第66話 監査人現る
捕縛したギルマスとグラサン爺は衛兵に引き渡したが、ちょっとした問題となった。
治安の一部を任されていたり場合によっては支配者階級から冒険者と言う立場を守ったりという役割を担う組織の
だがギルドの訓練場と言うそれなりに目撃者もいる場所での自白であり言い逃れもきかない状況だったので取り敢えず
衛兵を管理する領主家もクソ忙しい時期に余計な事シヤガッテ厶!と苦々しくも速やかに帝国内の冒険者ギルドを束ねる帝都支部への連絡を行った。
一方、ノーザンパイア支部はと言うと運営に殆ど影響が出なかった。
口喧しいワンマントップの組織なんて人を育てるなんて考えは薄く、もっと言えば仮にそんなトップに育てられた人材なんぞお察しである、下の者は上の者の立ち振舞を反面教師にして世代交代を虎視眈々と静観しているものである。
案の定、当たりの強いギルマスだと拗れる様な案件対応を専らの仕事としていた人当たりの良い副マスターが
そろそろボッタクー商会の本部がある帝都に進出したいのだが被害者である俺ちゃん達タロハナコンビは足止めを余儀なくされていた。
本来なら事実関係の確認が終われば速やかに開放されるのだが今回の被疑者であるギルマスを抱える冒険者ギルドから「待った」がかかってるからである。
五男の教育に関する協力やら、この領地では騎士団の下部組織である衛兵隊の不正調査に関する協力やらを俺ちゃん達から受けている騎士団長からは謝られてしまったが、彼のせいじゃないものね。
「気にしないで、また今度飲みましょう」と労っておいた、色々大変そーだもんなー。
そんな中に冒険者ギルド帝都支部より特別監査人とやらがやって来た。
「冒険者ギルド帝都支部特別監査人のハラダーです。この度の事件の調査を担当します、宜しくお願いします」
パリッとした服をお召しの、下げた頭の後ろ側が薄くなってる覇気のないオッサンだ、苦労してるのかな?
「F級冒険者のタローとハナコです」
礼には礼をと対応するが、F級と名乗った時に監査人の目元がピクリと動きこちらを見る目つきが少々蔑んだものになる…あー、そーゆータイプなのね。
「まずは事実関係の確認をしたいのですが、ギルドマスターのシャープ氏とS級冒険者のグラ氏からは既に聞き取りしてますので一つずつ確認願います」
肩を
「前例の無い事なのですが、まずお二人はクラン未加入の状態でノーザンパイアに訪れギルドマスターの招集に遅参した上でクラン入会考課試験にて過剰な暴力を振るい多数の怪我人を出した、と」
おやおや、随分な言われようだなー。
「概ね事実とは違いますね、確かに当時はクラン未加入でしたがギルドマスターの言う出頭命令とやらを我々に伝える方策を何一つ取らずに発令した上で放置した結果、我々の到着が遅れただけの事です。それとクラン入会考課試験?でしたっけ?クランの勧誘員を名乗る連中が我々を囲んで「お前らの実力を見てやるから模擬戦に付き合え」と仰っしゃるもんですから付き合ったまでですよ?ギルドの検分役の方も開始から終了のその時まで何も口を挟まず恙無く終わりましたよ?」
せっかく俺ちゃんが丁寧な説明をするも、何やらこちらの言い分に御不満の様子ですなー。
「どうやら主観の相違があるようですね、何しろ前例の無い事ですので…続けますね。その後、ギルドに未練は無いと言う様な捨て台詞を吐いてギルドカードを投げ捨て退出。本人の最終意思確認が取れない為やむ無くギルド退会処理を差し止めしてる最中にギルド員としてクランに入会、入会クランの名前を背景に他クランのメンバーに喧嘩を売り街の治安を揺るがした事にギルドマスターは心を痛め、それでも未来あるお二人の事を考慮し大事にはせずに指導者としてグラ氏を紹介するも闇討ちに近い形で暴行に及び仲裁に入ったギルドマスター共々口封じの脅迫を行った、と」
すげーな、オイwコイツの手にかかると浦島太郎がガス兵器抱えた自爆テロ要員とかにされちまうぜw
「何かおかしいところでもありましたか?」
俺ちゃんの苦笑にシレッと突っ込んでくる監査人、おかしいのはアンタのオツムだよw
「そうですね、おかしい点は多々ありますが…」
説明メンドイなー、と言葉を濁すこちらの言葉を遮り監査人が言葉を紡ぐ。
「おかしい事だらけなんですよ、そもそもF級冒険者が立て続けにこれ程の問題を起こすなんて前例がありません、更にギルドマスターやS級冒険者などの上位者を巻き込んだ不祥事など前代未聞です。帝国の治安の一端を担う冒険者としての自覚や責任感があるなら起こりえませんし現にこんな前例はありません!」
前例が無いから精査するのがオマエの仕事だろーが…すげーな、コレはアレだ、何だっけ?
〈マジべーですね〉
ナイス地味子!ナイスフォロー♪デキル女は違いますねw
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