第26話 溢れる生産力


 人類が宇宙に、その存在を只の惑星に付随するだけの生物ではなく、我こそは宇宙に属する意志あり知恵もつ種族なりと名乗りを上げた時代。

 彼等は自らを宇宙開拓軍と呼称した。

 それは本格的な宇宙進出まで漕ぎ着けた技術は容易く軍事転用できる事に対する戒めであり、自衛力を持つ誇りであり、宇宙は開拓する対象…即ち未開の地であると言う認識の傲慢さの裏返しでもあった。


 だがそれでも、その名は様々な政治的思惑や既得権益の障害を乗り越え、自らを重力の軛から解放した証左なのであった。


 ――リン書房刊『歴史に学ぶ〜宇宙人になった人類〜』より抜粋――


 


「つまりはミューラー号からの支援は今以上のものは受けられない、と」


「今は地形データと一部の加工食品くらい?加工食品美味杉よねwww」


「ご存知の様にミューラーの保有余剰資材はゼロです、食糧プラントとエネルギープラントにより稼働も最低レベルで運用してます。食糧プラントも生産した食糧のバイオ燃料への変換、及び有機資材への変換を段階的に行ってますので最終的に食糧支援も無くなります…パイセン、食糧加工施設は地上で設置予定ですからそんな目で見ないで下さい(苦笑)」


「ストレージ経由で資材とかミューラー号に送れない?」


「レーション、エナジーピース、インスタントラーメンはサバイバルフードにおける三種の神器だ(キリッ)」


「ストレージ経由の転送は消費エネルギー的に一日一回、30×30×30cm程度の大きさまで、そしてミューラーが最接近するタイミングを計る必要があります。現時点でも一部特殊な小型パーツの加工を委託してますが、敢えて資材を送る事によって発生するメリットって無いんですよね…小型の人工衛星作るだけの資材送るだけでも一年くらい掛かりますし…いや、簡易監視衛星ならイケるかな?ちょっとシミュレートしとき…あぁ、M.O.Mの方で既に検討済みでした。現行程の加工が一段落したら近隣エリアのダンジョンドロップの内で有用な物から転送してきますね、それよりもドワーフ自治区の防衛力強化と新規拠点の設営の方が優先度が高いですね。パイセン、それらは飽きない様に敢えてジャンク風な味付けになってるだけですよ?クセになるのは分かりますが(苦笑)」


「え?レーションもそーなん?w」


「エナピーも?ちょっと優しい風な味のブロックじゃん?www」


「レーションはメイン料理のスパイスとかに、エナジーピースも中に小さいツブツブがあるでしょう、そこに隠し味的に食欲増進剤と一緒に風味付けされてますよ」


「マジかー、どーりで箸が進むワケだw」


「あのツブツブは食感だけじゃなかったのかwww」


「けど飽くまでも調整された味ですからね、グルメ道を探求すれば腕の良い料理人に軍配が上がるでしょうね」


「確かにドワーフ料理と比べれば、レーションやエナピーは酒のツマミにはならねーわなーwラーメンは上がりに食べたくなるかもだがw」


「つかドワーフ料理ってほぼツマミよなwwwご飯に合うツマミもあるけどさwww」


「鍛冶施設も排水とか物凄く気を遣ってますからね「美味い酒は良い水からじゃ!そして美味い酒は良い鍛冶師を育てるのじゃ!」って言って憚らないですし…排水浄化装置とか設置したら真顔で拝まれましたからね(苦笑)」


「酒の無い文化は存在しないからな…“常に食文化とは酒文化との二人三脚なのである”誰の言葉だったっけか?w」


「そーゆー意味ではレーションとかは命を繋ぐツールとしての食糧であって所謂“食事”ではない、と?…イヤマテ、レーションに合う酒を作れば新たなる食文化のパイオニアに俺はなる!?www」


「本来のレーションが求められるシーンでの飲酒は薦められませんがねぇ(苦笑)、そういった突拍子もない発想から生まれるモノもありますから一概に否定は出来ないですね」


「新しい酒でドワーフ自治区を文化侵略?w」


「既に技術力で文明侵略してる件www」


「お互いに求めるモノが合致してますので技術提携と言いましょうよ、ドワーフ自治区の防衛力強化は既に進めてますから新しい拠点の候補地ですね」


「ドワーフ自治区…もうドワ郷でよくね?ドワ郷から東が王国のニシノマチ…ヤヤコシヤ。北には山脈を越えて荒野が続いている、西は帝国、南が森を挟んで海」


「南の海を挟んで西が帝国が続いてて東が教国、つまり南の海は湾になってるワケだ」


「王国の北にはゲーム時代“北の攻略最前線”古城ダンジョンとキタノマチ、更に北は亜人の集落が点在してますね。」


「近隣の政治的空白地帯は北の山脈と南の海、第二第三の生産拠点はそこら辺が有力かな?」


「西の帝国、東の王国には情報収集を主とした拠点が欲しいな。欺瞞作戦の拠点も必要になってくるだろう」


「南東の教国にも何らかの楔が欲しいですね、いっそ新しい宗教でもでっち上げて宗教的逆侵攻掛けてみますか?」


「メガネ教スタンバってます!w」


「なんとゆー伏線回収!www」


「宗教なんて何でもいいんですよ、それこそ「イワシのアタマ教」とかでもね。何にしろもう少しでドワ郷秘密基地拡張生産サイクルが整いますんで、諜報系の便利アイテム生産に着手しますね」


「何ソノ秘密基地拡張生産サイクルとか魅惑のワードw」


「特に秘密基地ってのが体温上がるワードだなwww」


「現時点では既に坑道奥の炉はドワーフに明け渡してます、稼働内容は把握済みですけどね。更に地下に別の炉を設置して稼働させてます、七連循環魔導連続炉ですよ?炉自体を制御魔法陣の一部にして相互的に魔力干渉を意図的に起こして内部循環の密度を上げる最小モデルですよ…合理的にコンパクトにまとめた美しい配置は一つの芸術ですねぇ…」


「ザッキーw帰ってこいw」


「視線が遠いよwww」


「失礼、ゴーレムドロップを元に強化ゴーレムを作り近隣のダンジョンを攻略・ドロップ回収させて更に強化ゴーレムを作ります、余剰ドロップからアンドレイバーを作り更に基地を拡張、生産力を雪だるま式に上げていきます」


「なんとゆー永久機関w」


「ダンジョンって枯渇しないの?www」


「周辺地脈の魔素計測してバランスは取ってますが…魔素もマナも潤沢ですからねぇ」




 ーゆー事らしい。




 

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