第74話 止まラナイー父親
「……で、娘をどうするつもりなんだ?」
ようやく会頭は言葉を絞り出したのだが…背後ではその娘が天を仰ぎ片手で目を覆っている。
「娘さん?ラナイー嬢ですか?特にどうもしませんが?」
中佐も測りかねてる様だ。
「なんだと!確かに多少トウはたっているかもだが親の欲目を差し引いても十二分に別嬪さんではないか!何が不満だと言うのか!」
グギギギと多少トウのたった別嬪さんが笑ってない笑顔で父を睨む。
「と・う・さ・ま?何度も説明しましたよね?商会の一大事で引き合わせたのであって私自身の身の振り方には一言も言及されてなどいない、と」
おおう、娘さんの額にハッシュタグ。
「し、しかしだな、ルーやリーがこのザマだ、商会はお前が継ぐしかなかろう。さすれば商会とお前は殆ど同一と言っても過言では無かろう!それにこの機会を逃せば次などある筈も無かろう!?」
あ、ハッシュタグが増えた…しかし即興とは言え良く出来た父娘コントだなw
「お父さん、落ち着いて下さい」
冷静に話を戻そうとする中佐…でもそのワードは地雷よ?w
「誰がお義父さんじゃい!そんな風に呼ばれる筋合いはないわ!」
ヤベーw思った以上に面白いw
〈倒産の危機に父さん暴走www〉
〈ちょwパイセンwやめなさいw〉
どこから取り出したのか
いい音してんなーw座禅の時に眠気覚ましとかで使うアレだけどマニアックなもん持ち歩いてるんだなw
〈文字通り目を覚ませ、とwww〉
〈だからやめいw〉
「会頭、娘さんが継ぐにしろ今の時点では貴方が商会のトップです。だからこそこうして病床から叩き起こして話を詰めてるのです。それに娘さんに手を出す気はありません」
中佐が話を強引に戻そうとする。
「何だと!?ウチの娘のドコが不満だと言うのだ!?」
反射的にブチ切れるお父さん。
「私には些か若すぎます」
「確かに行き遅れと言われる様な歳だが充分に女盛りで…え?若い?」
「えぇ、少なくともあと十は上ではないと、それに武芸で引き締まって健康的で非常に宜しいですが個人的にはもっとこう、ふくよかな方が好みですな」
そう中佐の好みは外角高め、歳の頃なら五十路超え擬音で示せばボッボッドカーン、立てば三役座ればボターン歩く姿は土俵入り、らしいのだ。
見た感じ、スポーティアラサービューティな娘さんは確かに食指が動かないのだろう。
どうにも勢いをそがれた会頭は大人しくなり話を詰めていった。
娘バカの親バカを除けば流石に大商会の当代だけあり目の付け所は勘所を押さえている。
「販路利用が主な要求との事ですが…これは我々に卸してそれで終わりと言う事とは意味合いが違うのですな?」
「卸してお任せするのも
「単純に値を付けて売る、と言う訳では無いと」
「そうですね、従来の市場を荒らしたいとは考えてません。ただ市場全体の品質向上の牽引はしたいですね、市場の動きに対応が難しい業者が出たら傘下に取り込んで技術指導を行いレベルを引き上げます、問題なければそのまま独立してもらってもいい」
「…市場全体に影響を及ぼす程の質と量ならば蹴散らして独占した方が利益になるのでは?」
「独占したところで得た利益を投資なり何なりで又手間ですよ?それなら市場全体を活性化させた方が手間が省けるしトータルで回る金額は増えます。貨幣経済なんぞ金を回してこそですからね」
「目指すところは?」
「そうですね、王国に引けを取らないレベルまでの食文化の底上げ、後は武具をドワーフ製程度まで上げるのは問題無いでしょう。後は景気が良くなれば独自の文化的開花や技術発展が期待できますので機を見て新事業にでも乗り出せばいいのでは無いかと」
「今は収まっておりますが帝国は覇権主義を掲げていた来歴があります、良質な武器と豊富な兵站が期待できるとなると…」
「武器屋だからと好んで死の商人になる必要など無いでしょう。それに戦争は一時的に儲かるかも知れませんがトータルではマイナス、悪手中の悪手です。最悪何をしてでも開戦なんかさせませんよ、技術発展の邪魔です」
ピシャリと言い放つ中佐に黙り込み何やら考えてる様子の会頭。
仮に戦争になったとしても王国相手は無理だろうなー…かと言って他へと国土を広げたとしても王国に横っ腹を晒す事になる。
そうなったら帝国軍部の上層部も決して王国を放置などしないだろう。
王国だって南のマジクラ勢の連中が纏まってないとは言え、その実趣味の問題なのだ。
南の防衛線を洋風にするか和風にするかで意思の統一が図れてないだけなのだ、しかも連中は景観にもこだわるから和洋混在を良しとしないらしい…それはそれでファンタジーだと思うんだけどなw
だけど「対帝国の国境線に万里の長城造ろうず」とか声掛けたら奴らは間違いなくダース単位どころかグロス単位のTNTを各個人で持ち込んで派手に吹き飛ばして整地、そして一晩で築城とかやりかねない…いや、間違いなくやるだろう、マジクラの整地厨や大型建造物厨とはそーゆー生き物なのだw
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます