第19話 オーバードリンクス


「なぁ、草の」


「なんだwww藁の」


「ザッキーがヒッキー」


「ちょwww」


「軽く疑問なんだけどさー、なんで拳銃から作ったんだろーね?長物の方が作りやすいよね?」


「んー、サエキさんも俺もファイトスタイルがハンドガンの方が噛み合うからじゃね?www」


「アラヤダwザッキーさんの半分は優しさで出来てるのかしら?w」


「やめぃwww購入したハンドガンとショットガンとライフルを解析したらしいけど、ショットガンは俺が特殊な注文したのとライフルは…何か技術的に問題があるとか言ってたなー、もっと西にある帝国にはガトリングとかあるらしいけどwww」



 一人少なかろうが平常運転お気楽道中膝栗毛な変態達だった。


 ニシノマチは攻略最前線を支える上級者御用達の街であるが、周辺に中級者向けのダンジョンも複数存在し中級者育成の街といった側面もある。

 ぶっちゃけパワーレベリングにも便利な拠点になりますよ?トップギルドさん?ってな売りもある街なのである。

 最難関ダンジョンから産出される鉱石・宝石系のドロップは上級・最上級装備の作成・強化の材料になる為、常に賑わっていた。

 もっとも鉱石系以外の防具やカタナに代表されるようなオリエンタル装備等などに必要な材料は他の高難易度ダンジョンから産出される為、ここだけに上級者が集中するわけではない。


「集めるのは中級ダンジョンのドロップが殆どだったよね?」


「この街のドワーフコミュニティに話を通してあるって言ってたな…あと情報収集とか忘れてね?www」


「パイセン…俺達にザッキーみたいな変態コミュ力は無い。精々酒場で噂話に耳を傾けるのが…今はそれが精一杯」


「飲みたいだけじゃねーかwww花と万国旗はいらねーからなwww」


 ドワーフコミュニティに立ち寄ると、下にも置かない様な扱いをされたが「自分らシタッパのパシリなんで良くわからねーッス」で押し通し、宿も別にとった。

 すんげぇ引き下げられて宿に“宿詰め番”とかヨクワカラナイ若いドワーフ達が常時2,3人屯する事になったが些細な事だとゆー事にしておこう。


 そうして近所の中級ダンジョンに通ってドロップ拾ってドワーフコミュニティに置いてって風呂入って酒場で疲れを癒やしてってゆーサイクルが出来上がった頃、宿詰め番の若い衆の一人が思い詰めた様に酒場にやって来た。

 あ、ちなみにこの世界の魔物は時間経過で魔素に分解されて魔力的残滓が残るんだそーな、その道のプロには分かる形跡らすぃ。

 剥ぎ取り中は分解されにくいが手間取るとドロップが魔力焼け?とかゆー劣化現象が起きるらしい。

 んでもってダンジョンは特殊でドロップだけ残して速攻魔素分解されるのだ。


「スンマセン、兄さん方」


 目つきの鋭い若い衆が仁義を切って話しかけてくる。

 同じ卓に座らせて飲ませてインタビュー・ウィズ・ドワーフ。

 要約すると「郷の新しい炉は素晴らしい、あれなら自分の殻を二つも三つも破れる。なのに長老衆は質を落とした量産品を作れ、何なら炉自体の劣化品を作り上げろとか言ってくるのがマジイミフ」だそーな。


「あー、それな〜w」


「これはwww多分ザッキーもやらかしてるなwww」


 訝しげな視線を飛ばしてくる若いドワーフ、略して若ドワ。ついでとばかりに他の若ドワ達も同じ卓に座らせ話を聞かせる。


「多分、キミは若手の中でも才能がある方なんじゃないかな?それも上から数えた方が早いくらいの。キミ自身の技術の研鑚とゆー意味では難しいモノや新しいモノを作るのが手っ取り早いってのは、一つの真理ではあるね」


「それでは!」と身を乗り出す若ドワ。


「まーまーwww落ち着いて。人の話は最後まで聞いたほうがいいよwww」嗜めるパイセン、姿勢を正す若ドワ。


「いいかな?一方でもっと大事なのはキミの技術の継承なんだよ。」


「技術の…継承?」


「そう、キミに弟子が出来たなら最低限量産品が作れるくらいに育てないとマズイよね?じゃーキミがどれ位手を抜けば、どれ位の精度でどれ位の品質を揃えて作れるか。これが自分で分かってないと教えるのに苦労する事になるんだ。炉だって多分同じじゃないかなー?最終的には自前の炉を持たせるけども、再現性の高いものから習作させるもんでしょ?その時にどうやれば失敗しないのか、あるいは失敗するのか。数こなした人の方が理解や説明できるよねー。次世代の層は常に最新の知識と情報に晒されてるけど、躓いた時の立ち上がり方は経験した者にしか分からないからね」


「サエキさんのスイッチが入ったwww」


「うっせぇわw…まーそれに品質を揃えるって中々難しいし結構大事。例えば鍵盤楽器で鍵盤の一つ一つが品質のバラツキがあって、一音一音それぞれ音色が違ったら…お話にならないよねー」


「商売的に考えても量産品の品質がバラバラだと値段がつけられなくなるしなwww」


「な、なるほど…」


「コミュニティって定期的に自治区…郷だっけか?と人員のやりとりしてるよね?ザッキーに伝えといてよ「引きこもってるとクオリティ下がるぞ?」って、どーせ寝食忘れて工房から出て来ないんでしょ?」


「良質の作品は良質の睡眠からってねwwwそもそもあのコミュ力お化けが酒場に出て来てないのがオカシイwww飲みに連れ出してやってよ、このテの話なんか奴の独壇場よ?飲んだら“技術の発展に最も必要なのは裾野の広さと継承です!枯れたと言れる技術は逆に言えば信頼性の塊です!それに時代が進めば思わぬブレイクスルーや最先端技術との化学反応を起こしたりする…これをロマンと言わず何とするのでしょう!!”ってよく言ってるよwww」


「わかりました!」


「若ドワ!若人わこうどは頑張れ!」


「台無しwww」



 


 偶には若い衆と飲むのも悪くないなと思った夜であった。




 

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