異世界ゲーマーズ【▶イージーモード】

第13話 信じるものはありますか？

「いいですか？メガネってのは素肌に直接身につけるモノなのです。そして普通に他者の視線に晒される、是則ちインナーでありアウターでもあるのです。言い換えれば乙女を守る最初の砦（オシャレ）でもあり最後の砦（パンティ）でもある仮面（ペルソナ）、言わば乙女を形成する大きな要因のファクターの一つなのです！」

　寄り合い馬車の中で胡座をかきながら宙に浮きつつ説法をする俺ちゃん。

　最初は「馬車から尻へのダイレクトアタックを空中浮遊でインターセプト！そして俺のターン！」みたいに尻の痛みに耐える二人（意味深）をドヤ顔で見下してやろうと思ってたんですよ。

　けどね、思いの外揺れないのよ…いや、揺れるは揺れるんだけどエロ同人のヒロインがオークに襲われるが如き激しい馬車アタックは無かったのよ…

　まー、それでも空中浮遊は色々応用利くからコレもまた修行と思って胡座で浮いてたら「なんか昔の新興宗教の教祖みたいじゃね？www何か布教とか出来そうwww」と宣うパイセン。

　“昔の新興宗教（ふるいの？あたらしいの？）”とゆーパワーワードは置いといて、ならば聴けよ迷える諸衆よ、いざ心を開き蒙を啓かん！

　最初は視線を合わせようとしなかった同乗者達も何人かチラホラと聴き入り始めたもんで興が乗ってきたってとこなのよ。

「もし、貴方がソコに辿り着いたら…乙女と心から通じ信頼を勝ち取り、メガネを外してもらえたなら…ソコには目を凝らす彼女、つまりリアルジト目っ娘が降臨されるのです！これ則ち福音（ごほうび）なのです！」

「「「「おおー（感心）」」」」

「あと彼女のメガネを外させてもらうプレイとか普通にエロくね？」

「「「おおー（啓蒙）」」」

　まばらな拍手の中、おれの初説法（ファーストライブ）は終わった…これは小さな一歩かも知れないが同時に大きな一歩でもある。

　感銘を受けた商人から「これからはメガネも商材にして微力ながら布教したいと思います！あと妻にもメガネを買って帰ります」と握手を求められた。

　俺はそっと握手を断り合掌し聖句を唱える。

　────May the glasses be with you────

　これが作法かと商人も慌てて合掌で返し聖句を暗唱する。

　軽く一礼を交わし席に戻る商人…そうか、俺はこうやって少しずつでも異世界平和を広める為に生まれてきたのか。

「「茶番乙」www」

　変態二人の啓蒙の道は遠いようだ。

　馬車は街道を西にゴー・ウェスト。

　アンセムではコンバート勢の印象が宜しくないから逃げ出した、とゆーワケでも無く…いや実際評判は宜しくなかったのは事実だ。

　慣れ親しんだ筈の世界に異世界転生して所持金ゼロのホットスタートで無駄に戦闘力がありますよ？って状況でストレスがマッハしてパニックが暴走してランナウェイって感じなのかな？

　俺ちゃんもココロのメガネが無ければ危なかったかもしれない…西にはメガネ教の有り難い教典があるかもしれない。

　まー、ぶっちゃけると西の方がSF的開発がしやすい地域だってザッキーのサポートA.I.（ゴースト）がささやいたからなんだけどね。

　周回軌道からの地図データ作成とかファンタジーに真正面から喧嘩売ってるけどキニシナイ。

　馬車の旅は、基本的に順調だ。

　乗り合いだから途中でメンバーが入れ替わる事もあり、小さな出会いと別れが旅路を彩った。

　特に幼女連れの旅人との別れは、俺がロリコンだったら俺たちの旅はソコでゲーム・オーバーだっただろう。

「メガネのおいちゃんバイバイ」って手を振りながら言われた時は少しジーンとキたけどな、すくすくと育って綺麗なメガネ女子になるんだよ。

　そして俺達はついに西の都、攻略最前線の拠点の一つ“ニシノマチ”に辿り着いたのである。

　…わかる、わかりますよ？もっと捻れよって。

　もっと西の地域から見たら説得力皆無じゃんってゲーム時代から言われてんだけど、そしたら運営も開き直って「古代語で特別な意味がある由緒正しき呼び名であり、また古代語すぎて現在はどんな意味か解読できない」とか設定を後づけしやがったんすよ。

　二泊三日の長旅の垢を落とす為に宿をとり風呂に入り晩飯に備える。

　思えば長く苦しい修行の旅でもあった。

　ひとしきり景色に飽きたら腰に紐をくくり馬車に繋ぎ空中浮遊しながらトレモに没入。まさに時間を無駄にしないデキルヲトコ。

　変態二人には「新幹線とかでずっとピコピコ携帯ゲームしてる小学生ってあんな感じだよね」とかチャチャいれられたけど、お前らだってヒマさえあればトレモしてたやん！ジュース飲みたいって暴れたろか！？

　お陰で密かに温めてた奥義に開眼したけどな…ここぞって時にお披露目して度肝抜いてやるからなっ！

　――――――――

「数多の苦難を乗り越え、今この場に集いし勇者達に今宵の盃を捧げる…乾杯！」

　お約束通りに旅籠に併設された酒場で晩餐するサエキさんと愉快な仲間達、こんなテンプレ行動してればテンプレ神の祝福と共にテンプレ異世界道中が俺達を待ってるに違いない！

　どーせ気の利いた音頭も取れない野暮天どもに率先して乾杯の音頭をとる俺ちゃん（e）（ちょっとカッコイー）。

「いや、二泊三日とか旦那の出張中に敢行した不倫旅行ぐらいのスケールだしwww…ん？それだと結構スリリリング？www」

「パイセン？それを言うなら修学旅行くらいのスケールの旅に興奮するのは思春期までよ！ってアオリが正解ですよ」

　勇者達の夜は更ける…