第70話 そして帝都へ


 色々と一段落ついたので遂に帝都に向かって南下なんかしてみるのだ。

 大義名分はボッタクー商会北部統括支部長の長期不在、そして基準は満たしているが本部指名では無く現地採用の人間が副支部長として何時までも采配を振るってるのは具合が悪かろうと、様々な本部決裁案件を携えて中佐率いるパイセン、タロハナコンビを含む傘下クランメンバー選抜隊にて行脚の一幕なのである。

 結果論ではあるがAIに時間を与え過ぎたが故に、伯爵家へ提供する各種情報、中佐不在期間のボッタクー商会の行動指針等万事抜かり無く半年くらいはバカンスしても大丈夫じゃね?くらいの余裕を産んでしまったw

 そしてノーザンパイア掌握の為の虫の散布量は予想通りだったが流石にザッキー、ここに来て技術的ブレイクスルーをしてきた。

 通常の発想だと廉価版と呼べるシリーズを投入してコストダウンを図りそうなモノなのだが変態は一味違う、テイム能力を付加した上位機種を投入してきたのだ。

 

「これでコンタクトした同種近縁種を使役出来る様になりました、もちろん精度は数段落ちますし制限も色々とありますが使いようですね。複数拠点が確保できた現状は既に情報秘匿レベルは一段も二段も落ちてまますが、だからと言ってメタル・インセクトは使い捨てにしたり鹵獲ろかくされていいものではありません。奴隷商の持つノウハウなんて“先が見えてるから”なんて価値を見出さないで食わず嫌いのままでいたのは反省点ですね。連中が隷属と並行して研究していた結構なレベルのテイム技術の知見を得る事が出来ました。“技術に貴賤は無い、使いこなすか否かだ”…技術至上主義テックイズムの教科書の最初の方に出てくる言葉に今更ながら打ちのめされてますよ(苦笑)」


 やけにイケメンスマイルで自嘲気味に語るモノローグは目のところに昆布を付けるかモザイクを掛けておこう。

 そんな感じで虫達のサポート一番のチートを従えながら帝都までスパイダーネットを繋ぎつつ訪れたのである。

 道中はカットしたけど、タロハナとパイセン&中佐が居たら多少の問題=無かったものと出来るくらいの誤差でしょ?

 もしも外伝とかアニメ化した時に道中の話を掘り下げてたら「あ、ネタが切れたなw」とか思ってくれていーんじゃない?リクエストとかあれば別だけどw

 

 そんな感じで訪れた帝都、領土と共に肥大した首都の街壁は外敵の防御として機能しておらず、その内部は首都機能としての会合場所や豪商等を含む一部の権力者の居住区を示す区画線としてしか機能していなかった。

 そんな区画線を担う街壁の上には疎らにガトリングガンが配備されていた、帝国謹製の技術の結晶…その筈なのに火弾を吐く為に産み出されたソレは不満そうに沈黙を保ったまま鎮座している。

 簡単に言えば街壁内の上層地区、身分証の提示を求められる区画線で囲まれた中層地区、そして周辺に展開する下層地区を以て首都と称されている。


 首都を練り歩くのに全員が揃う必要もない、俺ちゃん達と其の他組とで自然と分かれた。

 決して俺ちゃん達に人望が無いわけではないのだ、確かにクランの連中は兄貴アニキとパイセンを慕ってはいるが奴の下っ端率いる系カリスマが高すぎるだけなのだ。

 その証左として誰一人中佐に媚びようとしてない…端的に中佐は黙ってるとコワモテだからな、そこからの予想外のスマイルに並み居るマダム達が堕ちているのである。

 俺ちゃん達は…アレだ!きっとラブラブな二人の邪魔をしちゃいけないと周りが気を使ってるだけなのだ!そーに違いないマチガイナイ。

 それならそれなりにデート、否おデートを楽しまなければならないだろう。

 クレープとか食べる?それともハート型になったカポーストローでドリンクシェアとかする?え?あ、ハイ、本来のボッタクー商会の主力商品である武具の市場調査ですね、ハイ…


 流石に帝都を隈無く廻るのは不可能とは言え冒険者御用達と目星を付けた目ぼしい店は半分以上は廻れた。

 大体の品質は従来のドワーフ製に一歩劣るかな?くらいだったのだが、一つだけ問題となる商品があった。


「店主、コレは非売品ではないのか?」


 震える指で指した先にはバラ売りしているエンチャンテッドウェポンだ。


「あぁん?売り物じゃなきゃ店頭に置きませんぜ?」


 少し訝しげな店主が商品を確認すると、続けて言う。


「ああ、確かに縁起物かも知れませんが武器は武器、消耗品にしちゃあ少々値が張りますが、そこは一つ御納得頂きたいですね」


 陳列してあった商品は「火炎の矢」、似たような「炎の矢」や「紅蓮の矢」がある中でお値段が一桁違う曰く付きだ。


 ゲーム時代に実装されていた「炎シリーズ」と「紅蓮シリーズ」の短弓・長弓・弩があったが「火炎シリーズ」は存在していなかった。

 ところがβテストの頃から「火炎の矢」はセットとなる弓のラインアップが実装されてないにも関わらず店頭に非売品として展示されていた。

 実装されれば、さぞかし強力な弓矢になるだろうと最初期は期待されていたが余りにも長い間放置された「火炎シリーズ」。

 実は当初よりプレイヤー間で囁かれてた“運営のミスで実装されないボツ案の名前で残ってたデータの残骸じゃね?説”が的を射ていたのだった。

 では何故いつまで経っても放置されてたのだろうか?

 勘の良い方なら既にお気づきであろう…「火炎の矢は買えんのや」とゆー運営のお巫山戯ふざけだったのである。


 お土産として3本購入して速攻変態共に自慢メールを送信、次会う時が楽しみなのだ。




 一通り市場調査が終わって帰ろうとしたら地味子から「まだ終わってません」の一言。

 あれー?TODOリストは全部チェック入ってるよな?とか思ってたら喫茶店でクレープとハート型カポーストロードリンクをクールに頼む地味子タン(はぁと)




 高性能すぎるっしょ(照)




 

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