第76話 ステーキな夜に
ナイフが弾かれた様に飛ぶと間髪を入れずに地味子が俺ちゃんの背後に回り込み周辺警戒をする、パイセンには中佐が付く。
ナイフが弾かれる瞬間、視界に明滅するグリッドを認めた…あれはオートガードからのガードクラッシュに相違ない。
俺ちゃんの超能力運用は日夜進化している、先日の奇襲からの反省で単純に固いだけのオートガードだと反撃に遅れが生じる事が実証されたのは記憶に新しい。
ならばとバリア構成を見直し、どうせオートガードを何枚も破られる様な事態なら既にジリ貧と判断してハニカムバリアを三層から二層に変更、その上に初期よりも更に薄いバリアを張ることでカウンターへの速やかな移行が出来る様に変更したのだ。
簡単に言うと敢えて壊れやすいバリアを張って
しかし、カトラリーに付着した毒物にまで反応してくれるのは正直予想外だった、確かに格ゲー時代には毒使いが毒攻撃とかしてきたから「毒=攻撃」とゆー認識も出来るのだろうが多分今回に関しては毒を盛った人物がそれを攻撃と認識して見守っていたとかそんな条件とかで反応したんじゃないかな?
万能に無差別な毒に反応すると認識するのは楽観に過ぎるだろう、今後の検証が必要だ。
何にしろ初めての反応で壊れたバリアと共に手放したナイフが飛んでしまうのは良い学習になったとゆー事にしておこう。
なるべく人の動きを見逃さない様に視野を広く取り全体像をぼんやりと捉える、当然空間把握も並行で死角は地味子が担当だ。
視界の隅で動いた影に地味子がナイフを投げつける、動いたのはメイドの一人だった様だが部屋から退出しかけた鼻先には壁に刺さったステーキナイフが柄を震わせている。
もちろんカトラリーだから研いでなどいないのだが随分と深く刺さった様だ。
「動かないで下さい」
決して大声ではないが良く通る声で中佐が警告を発する。
視線が中佐に集まった隙に俺ちゃんは近くにあったカービングナイフを背中越しに地味子に手渡す。
「会頭、彼女はこの場に居るメイドとしては立場は新米ですか?」
「いや、中堅どころで新人教育などにも携わっているが…それが?」
中佐の問い掛けにやや混乱しながら回答する会頭。
部屋には大半が事態を飲み込めないまま緊張感だけが張り詰める。
「失礼、少々過剰に反応してしまった様です。皆さんもゆっくりと深呼吸でもして空気を入れ替えましょう十秒もすれば落ち着くかと…ほらゆっくり吸って…吐いて…」
間を外すタイミングで、緊張をほぐす様な声色で中佐が話し始めて丁度
倒れたメイドからは薬物注入の任を終えたモデル・モスキートが人知れず離れていく。
超小型故に薬物の容量は少なく、効果が現れるまで十秒の時を要したのだ。
常人ならもう少し早く回るのだが大凡の体重から割り出せる耐性の上限近いのだから何らかの訓練を受けてると見るべきだろう。
「さて、説明させて頂きますので今暫くは
パイセンの背後に回っていたが、そのまま俺ちゃんの近くまで来てハンカチを取り出しナイフを拾う。
そのまま繁々と眺めながら視覚データから読み取ったデータをリアルタイムでスパイダーネットにリンクする。
「肉の脂とは別の塗布物が認められますね」
反射的に驚愕の意を示す面々を視線で制して中佐は続ける。
「客人が取り落としたカトラリーは近くの使用人が回収し予備をワゴンから補充するのが一般的ですね?仮にワゴンに予備が無くても指示を受けた者か新人が自発的に厨房へ予備を取りに行くものです…ところが出入り口脇に控えていたメイドに指示を出すわけでもなく自ら厨房に向かう行動は些か不自然ですよねぇ?会頭、彼女の出自を精査する事をお勧めします…以上、拙いながらも推察と理屈だてた考察をば披露させて頂きました、ご清聴ありがとうございました」
芝居がかった
せっかくのステーキを一枚無駄にしてくれるとは嫌がらせとしては上等だね、万全の監視体制の元で会頭邸内に入り込んだ害虫を漏れなく炙り出して差し上げよう。
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