第64話 襲撃者
商業ギルドをも巻き込んだノーザンパイア内のクラン間のゴタゴタが粗方片付いた頃に俺ちゃん達タロハナコンビが冒険者ギルドに呼び出された。
本来ならば、いの一番に呼び出される筈なのに全方向土下座外交で忙しかったのか単純に嫌な事を後回しにしただけなのかは判断に迷うところだが、ようやっとかと言うのが正直な感想だった。
どんな話の展開になるのかなー?と少しは興味を覚えながらも冒険者ギルドに訪れたのである。
ノーザンパイアの冒険者ギルドは少し変わった造りをしていて受付けやロビーがあるエリアを抜けた先に訓練場があり、その先の上層階にギルドマスター室がある。
端的に言えば訓練してる冒険者達を見下ろす設計になってるのだ。
受付けにて呼び出された旨を伝えギルマス部屋へ向かう様に促された俺ちゃん達が訓練場に入ったところで視界に異常を認めた。
白いグリッドが視界に走り、グリッドが白から黄色、そして赤へと変色してパリンと透明な何かが割れるエフェクト、オートガードからのガードクラッシュなど久しぶりに見たよ。
「ヒョヒョヒョ〜、不意打ちに対応するとは話に聞く通りに多少は骨があるようじゃの〜」
オートガードからのカウンターをクルクルと空中を後転しながら避けて距離を取った怪しい爺さんが語りかけてくる。
トーガの様な服を纏った浅黒く細身ながらも筋肉で締まった体躯とブレない姿勢は年季の入った武術家だと言外に雄弁に語っている。
視線を悟らせない為か、或いは強い光による眩惑を防ぐ為か色の濃いサングラスを掛けている。
前に出ようとする地味子を片手で制し、一歩前に出て構えをとる。
「ヒョッヒョッヒョッ、話が早いと言うか気が早いと言うか。どうれ、腕を見てやろうかのう」
拳を握り構えを取る謎の爺さん…こちらを下と見ているのだろう、先に手を出せとばかりに待ちの姿勢だ。
乗ってやるかと牽制に中パンチの念動弾を放つとヌルリとした体重移動から瞬歩で距離を詰めてくる。
そこから拳の弾幕を張る…そのまま削り切る、或いは耐え切れずに距離を取った相手に必殺の飛び蹴りを放ち大きくダメージを取り再び拳の弾幕を張る…典型的なAGIモンクの
確かに年季の入った連撃でまともに付き合うのは少々骨が折れる、だが高いAGIによるステータス任せの単調な連撃には見た目程の脅威は感じない。
格闘ゲームの攻防はコンボの応酬であり打撃音が一種のビートを刻み、そのビートが緩んだ時に差し込まれ攻守交代するのが一般的である。
目の肥えた…否、耳の肥えた格ゲーオーディエンスは打撃音を聴くだけで攻守交代や超絶コンボルートを選択した事や、或いは空中コンボに失敗して相手を落としたとかを察知する事ができる、“格ゲーとは対戦相手とセッションする一種の音ゲーである”と言われる所以である。
そんなレベルの対戦から見ると確かに間断無い連撃は脅威ではあるのだが、単純に速いだけのメトロノームなどカウンターを取ってくれと言わんばかりの
単調だが重みもある連撃に強弱を付けたパリィとガードを織り交ぜる事でリズムに変化を付けさせる、リズムの空隙にカウンターを差し込むと爺さんは半歩下がり、それでも攻撃体勢を崩さずに連撃に勤しむ。
だがその距離はすでに爺さんの間合いでは無いのだ、連撃は乱撃となりサエキ・グレネードを差し込むと何を察知したのか大きく距離を取る。
そこからはワンサイドゲームだった、無理に距離を詰めようとする爺さんの鼻先にサエキ・ボールやサエキ・グレネードをバラ撒き変幻自在なテレポートで得意な間合いを作らせない。
強引な飛び込みにはカウンターを合わせて羽根をもぐように手足を潰していく。
相手の降参やら嘆願には一切の耳を貸さない、丹念に丁寧に手足の骨を折っていき特に顔面は涙と流血でグシャグシャになるまで連撃を重ねた。
俺ちゃんは怒っていたのだ。
近接戦闘を仕掛けるのにサングラス?ハァ?舐めプなのは構わないが眼鏡に対する礼儀がなってないでしょう?
割れたレンズが危ないとかゆー話もあるけど、そもそも殴られて壊れる可能性があるのに外さないとか眼鏡を軽んじ過ぎでしょう?せめてゴーグルとか防刃サングラスとかなら
いいだろう、割れたサングラスの破片と共に其の身に刻め…
テメェは眼鏡を舐め過ぎた。
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