼の奥にある厨二erチューナーは絶賛稼働中ですよ♪


 パイセンを見やれば初撃を辛くもガードしていた左トゲに襲い掛かっていた。

 飛び掛かるパイセンは明後日の方向に銃撃、反動にて空中軌道を強引に変化させてエグい角度から銃把を左トゲの脇腹に叩き込む。

 あー、散弾銃ショットガンって鈍器だったんだなー。




 人呼んで「ショットガン・アーツ」。


 パイソンズ・ストーリー終盤の魅せ場で開眼するパイセンの新しい戦闘術コンバット・スタイルだ。




 

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