第59話 ノーザンパイアのギルドマスター


「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ…貴様ら一体どういうつもりなのだ!」


 模擬戦が終わると何故かギルマス部屋に戻されてハッシュタグを増やしたギルマスに怒鳴られております。


「あの、質問の意図が分かりかねるのですが?」

 

 何が気に障ったのかは身に覚えがありませんが、只一つ言える事は…“ぐぬぬ”の法則は「(ぐぬぬ)+(額の#)✕(ぬぬぬ)」では無いか?とゆー新たな仮説が建てられたと言う事です。


「各クランの者達を模擬戦で叩きのめしたのは百歩譲って認めよう…だが、どこのクランにも入らないとはどういう了見なのだ!?」


「え?だって弱いんですもの…」


「調子に乗るな!貴様らが倒した者共よりも強い者など各クランにいくらでもおるわ!」


「んー…そう言われましても、試験ですからねぇ」


「その試験官役を叩きのめしておいて何をぬかすのじゃ!」


「え?何を仰ってます?逆ですよ?入って欲しいクランの勧誘員達が来たからどんな者を寄越したのかが試験したのですよ?」


「な!?…」


「腕っぷしが弱いのは百歩譲って仕方ありません、ですが入って欲しいクランのPR、勧誘動機、模擬戦を以て何を訴えたいのか?何一つ伝わらない、伝えようとしていない。いいですか?面接会場に来て突然歌い出すようなモノですよ?仮にそれが芸能事務所の面接で歌唱力を見せつけるにしてもやり方がエッジ効きすぎですし、そもそも今回はその歌唱力すらお粗末なモノですよ?もう腕っぷしも頭も弱すぎでしょう?こんなん寄越すクランとか揃いも揃ってお断りですよ?」


 何故か絶句してるギルマス#お口パクパク。

 この際だから質問してみようかな?

 

「逆にお聞きしますが冒険者ギルドは一体どういうつもりなんですか?検分役とやらを買って出た方も何一つ説明無しで…単純に施設の破損とかされないかの監視業務かと思ってたら「やり過ぎです!止めて下さい!」とか突然言い出す始末ですよ?レフェリー気取るなら例え簡単でもルール説明とかするもんでしょう?こっちは、もしかしたら何のウリも無い勧誘員が倒されても打ちのめされても諦めない根性だけが取り柄なんです!って必死のアピールかと思って死なない程度に丁寧に殴り続けてたんですよ?急に話し掛けてきて手加減誤ったらどうするつもりなんですか?場合によっちゃ謝って済む問題じゃなくなりますよ?ギルド員の教育、見直された方がいいですよ?」


 相手の不備を指摘した上で改善点まで提示してあげる優しい俺ちゃん。

 特に誤ったからの謝っての流れが美しいねと心の中で自画自賛してると地味子も地味にワカリマスと頷いてくれている、いやー照れるなーw


「貴様ら…調子に乗るのもいい加減にしろよ?あんまり舐めた態度を続けると冒険者資格を剥奪する事も出来るんだぞ?」


 あらあら、プルプル震えながら絞り出した台詞がソレですか。


「構いませんよ?どうぞどうぞ。それでは今後は赤の他人とゆー事で」


 地味子と二人揃って冒険者カードを置いて退室する。

 パタリと締めたドアの向こうから何か叫んでる様な声がするが…何かの発声練習かな?そんなに喉に気を遣うなら怒鳴るのを少し控えた方がいーのにねー?ま、もう赤の他人だし関係無いか。


 〈いやー、薄々感じてたけど帝国は冒険者プレイに向かないねー〉


 〈まぁテンプレの冒険者も自由を謳いつつ一皮剥けば強制依頼とかで実は言うほど自由でもない、みたいなところもありますし…それに名前も今ひとつ納得してなかった様ですし、丁度良かったのでは?〉


 〈それなー、流石にタローとハナコは安直すぎたよね。次はもう少し捻った名前にしようかw〉


 〈タマゴとヒヨコですか?〉


 〈それだとストレートすぎないかな?(照)〉


 〈でしたらタメィゴゥとトメィトゥでは?〉


 〈うん、卵料理は好きだけど少し離れようかw〉




 ――――――――




 問題の二人が新たなる問題を残して去った部屋にはギルマスが1人残されていた、タローとハナコ名義の2枚の冒険者カードと共に… 


「なんなんだアイツらは!?こちらの権威を一顧だにしない!何か言えば正論で返してくる!その上腕まで立つだと?そもそも護衛付きの乗り合い馬車を利用するでもなく隊商を組むでもなくたった二人で街道を抜けてこれる様なヤツが何処にいると言うのだ!久々の金の卵だと思い各クランに声をかけて集めた者共も揃って伸されるとは…」


 頭を抱えてる最中、当の二人は卵談義に花を咲かせているとは思いもよらぬギルドマスターでありますたー。




 

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