第62話 昔の話


 中佐がボッタクー北部統括支部を掌握した頃にパイセンが空からやって来た、飛空船に乗ってやって来た。

 テイキョータウンではイレギュラーとゆーか、ノリと勢いで中佐を監査官に仕立て上げた為に何時までもテイキョータウンに残す訳にもいかなかった為、色々考慮した上でパイセンに残ってもらったが本来なら中佐はサポート兼ボディーガードとしてパイセンから離れるべきでは無いとAI達は考えている。

 勿論三人とも重要人物として保護対象なのだが優先順位としてはザッキー、パイセン、俺ちゃんの順番なのだ。

 ノーザンパイアのスパイダーネット監視網も充分な安全レベルを確保できたとしパイセンが招聘されたのである。

 当然テイキョータウンにブルースを初めとした中堅プレイヤーギルドが流れ込み、人手不足が解消されたからってのもある。


「よう、しばらく。まずはコイツを食べてみてくれ」


 笑顔でパイセンを迎え入れる俺ちゃん。


「うはwwwいきなりだな…なんだこりゃ?お浸しと…ブリの照り焼き?何故に?www」


 相変わらず草を生やしてカモフラージュ率を上げてくるパイセンだw


お久しぶりおひたしブリですw」


 渾身の一撃を放つ俺ちゃん。


「相変わらずだなwww」


 しまった、パイセンは草がデフォルトだからウけてるのかどうか判断がつかない、人選を誤ったか…


「それよりブルース達に昔の俺達の事がバレてたwww」


 …なんだって?


 話を要約すると酒の上の話で一部のマニア達に語りぐさになってるプレイヤーの話になり「そう言えば、こんな変態いたよね」って話になり「あれ?それって〇〇じゃね?」とゆー流れから暴露されたらしい。

 まぁ、今更過去の話なんで別にどーと言われてようが構わないんだけどね。

 

 俺ちゃんのメインキャラは当時VIT両手剣騎士と呼ばれるマニアック…歯に衣着せなければ中途半端なキャラだった、VITは体力と耐久力を上げるステータスで騎士なら盾持ちが最適解でパーティの壁役にGvGの特攻ぶっこみにと所謂タンクとしてのテンプレであった。

 だがソロプレイで両手剣を持たせると、そこそこの狩り場でドロップが重量オーバーになるまで永久機関狩りが可能になるのである。

 スキルもそれに合わせて調整していた為、効率的と言うより安全第一で狩りが出来て資産に余裕が出来た時にセカンドキャラの騎士を作ったのだ。

 通常、前衛はVITを上げてガチガチのタンクに仕上げるかAGIを上げて避けながら高速の連撃をいれる2パターンが主流だった。

 だがしかし俺ちゃんは防御ステータスにINTを選択した、減算防御のVITでもなく確率回避のAGIでもなく魔法攻撃力とMPが増えるINTを、である。

 近接職にはあるまじきINTにより膨れ上がった豊富なMPからアクティブスキルのパリィやマイティガード、マジックオフセット等で全ての攻撃を手動で捌き、バッシュで敵との距離を作り、フライングスラストや真空斬りと言った飛び道具スキルでダメージを与えると言った非常に忙しい操作を要するプレイスタイルを確立した。

 攻撃と防御にバランス良くステータスを割り振り、それに見合った装備で強みを伸ばして戦闘時は半自動的な攻撃と防御で被弾値をコントロールして狩りをする…そういったゲームデザインに真っ向から喧嘩を売るようなプレイスタイルだったのだ。

 当然それほど強いビルドでは無かった、ワンミスで致命的な被弾を許す様なキャラ作りだったのだ。

 発想は至極単純“レベル制のネトゲで格ゲーを遊んでみたかった”ただそれだけだったのだがステータスは全て攻撃に関わるものしか上げない為にレベルに対して所謂大物喰いジャイアントキリングが出来てしまうビルドとして一部のマニアに刺さったのだ。

 図らずも変態の先駆者として一時期その界隈では話題になっていたが…未だに覚えてる人もいるんだなーw


 パイセンもパイセンで中々に尖ったビルドのサモナーをしていた。

 サモナーとは自身は最低限の自衛手段を持たせつつ、自身よりも戦闘力のある召喚モンスターと共闘するとゆーのが主流であり、変わり種と言えば“モンスター召喚しないで只管自キャラ強化にリソース回すサモンしないサモナー”とかのマゾくらいだったのだが変態は一味違う。

 自衛手段を全て投げ捨て騎乗スキル以外は召喚するケンタウロス強化に全て注ぎ込みインベントリーは投げ槍で埋め尽くし、高機動移動砲台に騎乗するとゆー新ジャンルを開発したと思いきやキャラデリして今度は同じコンセプトで召喚モンスターをアラクネに乗り換え立体機動と尽きない弓矢で蜂の巣にする、何なら蜘蛛の巣に捉えた敵を蜂の巣にする二段構えの召喚モンスター騎乗スタイルMk.IIまでも開発していた。


 ザッキーも一味違う変態っぷりを披露していた。

 元々戦闘に向かない商人系の中でもアルケミストはステータスもスキルも育ちきるまでマゾプレイを強要される茨の道だったのだが比較的転職後すぐに覚えられるボムポーションを火竜山ダンジョンの火口から投げ入れる事で他の戦闘職と遜色無い経験値効率を叩き出す育成法を編み出したのである。

 何が変態かとゆーと、火口まで辿り着く道中にて溶岩と言う高ダメージゾーン+強敵が居座ると言う難所があるのだが、そこを超えるショートカット方法が錬金強化した使い捨てのリアカーの中に乗り込んでボムポーションで吹き飛ばして飛び越えるとかゆー控えめに言ってもアタオカな攻略を数々の試行錯誤の上に確立したのがマジパない。


 そんな俺ちゃん達がゲーム内で出会い、僅かな時間で新たなギルドを立ち上げたのは運命であり、必然だったと言えるだろう。




 

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