第22話 ダイナミック


「はー…マジで自信無くすわ…」


「どしたん?www」


「あん?そんなん昨夜の流れだと絶対に絡まれるフラグがビンビンのビビビ〜ん!じゃん…アレで何も無いとか、もうね…」


「若ドワ衆も、何ならブルースの仲間も目ぇ光らせてたらしいんだから起きる筈無いっしょwww」


今日日きょうび、それすらもフラグですよ?」


「ダメだコイツwww早くなんとかしないとwww」


 爽やかな宿屋の朝食シーンである。

 え?説明要ります?肩透かしで朝食時に超ショックって一幕ですよ、言わせんなよハズカシ(照)。




 ――――――――




 一通り周辺ダンジョン巡りも一段落し、明日はドワーフ自治区に戻るとゆー夜。

 若ドワ達と軽く一杯やろうかと卓を囲んだ時に、酒場に一人の男が飛び込んで来た。

 若造君である。

 彼が言うには、ブロンドホリーが拐われて、それをネタにおっさんブルースが呼び出されて行ってしまったとの事。

 場所は郊外にいくつかある砦の内の一つ。

 なんでも、その砦を占拠してるギルドの連中が普段からおっさんに色々難癖付けてたらしく先日の“華麗なる脱出劇”で嫌がらせが加速してきた矢先に今回の誘拐劇だそーな。


「筋違いかも知れない…迷惑だろうと言うのも分かっている。けど…俺達じゃあ力不足なのも分かっているんだ!手を…手を貸してくれないか!頼む!この通りだ!」深々と頭を下げる若造君。


「まー、取り敢えずかけたまえ…パイセン、どーする?」


「若者が礼を尽くして頼って来たんだし、手を貸すのは吝かではないんだけど…サエキさんが躊躇ってるのは、そうゆう事じゃないよな?www」


「まーねー…けど、万が一があるかも知れないから首突っ込んでみる?w」


「面白そーだし乗っちゃいますかwwwあー、君は仲間を集めてドワーフ達と一緒に居てくれる?若ドワ達もお願いできるかな?」


 付いて来たがる若造君に“言う事聞かないと手ぇ貸さないぞ”と説得してドワーフ連中に託す。




 ――――――――




 〈Pパイセンさん!スニーキングミッションですよ、スニーキングミッション!!〉


 〈ドームですよ!みたいに言うなしwww〉


 宵闇に紛れて砦に臨む変態二人。

 空堀と外壁に囲まれ四方に物見櫓を備えた四階建ての母屋からなる砦だ。


 〈潜入ルートは?〉


 〈俺は正々堂々と裏口から行こうかな?サエキさんは…空から行っちゃう?www〉


 〈Q:潜入とは〉


 〈潜入は変わった…〉


 45スペシャルのマガジンを交換しながら含蓄のある台詞を吐くパイセン。

 物陰をスルリと音もなく抜けて裏口に辿り着くと見張りが二名。

 軽く咳き込む様な銃声が二回囁くと、見張りは崩れ落ちる。

 ザッキー謹製のスタン弾である、射程距離を大きく犠牲にしてパラライズ系の魔法を込めた静音性の高い逸品である。

 見張りを物陰に隠し外壁を登る…パイセンはワイヤーアンカーを使い、俺ちゃんはフワフワと浮いていく。


 〈そんじゃー後でなー〉


 〈迷子になるなよwww〉


 〈既に異世界に迷い込んでるわw〉


 〈それなwww〉


 建物の中を探り、窓をナイフでこじ開け侵入するパイセン、よくもまーあんだけ音を立てずに出来るもんだ。

 俺ちゃんは最上階直通で文字通り高みの見物と洒落込みますよっと。

 最上階を窓の外から覗ってみるとホリーさんが椅子に後手で縛られてますなぁ…良かったよ18禁な展開だと実写化のハードルが上がっちゃうからね。

 扉が開くと手錠を掛けられたブルースおじさんが連行されて来ましたよー。

 ラスボス戦前のムービーシーンみたいな雰囲気で何か会話してるなー。


 〈ザザッ…こちらパイセン、間もなく最上階だ。そちらはどうだ?〉


 〈舞台はホットに仕上がってる、いつでも乱入PressStart可だけど最終決戦ラストバトルゴング秒読みカウントダウン中だぜ、あと自分の口で「ザザッ」ってゆーのナシな?念話だから厳密には口に出して無いけどさ〉


 〈うは、おけwww〉


 ムービーシーンは大詰め、ホリーさんにナイフを突き付けてツバ飛ばしてるボスっぽい輩に縄抜けしてたホリーナックルがアパカでキマる…同時にこちらも手錠を外したブルースが連行してきた輩に肘打ちをキメる。

 ピヨった推定ボスにホリーソバットとブルースドロップキックがツープラトンで炸裂。

 見つめ合う二人、あ?チューするの?しちゃうの?って時にパイセンIN、固まる空気。

 しょーがないにゃー、窓を壊して俺ちゃんもIN。


「待たせたな!」


「ちょwww俺のセリフwww」


「お前ら何しに来たんだ!?」


「あらあら、賑やかなのはキライじゃないけど…」


「若者に助けを求められたんだけどな、思った通り余裕そうだったから万が一のバックアップをスタンバりつつ最前列で観賞してたw」


「同じく舞台演出を少々派手に仕込んできたwww」


「え?…俺も赤ドラム缶に時限装置仕掛けて来たんだが…」


階下から鈍く響く爆発音と悲鳴…断続的に響き続けるとかパイセンの奴、ノリノリで沢山仕掛けたな。


「取り敢えずずらかるぞ!」謎の木箱を叩き割り中から消火栓のホースを取り出し窓に括り付け、自分にも巻きつけるブルース。


 一足早くワイヤーアンカーで飛び降りるパイセンと宙に浮く俺ちゃん。

 ホリーを抱えてブルースが飛び出すと同時に一際大きな爆発音、爆風がブルースの背中を撫でるが間一髪だ。

 二階と三階の間くらいにぶら下がった二人が窓を見上げると括り付けたホースが外れかけてる…ブルースは瞬時に辺りを見回しホリーを抱きしめ直すと、ホースが外れた瞬間に壁を蹴る。

 背の高い植木に背中から突っ込み枝をへし折りながら何とか地上に到着…映画だね、コリャ。


 門を破壊し敷地外から振り返ると、半壊した砦が炙る炎に照らし出される。



「流石ニトログリセリン刑事…爆発がよく似合う」


「それなwww」


「やかましいわ!」



 

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