第25話 こんにちわ、世界


「つまりは宇宙そらに辿り着けない、と?」


「科学的にも魔法的にも、当分無理だと思われます」


 一通りダンジョン巡りの試料集めも一段落し、ニシノマチでのテンヤワンヤも落ち着いたのでドワーフ自治区に帰還したスパイ&エスパー。

 生産チートと並行して異世界分析していたザッキーから語られたのはミューラー号に辿り着く算段がつかない、との事だ。

 本来、俺ちゃん達が計画していたプランは、最低限の打ち上げ施設を技術の一点集中により強引にでっち上げ、何とかミューラー号に辿り着き宇宙での資源調達、その資源を元に宇宙ステーションなんかを設置し、どーにか宇宙と地上の物流ラインを繋いで荒らした地上資源の回復、中型艦とは言え地上に降ろすにはミューラー号はデカ過ぎるんすよ。

 そして後は流れで。

 行き着く先は悠々自適の宇宙生活と幻想世界生活ですよ?正に“スペース&ファンタジー”とゆープロットを考えたいた。

 宇宙は広く、一般的に魔法の発現に必要とされるマナの元になる魔素が偏在してたり、ニュートン力学を始めとする物理法則が通用しない宙域があったり、何なら時間や重力すら乱れていて解析不能な宙域すらある。

 “世界の定義を書き換える事が、次の我々の進む技術の先なのかも知れない”とは宇宙時代の研究者の一人が放った言葉である。

 さておき、そもそも航空宇宙学において化石燃料の燃焼による推進とは酷く効率が悪く“尻毛に灯した火で屁を発火させて空飛ぶ様なものだ”とサブスペでは揶揄されていたが、この世界…もっとストレートに言えば、この星の存在する宙域ではある程度以上の圧力が掛かると力が別次元に抜けるそうなのだ。

 言ってみれば「それくらい世界の境界が曖昧だからアイテムボックスみたいな不思議現象が普通に起こり得る」とかなんとか。

 そして内燃機関であるエンジンや火薬の爆発で飛ばす銃の類は、無意味とまでは言わないが非効率的であり発達が遅れている一方、豊富なマナと其れを支える潤沢な魔素の存在が個人単位でも中々に強力な魔法の発動を可能にしている…そりゃー放っといても魔法全盛ファンタジー世界になるわけである。

 マナと魔素の違いがよく解らない?大丈夫、俺ちゃんにもよく分からない。

 ザッキー曰く「空気と酸素の違いくらいで大体合ってますよ」だってよ、んかそんな感じ。

 ついでに言うと俺ちゃんが使ってる超能力も其の仕組みを学問的に解析されている、ベースになる学問は心理学、そして超能力を扱うのが超心理学。イカシてるだろ?w


 話を戻そう。


「当分、って事は長い目で見ればイケるって事?」


「ミューラーのマザーA.I.のプライマリーオプションは私アイザック個人の安全の確保です。充分な地上開発してミューラーに匹敵する程の保護施設が確保できれば周回軌道から離れて宇宙空間での資材確保、其れを元に内火艇の作成して…恐らくカーマン・ラインくらいまでは回収可能域を拡げられると思います。並行して地上より何らかの方法で海抜高度100kmまで辿り着く方法を模索する必要がありますね」

 

 プランAがダメならプランB、ってのが世の常で、往々にしてプランB行き当たりばったりだったりする事もお約束だけど、まー、俺ちゃん達はそれ程追い込まれてないのでプランBのんびりやろうぜになるのである。

 詮索なんて趣味じゃないけど俺ちゃん達は三人揃って前の世界に未練が無いのは察してるからなー…


「オーケーブラザー、第一生存戦略いのちだいじにをベースに勢力圏を広げる必要がある。って理解でいーんか?」


「海外進出も見据えて海洋プラットフォームも建設しようずwww」


「テクノロジーツリーがマスクデータでないのが大きいですね、必要なのは海洋含めた土地と資源。最悪人員は必要ありません。ゴールは遠いとは言えサポートA.I.搭載スタートとかチートもいいトコですね(苦笑)」


「お?力の抜けたニヒルな笑いぢゃな〜い?w」


「何か吹っ切れたんんか?www」


「アナタ達のお気楽さ加減と…その藁とか草が少々羨ましくなりましてね、私も時々コイツを使わせていただきますよ(苦笑)。さて基本方針は宇宙開拓軍に倣うのはどうでしょうか?」


「いーねーw色々すっ飛ばして最適解をいきなり叩きつけるなんて時代に喧嘩売る気マンマンっすか?w」


「錆びついたイデオロギーなんぞ学術研究アーカイブに放り込んでしまえ!我ら技術至上主義テックイズムの信奉者ぞ!www」


「それでは作戦の初期段階では地下活動アングラお約束マストでしょうね、物理的な条件…ダミー含めた複数の基地設営完了時点、もしくは情報遮断の限界をもって第二段階に移行、既存勢力圏との折衝に入るのが賢いスマートでしょう」


「ドワーフ達は現時点をもって準構成員として編入したものとする。事後承諾になるがドワーフ上層部との摺り合わせは…ザッキーやる?」


「今更ドワーフ置いてったら逆に凄え恨まれそうだもんなwww」


「実は既に粗方話はつけてます(苦笑)貴方達でしょう?ドワーフの若い人達使って天の岩戸を開いたのは。もう少しでM.O.Mからガチのお説教くらうところでしたから助かりましたよ(苦笑)お陰様でドワーフ達との…特に上層部とは意識調整は済んでます」



 世界よ、通過点くらいに考えてたけどガチの攻略対象になったのでヨロシクな?

 改めまして、ハロー・ワールド!


 


 

 

 

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