第34話 秘密基地


 ライデンが起動してから一週間、だいたいザッキーの近くに控えてるんだが威圧感がマジパない。

 メタル・インセクトと連携とってるから四六時中側にいる訳でもないんだが何時でも緊急発進スクランブル出来るように待機してらっしゃる。

 ザッキーも横綱を気軽な足代わりにして乗り回してる、横綱なのに!

「マイク付きヘルメットとか作っちゃいますかねぇ♪」とか楽しそうにしてるのはいいんだが、横綱の両耳を脱着可能なブーメランに改造するのは版権的に攻め過ぎなので、そこまで踏み込んだら流石に止めようと心のノートに太字ゴシック体でメモしといた。

 電人サイボーグとかルビを振り出したら要注意だな。


 取り敢えず横綱の事は横に置いておこう、この一週間で遺跡の基地化が進んだ。

 屋上には飛空船発着所が設けられ研究所エリアまで直通エレベーターまで作られていた、勿論上空から見られても問題ない様にカモフラージュも抜け目無く施されてる。

 居住エリアの見直しもされて隠し扉も生体認証になり、更に隠し扉の部屋自体も中央に祭壇みたいなの作って古びた銀色の入れ物が飾ってある。

 よく見る“カレールー入れるやつ”である。

 何故かと言うと、この部屋の壁に描かれている壁画と古代文字を解読したら「美味しいカレーの作り方」だったからである…賢者ぉぃ。

 遺跡内の壁画は全体的にそんな感じで他にもパエリア、パスタ等の主食シリーズから始まってポトフやオニグラとかのスープや、主菜副菜、果てはシャリアピンソース、グレイビーソースとかソースの美味しい作り方シリーズまであったそーな…意識高い系かな?

 有事の際にはカレーの部屋自体が簡単な隠し扉で封印されて秘伝の「美味しいカレーの作り方」を隠蔽していたとゆーカバーストーリーで偽装するとゆー手の混みようだ。

 三人で酒飲みながら出した案をノリノリで採用して実行しちまうザッキーさんに痺れる憧れる。

 秘密基地つくりに熱くなるのは男の子のサガなのだ。

 あ、ちなみに“カレールー入れるやつ”は「グレイビーボート」ってゆーらしい。


 研究所エリアの最奥は俺ちゃん達が闘った場所で、本来は倉庫だったらしく地下のダンジョンから引き上げたドロップ品とかを保管してたらしい。

 ショートとジャーヘッドが完成した時には予備パーツ以外は殆ど使い切っててガランとしてたらしい。

 今では倉庫エリアの半分は謎の機械が所狭しと並び「規模的に量産ラインは組めないので一点物ワンオフに凝れる生産設備にしましょう♪」って事らしい。

 実際に賢者の研究結果遺産は相当革新的なアプローチだったらしく、転用して横綱の更なる強化パワーアップが見込めるんだとか…暴走してくれるなよ。

 地下のダンジョン…人形ダンジョンからの供給もゴーレム軍団により安定し、ドワ郷周辺のダンジョンからの供給も6隻の飛空船が往復便が定期運航しており、物流も安定している。

 ちなみに最初に交渉したドワーフの親方(略してドワカタって呼んだら本当にカーターって名前だったんだが、それは置いといて)をはじめとするドワーフ上層部の方々に「乗ってみな、飛ぶぞ」って飛空船に誘ったら感動してた。

 この世界にも飛空船はあるらしいんだけど、各国に数台あるだけで運用コストが見合わないので余程の事がない限り飛ばさないそーな。

 

「お主らの技術が洗練されとるのは重々承知してるが、設計思想が従来の物とまるで違うわ…もっと高出力で燃料をバカ喰いして重量もある魔導エンジンで強引に飛ばすのが飛空船じゃったのだがのぅ」と目を細めていた。

 その分、天候に左右されやすいのだが現時点では悪天候下で飛行してまで運用する必要性もない。

 軽量低燃費秘匿性重視なのだ。


 秘匿性と言えば、上がり過ぎてるドワーフの生産技術も流出しない様に慎重に運用している。

 端的に言えば市場に卸してたドワーフ品の質を従来レベルに抑えつつ、流通量もコントロールしている。

 具体的にやってる事は、現時点ではシンプルにインセクトによる監視のみ、特に市場監視だね。

 勿論ドワーフに趣旨を理解してもらって流通させる質・量を絞ってもらっている、もし市場を荒れさせる閾値を超える様な流出が予想されれば介入するつもりだが、そーならない限り手出しはしない方針だ。

 

 市場と言えばゲームだった頃は生産系プレイヤーの生産品はプレイヤー間の取り引きで、ドワーフをはじめNPCの生産品はNPC市場での取り引きでってゆー感じだった。

 ゲームがリアルになってからは線引が曖昧になって新たな市場バランスが出来上がったのだとか。

 逆にそれまで何故その発想が無かったのか不思議がられてるそーな。

 似たような話で、例えばゲームだった時代はプレイヤーが職業に就いてダンジョン行って戦闘してレベル上げてドロップ品を換金して、とゆー流れだったが転職クエストってのが必ずあって対象の職業ギルドからクエストクリアを認められて転職していた。

 ところがゲームがリアルになるまでプレイヤーが選べる職業に就こうとゆーNPCが殆ど居なかったのである。

 その発想が無かったらしく、今では普通にプレイヤー職業に転職してダンジョン通いしてるNPCもいるのだとか…つーか皆生きてるんだから元NPCとでも言った方がいいのかもね。

 当初はプレイヤーがゲーム時代と比べて命懸けでダンジョン攻略する奴は減るだろうから流通するドロップ品とか減るから経済ヤバくね?と危惧してたんだけど、結局ダンジョン潜るのが好きで安全マージンを取って狩り場のランク落とした勢と元NPCからの参入勢で新たなバランスが取れて、活動レベル帯のボリュームゾーンが落ちたくらいで深刻な問題にはならなかったんよね。


 で、話を戻そう。

 既存の生産系プレイヤーも一部の廃神が超レアモノとか作ってたりするけども大凡おおよそ大勢に影響出るようなモンでもない。

 問題はコンバート勢の生産系プレイヤーなのである。

 うちのザッキーは其の辺かなり自重してるとゆーか水面下で色々やるのが好きなだけ、とかなんだけど能力的にザッキーと遜色ないブッ飛んだ生産力持った奴が自重せずに「生産チートウマー!」とか言って市場に投下されるのが一番困る。

 困るとゆーか対応が面倒臭い。

 俺ちゃん達はお気楽イージーに宇宙進出したいのであって、例えば大量殺戮兵器とかジャカポコ作られて大戦争時代に突入して「兵器転用が容易な高度技術は我が陣営にあるべきだ」とかゆー連中に足引っ張られるのは非常にノーサンキューなのである。

 そーじゃなくてもテンパっていきなり銃撃してくる輩とかが存在するのだ、そんなんが予想外のチートで邪魔してくるのはマジ勘弁。

 だから水面下で技術的に大きく引き離して宇宙に進出ゴールしたいのである。

 最終的に技術を独占したいんじゃなくて足の引っ張り合いは限りなく不毛だとゆー規範を確立したいだけなんだけどねー。

 まー自重しないのが出てきたら、おかしなレベルの生産品が一定数以上、市場に流れるのは一つのバロメーターって事だ。

 そーゆー意味でも市場監視は情報収集の中でも優先順位が高いのである。

 

 

 

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