第79話 ボッタクー商会幹部会議


 孫の手とやらのアジトを壊滅させたのだが、どうも本拠地では無かったっぽい。

 官憲の手入れやら敵対組織からの襲撃とやらに備えた体制だった様だ。

 一応手繰たぐれる線は辿って関連している溜り場とかは全て潰したのだが、とてもでは無いのだが帝都に深く根付いた組織の拠点とは思えない、余程考えられて分断された組織なのだろう。

 只、今後の事を考えると一々敵対・衝突する事が考えられる組織だ、こちらも証拠は残してないが事ある毎に小規模な遭遇戦が予想される面倒くさい相手になりそうだ。

 虫でサッサと炙り出したいトコだが従来と比べてテイム技術で広げた虫の諜報網は精度も落ちるし様々な制限もある、もう一手欲しいところではあるが焦っても仕方がないのも否めない。

 そもそも諜報活動なんて地道な積み重ねなのだ、虫を使ってインスタントに行えたのは局地的に数の暴力的に投下できたからであり本当ならばコンスタントにデータ取りすべきものなのだ。


 ちなみに今回の一番の被害者だったメイドさんの身柄を預かり保養施設に送り込んだ。

 帝国北部の僻地で廃村寸前だった農村を買い取りズニノール伯爵の被害者達を隔離していた試験農場でセラピーと共に働いてもらっている。


 そんな感じで数日を費やして緊急幹部会議を迎えたのだが、ルー本人は欠席していた。

 鼻が効くとゆーのは本当の様だ、一応代理人を立てて出席させていたが調べてもトカゲの尻尾なのはあからさまだった。


 幹部会議は、それなりに荒れたがルー派の連中で出席した連中なんぞ切り捨てられた情弱なので大したことはなく、むしろ会頭派やラナイー派の人間への説得に難儀したくらいだ。


 流石の歴史ある商会を支える海千山千の古参幹部達は目の付け所が違う。

 だが一つ一つの説明を咀嚼していく内にヒラリヒラリと手の平を返してく様は、むしろ見ていて気持ちいいくらいだったw

 正直、ドワーフ製品の技術レベル向上も隠しきれなくなってきていて王国内でも少しずつ引っ張られる形で全体の技術発展が目覚ましくなってきている。

 それと同程度の製品、ぶっちゃけ同程度どころか蓋を開けてしまえば同じドワーフ製品の仕入れルートが帝国でも構築できると言う話なのだ。

 魔法技術で一歩先んじている帝国でも裾野を支える歩兵装備を軽んじる訳にもいかないので装備の刷新は急務なのである。

 確かに軍隊とは実戦的信頼性コンバットプルーフに重きを置く集団なのだが、逆に考えれば段階的に売り込めば改良版として採用され続けて継続的に儲けが取れるのである。

 

 そしてボッタクー商会としては新規事業である農業分野とそれに付随する食品産業に於いても、テイキョータウンへの冒険者流入を皮切りに食文化交流が加速している波に乗り、従来では二の足を踏むような商業的展開が可能であり北部地域の農家への諸々の提携状況等を考慮すれば、リー率いるヤラカシ勢の穴埋めどころか差し引いても余りある舵取りを現地採用で潜り込んだ人間の采配で行われたと言うのだ。

 その当人は今回の議題で会頭肝入の謎の組織、S.P.F.商会から送り込まれた人間であると言う。

 S.P.F.商会は経営への助言を商材とする、謂わば経営コンサルタントとゆーこの世界では前代未聞の業種でボッタクー商会をコントロールする事にしたのだ。

 幹部達を前に会頭は語る。


「旧来にある相談役に当たる役目を商売にまで昇華した商会だ。斬新過ぎるし、そんなノウハウがあるなら自分のところで独自に儲ければよかろう、と思うだろうが彼らの望みは共栄共存らしい。現に市場を駆逐出来るのだけの商材とノウハウを持ってきている、我々と正面切って渡り合うのも可能だが算盤そろばんを弾いて協力関係を築いた方が儲かると判断した、との事だ。儂は信じるに値すると判断するが長きに渡り病で一線を退いていた故に最前線で現役を張っていたお主等に右に倣えと号令を掛けるつもりも無い。彼らの本業は飽くまで“助言”らしい、しばらくはサービス期間とやらで助言を無償提供してくれるらしいぞ?そのサービス期間中は我ら商会の各部門を独立採算制とする、サービスを受けるも受けぬも部門の長たるお主等次第よ。被る分野もあるが故に差が生じてくるのは自明よの?どうだ、やってみるのに反対か?」


 会頭の煽りにも是とも非とも答えぬ幹部達は各々の配下の部署を半々に分けて運用しようと試みる様だ。


 もう少しゴネられたら子飼いクランに対して、王国の既存プレイヤーの人権装備である水晶シリーズの提供とか考えてたんだけどなーw

 出し惜しみするつもりも無かったんだけど次の交渉カードにさせてもらいましょうかね?




 

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