第48話 海岸基地


 意気投合した二人が戻って来る頃には宴は一旦お開き、夕餉の準備だと言うのだが「夜も宴会だから楽しみにしとけ」との優しいお言葉を頂いた…パイセン、ウコンとか持ってない?

 しかし日本酒の出汁割りは飲んだ事あったけど、焼酎の出汁割りも中々イケるもんだ、驚いたのは温かいのだけじゃなくて冷ましたのも結構イケるのよ、お好みでレモンとか梅干しとか入れてる上級者もチラホラいたなーw


 ザッキーと三瓶どんは何時の間にか作ってあった村の模型を前に開発計画を熱く語り合っていた、ウンあの二人は放っておこう。


 さて、腹ごなしと酔い醒ましで散歩でもしましょうかねぇ。

 集落沿いの海岸は砂浜を両腕で囲う様に入り江となっており右腕は長く、左腕は比較的短く伸びているが、そもそも砂浜自体が数kmに渡る為どちらの腕の先に向かっても結構な距離がある。

 右腕の岬は崖となっており古びた灯台があるんだとか、左腕の岬には三瓶どんが建てた新しい灯台があって磯釣りするなら左腕がお勧めだそうだ。

 今後、いつ犯人を追い詰めて自白させる状況があるかも知れないのでリハーサルの意味も兼ねて右腕の岬へ行ってみよう…あ、パイセンも来る?犯人役やる?え?やらない?それは残念だ。


「つまりだね、近眼系メガネ女子がメガネを脱いだ時にフォーカスが合う距離ってのは“キスする時の距離”なんだよ、専門家によってはこの距離を1ロマンスと呼ぶ学派もあるくらいなんだ。一説によると壁ドンの時の距離とも同じなのではないかと言われていてね、未だ証明されてない未解決問題なんだ」


「相変わらず業が深いと言うか愛が深いと言うかwwwけどサエキさんは地味子ちゃんが具現化して良かったじゃない、俺も綺麗なチャンネーのサポート欲しいぞwww」


「地味子はメガネ女子としては伊達メガネだから別の考察が必要なんだけどね、パイセンもバックアップチームで女性陣いたよね?」


「パイソンズ・ストーリーのバックアップには無駄口の多い小娘と小言の多いお姉様だな…いずれにしろ好みじゃないし、仮に具現化されたとしてもサポートとしての自衛能力に疑問があるからな、地味子ちゃんは強さはどうなん?」


「強い…恐らく汎用性はピカイチな筈だ。下手したら今の俺だと勝てないかも知れないw」


「そこまでなんかwww」


 gotta 2ごった煮のグレース=ミナコは飛び道具に多少クセがあるものの地味に何でも出来るキャラで初心者にもお勧めできる性能だった。

 だが飛び道具にしろ空中戦にしろコンボにしろ超必殺技にしろ各々の分野の性能で上位互換になるキャラが居て器用貧乏な印象が強く、中級から上級者に掛かるくらいの腕前だと“勝てないキャラ”と言う評価を受けていた。

 だが開発者から溢れる程注ぎ込まれた愛は確かなポテンシャルとして息づいており使いこなせる上級者の操る地味子は“気付いたら画面端でボコってKOしてる”恐ろしい性能を秘めているのである。

 これがユーゲンで3Dになると地味子特有の強みがより顕著になるのだが、とある理由で俺ちゃんは使用を封印していた。


 と、気付けば灯台とやらに到着ですよ、メガネ女子の考察は非常に有意義な時間の過ごし方でマジオススメなのである。

 閑話休題それはさておき、灯台は二階建の塔の上に灯室が乗ってる構造で塔内の壁には見たことがある様な壁画と古代文字が彫られている。


「パイセン、コイツは…」


「物凄く賢者っぽいなwww」


 既に周辺一帯はインセクト情報網(中継基地ハブとなるスパイダーから命名してスパイダーネットと呼ぶらしいw)が張られているのでザッキーを念話で呼びつける。

 到着までの間に当たりを付けてパイセンと地下への隠し階段を探し当ててるとザッキーが横綱をドリフトさせてやって来た…

 階段を降りると居住区域となっていた、正に灯台もと暮らし。

 

 居住区域より下は海面まで続く洞窟となっている様だ。

 階段なのに横綱に騎乗したままスムーズに降りてくザッキーに「いつになく雑に進んでない?」と突っ込むと「ィェァ!ザッツおーらい!インセクトのラインナップも充実してきて攻勢部隊の充実も甚だしいんですよ!モデル・ホーネット、モデル・ハード・オニヤンマ、モデル・モスキート、モデル・フライ!もう大体不足はないですね!次は小動物的モデルの開発が待ってますよー!」…あれ?ザッキーってこんなキャラだったっけ?とりあえずM.O.Mに緊急診断を要請しておこう。


 そして崖の麓、海抜ゼロメートル地帯にポッカリ開いてる海岸洞窟まで通路は繋がっていた。

  そこには舎弟よろしくニラミをきかすサハギン達とボス気取りの文字通りトグロを巻いた巨大な海蛇シーサーペントが待ち受けていた。

 戦闘シーンの見せ場だと俺ちゃんとパイセンがウォームアップしようとした時に「ゴーやれ!ライデン!」と響くザッキーの号令。

 カパリと開いた口腔から覗く銃口に収束する相撲力謎のパワー、反動に備えた支柱アンカー脹脛ふくらはぎの辺りから複数放たれて地面と固定する。

 

 横綱から放たれる祝詞怒号が轟く




 ――――Gotcha under deathごっつぁんです――――



 

 海蛇シーサーペントを貫いた力の奔流は水平線の彼方に直線上の海水を蒸発させながら消えてゆく。

 数瞬固まるサハギン達は本能に尻を叩かれたのだろう、蜘蛛の子を散らすように逃げ去って行く。

 俺ちゃんも初めて生で見たわーw

相撲力炉直結式言霊砲セイ・ハロー・リキシ・キャノン」マジもんのヤヴァさだわw

 手刀で“心”の一文字を切る姿は神々しさすら感じさせる王者の風格を備えていた。

  

 と、まぁそんなこんなで灯台地下を征して拠点として再開発する事になったのだ。




 あ、ちなみに灯台の内壁はブイヤベースとか意識高い系の海鮮料理のレシピでしたよ。




 

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