第45話 特別試合


「はー、鶏そば食べたい」


「しば漬けかよ!って古いな、いい加減古すぎるだろwww」


「突然どうしたんですか?」


「こないだライデン謹製鶏チャンコ鍋食べたじゃない?」


「あれは美味かった…毎年食べたい十年に一度の美味さだったなwww」


「毎年歴史を塗り替える新作ワインじゃないんですから(苦笑)頼めば毎晩だって作ってくれますよ?」


「いや、弟子入りしたいんじゃないんだ…毎晩?力士の嗜みとして他のバリエーションの鍋もレパートリーにあるんだよな?ちょっと冬場はライデンを長期レンタルしてもいいか?」


「どんだけ惹かれてるんだよ!俺も付き合うぜwww」


「横綱を何だと思ってるんですか…ライデンも何か言ってやりなさいよ」


「…ゴワス」


「…喋るんだ…いや、高性能サイボーグなのにロボっぽいカタコトなの!?つーかザッキー!横綱乗り回してる奴の言葉じゃねーからな!」


「吐け、ザッキー、一体どんなオモシロ機能をインストールしたんだwww」


高性能ハイスペックだからこそ我々に合わせたトークを選択してくれてるんですよ(苦笑)」


高性能ハイスペックどころか超高性能ハイエンド過ぎるだろ…」


「手料理が上手い最終兵器リーサル・ウェポンとか確かに性能が高過ぎるなwww」


「横綱ですからねぇ」


「横綱なのに…横綱なのに…横綱とは?(哲学)」


「横綱のゲシュタルト崩壊が始まるwww」


「それで鍋と鶏そばがどうしました?締めの…蕎麦?」


「あー、俺が言ってるのは鶏そばって支那そばみたいにラーメンの方ね。個人的に好きなのは鶏そばの中でもコクがあるけど魚粉でアッサリ風味に仕上げた細麺硬めのヤツね」


「ナニソレウマソーwww」


「豚骨ラーメンに近い鶏白湯麺てすか?」


「イメージはソレに近いかなー?普通のアッサリ系のも好きなんだけどね、ライデンの鶏チャンコの旨味爆弾を被弾したら思い出しちゃってさーw」


「横綱チャンコの締めを細麺硬めじゃ…あー、魚粉だと随分味わいが変わるかーwww」


「ラーメンと言えば…サエキさんのアバターデータの中で変なのがあったんですよ、なんで衣装データクローゼットの中にラーメンとかカレーとか牛丼とかがあるんです?」


「あー、それなー。衣装データで正解なのよw」


「うは、ナツカシスwwwイロモノ頭装備だwww」


「何ですか、ソレ?」


「文字通り頭装備、エキスパートモードで全員同じ料理の頭装備だと自動的に特別な試合形式隠しモードに変わるのよ、ちなみに食えるw」


「伝説の上級者向け試合、ラーメンデスマッチwww」


「ラーメンデスマッチでゴワスか…」


「「「知ってるのかライデン!?」」」


「知らナイデン」


「「「…え?」」」


「知らナイデン」


「「「あ、ハイ…」」」




 

 ラーメンデスマッチ


 其れは一部の3D格闘ゲームに隠された試合形式の一つである。

 達人と呼ばれる上級者達が、その優れた体幹により頭に乗せた料理(基本的に丼もの)の中身を零さずに戦う試合形式である。

 当然、汁物は難易度が高く、中でもラーメンデスマッチは最高難度アタマオカシイとの呼び声高い。

 飛んだり跳ねたりと言った派手な動きは著しく制限され、端から見たらスローモーションな組手の様に映る。

 しかし制限された重心移動と技の起こりを瞬時に察する観察眼が要求され、達人相手に挑んでも気がついたら防御が間に合わなくなっているという状況になるのだ。

 一説によると『丼の中のスープを淵に沿ってクルーンって回す』のがコツだと伝えられている。

 また恐ろしい事に達人曰く、ラーメンデスマッチは到達点では無く入り口に過ぎないそうだ。

『貴様にトンコツはまだ早い、醤油から出直しな』は余りにも有名な台詞だろう。

 昨今、様々な研究が進み『ラーメン道を志す者、まずは牛丼を乗せよ。やがてカレーを経てラーメンに通ずるだろう』と門戸が広がったのは記憶に新しい快挙である。


 ――リン書房刊『大将!!ラーメン1つワン!〜そして人はラーメンを乗せる〜』より抜粋――




「…と、まぁ由緒正しい試合形式なのよw」


「実際ムズいwww」


「なるほど…」


gotta 2ごった煮四天王の神父がラウンドとると『ラーメン』って祈るのは其の為らしいからなw」


「あったあったwww野試合でも“カレー勢には気をつけろ!アイツら目を狙ってルーを飛ばしてきやがる!”ってのも合言葉だったよなーwww」


「格闘ゲームとは…」


「…ゴワス」




 



 

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