第71話 冒険者ギルド帝都支部
火炎の矢を肴に盛り上がった翌日、俺ちゃんと地味子は冒険者ギルドへ、残りはボッタクー商会本部へと二手に分かれた。
冒険者ギルドで受付けに行くと担当者が会議中との事で2時間程待たされた。
お役所仕事と揶揄したいところだが今日日お役所だってそんなに待たせないぞ?地方によるのかね?
まー、俺ちゃんの場合は地味子と念話でイチャイチャしたりトレモしたりと暇つぶしの手段はいくらでもある。
しかも今回は持ち込んだ虫を他所より多目に投入して情報収集してるので結果が楽しみなのだ。
小一時間程度で収集した情報を整理した地味子から念話が届く。
〈マスター、驚きの事実です。ハラダー氏の
〈どんだけwってか髪の毛の事は触れてあげるなよw〉
〈どうやらデリカシーのない言葉を放って自覚の無いまま去る後ろ姿が被害書達の印象に強く残ってる様です〉
〈なるほどw…つかスゲーな、パワハラダー・モラハラダー・セクハラダー・ロジハラダー・スメハラダー・エイハラダー・マジハラダー…マジハラってなんだ?〉
〈マジックパワーハラスメントですね、帝国では魔法使いや錬金術師の地位が高く、総じて魔力が高い程評価が高くなる傾向があります〉
〈マジで?そんなん職ごとのビルドで必要な魔力変わってくるじゃん、INT高いのに頭悪そうな判断基準だなw〉
〈武器の分野で遅れてる分、魔道具や魔術付与に力を入れてる様ですね、そこに実力主義()が相まって理解が薄い人達の薄っぺらな評価基準になってる様です〉
〈謎の薄さ強調wそれで力入れてガトリングガンとか開発したんか〉
〈薄々勘付いてますよね?〉
〈やめいw〉
〈そして13の渾名の持ち主が昨日戻り上司に報告、今まさに私達への対策会議中の様ですね〉
〈それで待たされてんのかw〉
〈会議内容は…如何に
〈その業務部長が監査人の上司なの?そりゃ人も育たんわなw〉
〈経験と言うのは反省を通じて価値観や方法論に落とし込んでブラッシュアップして初めて有用性が認められるものなんですが…只々若い頃は苦労するもんだ、苦労すべきだ。の繰り返しですね〉
〈この人のせいでリアルタイムで苦労してそうだなwいや苦痛か?〉
〈何にしろ生産性の無い時間の過ごし方ですね、ブレインストーミングにもなってませんよ〉
〈アレもアレで参加者全員が意義とか意味とか理解してないと只の雑談で終わるからなぁ〉
〈もどかしいですね、データをシミュレートして有効度と危険度を評価した選択肢提示して差し上げたいです〉
〈いつも助かってますよん♪〉
〈それが生き甲斐ですから〉
ホンマ良く出来た娘さんやでぇw
残りの時間はギルド内の各種書類等を
有力商会のクランを優遇すれば取引量が増えて本部からの評価が上がる、と言う理屈に全乗っかりで最早
冒険者側の不都合は握り潰して捻じ伏せて、表面上は問題が起きてない体を装ってる…何の為のギルドなんだよw
そうして会議が終わって暫く経った頃に応接室に案内された。
「いやぁ、待たせたみたいで申し訳ない。ギルド業務部長のムヌオだ。何しろ色々兼務してて多忙でね、ハハハ」
ムノウ?ムノー?ま、どっちにしろ欠片も申し訳ないと思って無さそうな軽薄な笑顔だ。
「F級冒険者のタローとハナコです」
一応普通に挨拶しておく。
「うちのハラダーとやりあったんだって?済まないねぇ、アイツはどうも頭の硬いところがあって融通を利かせる応用力が足りないんだよなあ」
なんでそんな話を少し嬉しそうに話すんだ?
「本当はみっちりと指導したいトコなんだが、私も色々兼務してて監査も人事も見ていて忙しくてね。何、結局ね監査も人事も業務の内だから統合を私が上申して人件費削減を果たした訳だから文句も言えないんだがね?ハハハ」
ウソだろ?監査も人事も独立してるから機能する部署じゃねーか!馬鹿なの?それとも確信犯なの?
ダメだコイツ、真夏に部下が熱中症になる迄エアコンの温度下げないで電気代節約したとか抜かすタイプ…いや、熱中症で倒れた人間に説教すらしかねないヤツだわ。
「話は大体聞いたよ、ノーザンパイアのシャープ君だよね?彼も昔から知ってるんだけど、どうにも感情が先走るタイプでね…流石に今回は反省してると思うんだよ、ウン。それでどうだろう?同じギルドの人間だ、これからも顔を合わす事もあるだろう?人間関係に遺恨を残さず円滑に回す為に今回は多目に見てやってくれんかね?この通りだからさ?」
この通りってどの通りですか?その片手拝みはその通りを横断する為の動作ですか?
「ホラ、こうやって部長の私が頭を下げて、それを受け入れる度量を示してくれれば将来の助けになるよ?知ってるかな?帝国内でC級への昇進は帝国支部の人事部、つまり私のところで最終承認する案件なんだ。腕が立つって話は聞いてるよ?将来有望な君達の事だ、わかってくれるよねぇ?」
なるほどねぇ…おけ、
「部長の仰っしゃる事、よ〜っく分かりました。今から所定の手続きをしてきます。お時間ありがとうございました!」
ピシッとフレッシュマンっぽいお辞儀をキメる。
「いやいや、わかってくれると思ってたよウン、人間腹を割って話せばこんなもんだよね」
応接室のドアを部長手ずから開いてお見送りして頂いた。
そして俺ちゃん達は真っ直ぐ窓口へ向かう。
「すみません、ノーザンパイア所属F級冒険者のタローとハナコです」
緊張して、やや青ざめた表情を作り、話を続ける。
「実は…ムノー部長よりご叱責を頂きまして…この度は御縁が無かったと冒険者カードを返納する事になりました…」
一瞬驚きの表情を見せるが神妙そうな俺ちゃんの表情から何やら察して、そこからは極めて事務的に対応してくれた。
「返納に当たり、まずこちらが所属クランからの脱退同意書になります、そしてこちらが冒険者ギルドの退会申請書です、これで必要書類は全部ですよね?」
コクコクと頷く窓口の係員。
「そして冒険者の身分では無くなりますので冒険者時代に申請してた申請区分変更届けです、ノーザンパイア支部発行、管理ナンバー930号の業務改善提案書と931号の上申書を
係員は目を白黒させているが提出した書類に一切の不備が無い事を確認すると受領印を押してくれた、アレって簡易魔道具だけど機能が単純なだけに押印後の偽造って難しいんだよね。
「それでは宜しくお願いします、大変お世話になりました!」
ピシッとお辞儀をして颯爽と帰る俺ちゃん達。
〈部長の人は絶対に申請取り下げしたと思ってますよ?〉
地味子の念話が心地良い。
〈えー?だって冒険者ギルド憲章に抵触する案件だよ?当然ギルド本部にも同じ申請出してるんだからローカルな帝都支部だけでおいそれと方が付けられる案件じゃあ無い事なんて部長クラスなら秒で把握できるっしょwあー、後で本部宛にも追加添付資料を送付しとかないとなーwついでに先程の面談の録画データもノーザンパイア衛兵隊預かりの魔道具に追加しとこーっと♪〉
〈最後の決め手の動画が動かぬ証拠になる、と。勉強になります〉
いや〜、照れるな〜w
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