第二章 帝国編
第50話 作戦会議
「現皇帝は覇権主義では無い様だが、掲げている実力主義とやらが随分と眉唾な事になっている。少なくとも“最終的に勝てばよかろう”な風潮は強いね、帝国は広く未だ諜報網は国境周辺に留まっているから飽くまで風潮止まりではあるがね。限られたリソースは領主に注いでみたがハズレだったし、問題の奴隷商は本拠地は帝都でここいらの連中は枝葉で刈ってもすぐに生えてくるから処分は保留にしてある」
先行して潜伏していた中佐がダンディーヴォイスで語る。
王国側国境周辺はエーレヒト侯爵が治める領地であり、その政治体制は盤石であった。
対帝国の壁となり楔となる事が、ひいては王国内での地位向上に繋がり身の丈を越えた野心を持たずに専心する事で地味ながらも揺るぎない地位を築いていたのである。
本来なら辺境伯の地位と役職が国王より任じられる所を「先祖ゆかりの地を守っていたら
それに引きずられる形で帝国側の国境周辺を治める領主も平和路線で統治している、強いて言えば目の前に落ちてるドワーフ自治区を帝国側に取り込みたいと思わない事もないが王国とも友好関係にあるドワーフを下手に
皇帝からの評価も「武力のみが実力ではない、地味ながらも王国を抑え貿易収支を上げている実績に余は頼もしく思う」との言葉を賜り、まんま丸呑みしてはいなくとも悪くはない評価を受けていると自認している。
もちろんプレイヤーの存在も大きかった。
ある時まで何故これほどの集団が放置されていたのか今となっては首を傾げるばかりだと言われている。
いち早く平和的に王国に取り込まれたトップギルドに大体のプレイヤー達が右にならったのは帝国の諜報部は歯噛みした事だろう。
ゲーム時代は帝国の存在は明かされていたがマップは開放されておらず将来のアップデートで自由に行き来できる予定であったが大小様々なダンジョンが王国内に点在していた為、プレイヤー達も実装されてる高難易度ダンジョン攻略の手助けになるならともかく、良くも悪くもゲームバランス的に充分楽しめてた状況で帝国への興味は然程高いものではなかった。
現にゲームがリアルになってからも帝国に流れたプレイヤーは少なかった。
既存職勢にしろコンバート勢にしろ、育成に向いた攻略情報のある美味しいダンジョンが王国内に揃ってるのだ、最悪命を掛ける事になるかも知れない未知の国外に活路を見出す理由は少ないだろう。
高レベル帯の攻略組はギルドの
そうして“高レベルで俺tueeしたいけど国内はトップギルドが幅を利かせてるし国外でブレイクしちゃおう勢”とか“未知のダンジョン開拓して、俺だけスーパーレベルアップな異世界転生を狙おう勢”みたいなのが国を飛び出したらしいのだ。
もちろん“まったり異世界観光したい勢”もいるにはいたが何も考えずに飛び出す前に王国内での生活拠点を確保する者が殆どであった。
そういう訳で国交が盛んで関所の検査も緩やかなので潜入は拍子抜けする程だった。
もちろん逆もまた然り、ニシノマチは帝国のスパイ天国なのだろうが…探られて痛い腹など簡単に探らせないんだろうな、あの偉い人は。
カジュー組によるニシノマチ地下組織の統合があれだけスムーズに実現したのは街の内外問わず各所に散りばめられた領主直属の暗部による消極的な協力があってこそなのだろう。
なんだかんだでカジュー組は利益よりも街の秩序に重きを置いている、こぼれ落ちる者たちを放置すれば、落ちきった先で土俵際で踏みとどまっている者たちにどれだけ害悪になるのか、それなら落ちきった後よりも落ちきる前に取り込む方が如何に経済的な事かを経験から学んでいるのだろう。
この街にも当然の如く侯爵の暗部の人間が各所に散りばめられている、身分的に最上位の者が領主の側近なのはどうかと思うが本人はダブルスパイを気取ってる様だ。
仮拠点として中佐が準備したのはケチな酒場の一部屋、店主の弱みに漬け込み個室の一つを物置きと称して潰させて、修繕されない机や椅子を積み上げた部屋の片隅に一脚のテーブルと数個の椅子だけが使用に堪える程度の秘密基地だ。
天井裏にはインセクトのコロニーが居を構えているが、それはこの店に限った事では無い。
「帝国の国土は半島となっており内陸に食い込んだ北部地域の最東端が王国と接するこの街になるって事でおけ?」広げられた地図を前に確認する。
「半島の中央に帝都があり精強な陸軍が主力であり併呑された海岸沿いの領主群の海軍による海外進出を狙っていたが、まずは国内の安定を図る政策を取ったのが先代、そしてそれを継承してるのが現皇帝ってわけか…」珍しく草を生やさないパイセン、調子悪いのかな?
「そして今回の王国の違法奴隷買い入れを図ったのが帝都で権勢を誇る大商会「ボッタクー商会」です。が組織が大き過ぎて今回は北部支部のリー支部長の関与までが掴めている…指示書にある計画によれば問題ないならプレイヤーやドワーフの奴隷落ちも画策せよ、と」淡々と語る中佐。
「なんなら西々新聞を乗っ取った時に在野に散った元メンバーを拉致する計画もあったらしいわよ?ヘン酋長の保護で未然に防がれてたけどね…マッドカッターは確かに黒幕だったけども、絵図を描いて
四人の選りすぐりが余人を交えずにボッタクー商会へのカウンター案を練るのであった。
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