第77話 当ててんのよ!
倒れたメイドの隠しポケットから不審な薬物が出てきた。
ボッタクー家の執事長は薬物鑑定のスキル持ちで俺ちゃんのナイフに付着していたものと同一の物であると断定、意識が戻る前に縛り上げていた。
大商会の会頭だけあって家も豪邸だし使用人も多い中、即座にメイド長や守衛長と連携を取り外部との出入り封鎖を指示、個別に
そんな
其の内何人がクロで何人が緊張による挙動不審なのかは経過を見るが、まず間違いなく何人かは外部と繋がっている筈だ。
昨日の今日で訪れた客、しかも薬を盛られてた会頭を回復させた客に一服盛るなら緊急的な指示の可能性が高い。
つまり一部始終を見届けるなり内部からの報告を受けて本拠地に連絡する者が周辺で監視なり待機していると思われる。
現時点で邸宅周辺のスパイダーネットに引っ掛かる不審人物は居ないので恐らくは待機している。
のんびり監視網に掛かるのを待つのも手だが定時までに報告が無く異常事態と判断して何食わぬ顔で逃げられても業腹だ、ここは一つ釣りに行こう。
手早く会頭に可能性を示唆して封鎖中の外出許可を取る。
邸内の事はパイセンと中佐に任せて俺ちゃんと地味子で敷地の外へ出るのだ。
――――――――
門番に見送られ表通りを練り歩くが直ぐには反応が無い、通り過ぎてこちらの視線が切れてから動き出すのは加点ポイントだけど残念ながらスパイダーネットでバレバレなんですよやだー。
目ぼしい目星を付けた怪しい不審者は裏通りに消えてゆく、安易に尾行して来ないのもポイント高いねぇ。
裏通りでは別の人間が待機してた様だが空から降ってきた俺ちゃんと地味子が
下手な演技をしないで黙って襲ってくるのもポイント追加だねぇ、初撃は
投げナイフを半身で交わしカウンターで中パンチを放つ、躱しづらく受けを強要させる間合いだ。
2D格闘ゲームにおける飛び道具は基本的に受けるか跳んで避けるかの二択であり、特に初期は弾キャラ優遇の時代と呼ばれていた。
時代は流れ、弾抜けやら無敵やらシステム的に弾対策が備わる風潮になったが、それでも飛ばれない・飛ばさせない間合いからの弾打ちを弾キャラ使い達は研鑽し続けた。
そして3D化した格ゲーでは左右に避ける選択肢も増えて当てるのが更に難しくなった。
弾速が速い、もしくは誘導性能が高い弾以外はオワコンだろうと良く言われたものだ。
「見てから躱せるんだから余裕っしょ」
当時の業界流行語である。
ここで少し3D格闘ゲームについて言及しよう、その黎明期に於いてはまず一番の問題となったのは見た目である。
プレイヤーが操るコンボやら必殺技を放つキャラクターの姿を俯瞰的に見せないと爽快さが半減するとFPS視点のモノは開発段階で殆ど淘汰された。
そしてTPS視点のモノがリリースされたのだが問題があった、格ゲーの肝である間合いが分かりにくいのである。
当時の技術では解像度の限界だったり各社バラバラの独自U.I.だったり、そもそもキャラに隠れて下段が見づらいと言った直感的な操作のしづらさ故に3D格ゲーと言うジャンルは下火になっていった。
格闘ゲームと言えばキャラは3Dだがサイドビューの実質2D格ゲーが主流、頑張っても軸と言う概念が残る疑似3D、そんな時代が長らく続いた。
そして技術革新と様々な3Dアクションゲームのノウハウを費やして3D格闘ゲームは帰ってきたのである。
大きな特徴は二つ、ロックオンとステップの導入だった。
ロックオンマークの色や形状で対象との間合いを直感的に表現、前後左右の滑らかなステップにより高度な間合い取りを実現したのだ。
ロックオンに関してはデフォルト位置では無く、特殊な操作で対象の特定部位をロックオンする事で微妙な間合い調整や部位攻撃を行うマニアが登場したり、ステップも特殊な操作方法で半歩ズラシとか騙し歩きなど新しいテクニックが開発されたのである。
そして弾を躱されてしまう弾キャラ使い達はロックオン外しと言うテクニックを併用する事で偏差撃ちや下手に動けば逆に当たるぜ撃ち等の武器を手に入れたのだ。
そう、繊細な間合い管理と独特のリズムから放たれる弾は当たるのである。
それは
そして忘れないで欲しい、俺ちゃんにはパイセンと磨き上げた戦闘経験があり更なる高みへと昇華したのである。
歩が単独一枚では遠く届かないだろう、しかし磨き上げられた連携は最後の最後で歩の一撃が王に届くのだ。
ありがとう、パイセン…貴方の事は忘れない。
感謝を胸に最後の一手で敵の意識を刈り取る…最後の一撃は、いつもせつな
〈言わせねーよ!?それに縁起でもない事言うな!wwwザザッ〉
おっと浸ってたら念話に漏れてたみたいだ失敗シッパイてへペロ♪
地味子のお相手も三次元的なステップで翻弄されて地を舐めていた。
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