第80話 パイセン道場
帝都の中層地区の外れ、下層地区に程近い場所に新たな商会が出来た、S.P.F.商会である。
商売をするには何を売るにしても辺鄙な場所であり、ご近所さんからも商工会の寄合所かどこかの商会の倉庫あるいは何かの道場と言うような生活に密着してない場所として認識されていた。
それが半月も経たない内に道場かどこかのクランの訓練所として認識されていた。
まずはボッタクー北部統括支部から引っ張ってきたクランの連中がパイセンを慕い、何時の間にやらパイセンに稽古をつけてもらうのが日常となっていたのだ。
更にはS.P.F.商会がボッタクー商会とのパイプを結んだ事によりボッタクー商会本部後援のクランとも面通しをしたのだが、どうにも肉体言語で会話する事になり格付けが終わった頃には全員がパイセンの舎弟になっていた。
俺ちゃんや地味子、中佐も会話に参加した格付け上位者なのだがパイセンの様には慕われてない。
中佐は「人間を相手にしている気がしない、分厚い鉄の壁に殴りかかってる様な錯覚をする」とか言われて彼我の戦力差を悟る切っ掛けすら掴めない存在として恐れられている。
俺ちゃんと地味子は「手加減ってボロ雑巾にするって意味じゃないっすよ!」って涙ながらに訴えられてしまった。
闘いを通しての勝利とは単純なラウンドの取り合いでは無く如何に相手の心を折るのかとゆー哲学を持つ格闘ゲーマーの悲しいサガなのよ(異論は認める)。
その点パイセンはCQCジュードーでコロンコロンするに留めてくれてる、って認識らしい。
言っとくけどパイセンの投げもそんなに可愛いモンじゃないからな?世が世なら可愛がりとかで訴えられるレベル余裕で超えてるからな?
そんな訳でパイセン道場として街に浸透していった。
近所の腕白坊主が度胸試しで忍び込んできたのを捕獲、気付けば入り浸って門下生みたいになってたり、迷い込んできた死にかけの野良犬を助けてやったら妙に懐かれたので
そんな日々の中で事件は起きた、舎弟の一人がボコられたのである。
腕の程は中の下くらいだがそこいらのチンピラにヒケを取る程ヤワな鍛え方をしていない、何より生き延びる事を最優先にせよと心と身体に叩き込まれているのだ。
それが命からがら逃げ帰ってきたのだから普通の冒険者なら殺されてる事案である。
「兄貴、すいやせん!つまんねぇ事で絡まれまして…綺麗に収められなかったあっしの度量不足でやす」
話を聞けば偶に顔を出す程度の酒場に行ったら肩が触れただ触れてないだの
店内の客の殆どがグルだった様だが敵ながら戦い方を知っている様だ。
スパイダーネット下であったが現状の水増し体制ではレスポンスが今ひとつ宜しく無いが贅沢は言ってらんない、それでも首謀者への手掛かりは逃していない。
面が割れてる加害者達を個別訪問して
俺ちゃんと地味子も動いてるのを何処から聞きつけたのかヤスの俺ちゃん達への態度が変わった、すごく変わったw
コレを機にパイセン道場に新たにサエキさん派閥を立ち上げて帝都に覇を唱えるのだっ!
…え?どうせ管理しきらないんだから止めときましょう?うーん…そーだねーw
そんな個別訪問で街を渡り歩く中、溜り場とか何かの事務所とか裏通りを通る機会が増えたが、ある日ルー氏が野垂れ死んでいるのを見かけた。
会議をバックレた瞬間に表の資産は勿論裏の資産も全て凍結したのだ、表面上はボッタクー商会の嫡男がヤラカシて手荷物以外は全て没収されて勘当と言った体だ。
隠していたつもりの資産全てに手が回っていたのはさぞかし驚いた事だろう、ついでにお財布の中に明細書も入れといて差し上げた。
諸々各種の悪行醜聞明細のトップはテイター氏への毒提供と実家にバレバレだからねーと諭す巧みな優しさ。
本人に何らかの器量があれば生き残れたかも知れない、だが金の切れ目が縁の切れ目とズルズルと落ちぶれていった様だ。
ま、そんな事はどーでもよろしー、今俺ちゃん達の目の前にはヤスを襲った連中の屯するアジトがそびえ立っているのだ!(でどんどんどん♪)
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