第12話 目覚めましたか?


 小鳥の囀りと窓から差し込む朝日がゆっくりと覚醒させる。

 特に分ける理由も無かった三人一部屋な宿屋の朝は、それなりに爽やかなもんだった。

 そんなに深酒でもなかったしなー。


 窓辺に腰掛け異世界の朝に浸る俺ちゃん(E)カッコイーと自分に気持ちよく酔っていたらゾンビの如くモゾモゾと起きてくる変態二人。


「「知らない天井だ…」」


 それ、俺もやりたかったヤツ〜!!!



 ――――――――



「俺、異世界転生の才能無いのかなー…」


「なんか新しいフレーズktkrかっこ草、朝飯も普通に美味いねコレwww」


「一人で朝チュンに浸るとか無駄に高度なプレイしてるからですよ?個人的にはコーンスープがあれば完璧ですね…え?コーンスープは傷心を癒やす病人食ですって?それなら一人前頼みます?」


「いらな…くないな、普通に飲みたいw」


「コーンなに元気なのに?www」


「…時を止める能力に目覚めましたか?」


 朝食食ってる最中にクダラナすぎて超ショック!ってのは言わなくて良かったわ、沈黙は金だね。


 そんなこんなで午前中に買い物を済ませて午後は部屋に集合、トレモのお時間だ。

 昨日は狩りが順調すぎて、ついつい帰りが遅くなったので本日に延期だったんだぜ。

 明日出来る事は明日に伸ばせる才能に我ながらシビレルね。


 胡座をかいて軽く指を組み目を閉じる。

 瞼の裏、とゆーか脳内にもう一人の自分が居てスルリとその中に意識が入り込む。

 グリッドが走る間合いが分かりやすいデザインのトレーニングルームだ。

 入室を求めるシグナルに許諾すると、少し離れた所にパイセンが現れる。


「ではパイセン、宜しくオナシャス!」


「うむ…サエキさん、まずCQCの基本を思い出して…」



 分かってはいたけど近接戦のパイセンは鬼だった。

 リーチはこっちのが全然有利なのにまず捌かれる、意図したガード方向の反対側から攻撃が来てガリガリバリアが削られる。

 そんでもってポイポイ投げ捨てられる。

 テレポート封印してたとはいえ完敗である。


「いやー、強いわw」


「んー、実際はテレポートで適度な距離取られたら分からんぜ?あとテレポ封印ってゆー組手だったけど空間把握だっけか?それまで封印してたっしょwww」


「やべ、新機能過ぎて忘れてたわ」


「まー、攻守共に課題はフェイントだねー。同じモーションで攻撃が飛んできたり来なかったりすると受け手側は一気に面倒くさくなる。逆に今回俺の攻撃がガシガシ当たったのは虚の攻撃を見せて実の攻撃を相手の身体や自分の身体で隠して死角から当ててたからなんよ、クロスレンジだと死角も増えるからな。当然単調にならない様に実の攻撃を見える様に出して防御させるってのも混ぜてたけど、それら全部が空間把握ってヤツ使えば恐らく“視える”筈だ」


「ほう」


「それとな、オーク戦で気になってたんだけど、投げる時は常に地面に叩きつける様な投げ方してたよな?」


「受け身取られにくいからねー」


「悪くないんだけど、せっかく投げ間合いが広いんだからさ、一度上に放り投げて浮いてる敵をもう一度掴んで地面に叩きつけるってのも有効だぞ。リズムも変則的になるからコレはコレで受け身が取りにくい」


「エグいな、ソレはw」


「そんじゃー、今度はテレポ解禁でヨロwww」


 こうしてお互いの得意間合いでの組手を続け、最終的には武器有りのガチで闘り合い、アドバイスを交わした。

 怪我しないで出来るガチ訓練とかマジでリアル経験値捗るわw



 忘れてたワケでは無かったんだけど何時までたっても入室して来なかったザッキーは「観戦モードで見てたけど高度過ぎてヒきますよ、パイセンは今度基本的な防御と逃げ方教えて下さい。生兵法になるんで攻撃は原則後ろからってスタンスに徹しますよ…」との事。

 そんな戦闘民族見る一般人みたいな目つきヤメてくださる?能力的に貴方も立派な逸般人ですよー。



 ――――――――



「おろしたてのパンツで〜ブッパなしてみたい♪」


「部屋の外でヨロwww」


「屋内でのBC兵器は何かの条約違反でしたよね?」


 午前中に購入したインナーのザラついた感触でナニかに目覚めそうなところを心のBボタン連打で堪え、気を紛らわす為に青い心の詩を口ずさめばすかさずツッコミが飛んでくる日常。

 武器屋にも行ったけど残念ながら気難しいドワーフは居なくて普通に愛想の良い店員さんでした。

 世界よ、テンプレが迷子ですよ!

 マジで異世界転生の才能無いのかと。

 ちなみに旅のお供に細々したアレコレや各々手斧とナタとナイフを購入、パイセンは更にダガーと短槍と自動拳銃を購入、ザッキーも研究用に銃を何丁か購入。

 そーなんですよ、銃って実装されてるんですよ。

 まー、ガンナーのスキルが無いと威力が半減するんですけどね。

 パイセンは一応気休めだって言ってましたね。


 明日は旅立ちです、俺達自分探しの旅に出ます!


 

 ────次回予告(嘘)────

 

 有無を言わさぬ転移、馴染まぬ食文化、強いられる殺し合い…理不尽な身分制度が法律を捻じ曲げて行動を制限する。

 人との出会いは常に命をベットした対面であり、別れは常に今生こんじょうついの触れ合い…

 次回、「旅立ち」。転生者達が飲むアンセムのコーヒーは苦い。


 俺達の異世界テンプレ探しの旅は、まだまだこれからだぜっ!


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る