第11話 いただきますか?


 トレーニング・モード


 其れは格ゲー道における修行の一つである。

 とある達人は千日のトレモを鍛とし、万日のトレモを練とした。


 ――リン書房刊『それでもトレモやりこみは裏切らない』より抜粋――



 太古のコンシュマーなゲームでは確かに累積点数で隠されたモードがアンロックされる機能とかありましたねー…いつの時代だよ…

 あー、gotta 2ごった煮ってそんな時代のオマージュして隠し要素付いてたわー、絶対スタッフの悪ノリだって言われてたわーw


 ざっくり言うと“フルダイブVRで練習できますよ”との事。

 対象の挙動・戦闘データとかあれば仮想範囲内での模擬戦とかもできるらすぃ、無駄に高性能だなオイ。

 他の二人ともオンライン対戦できるけど動けなくなるから、お家に帰ってから遊んでネ。との事…

 帰ったらパイセンのCQC道場で組手だな。


「パイセン!後で対戦な!」


「おう!パイセンと対戦な!ってやかましいわwwwそんな事よりおウドン食べたい、腹減らない?」


「レーションならありますよ?」


「「mjd?」」


 なんでもミューラー号の食糧プラントを稼働させたそーな。

 品種改良された藻と豆類の合の子みたいな植物があって、保管されてたその種子を人工繁殖させてパイセンのデータから引っ張ってきたレーションのレシピに合わせて合成、ストレージに亜空間転送してきたって寸法だ。

 未来、来てますよ?奥さん。



「「「いただきます」」」

 

「…その昔、エルフ娘が据え膳状態だったんで転生者が“イタダキマス”って言ったら“板抱きます”って言われたと思われてブチ切れられたって小話があってな?…つかレーション美味くね!?」


「…人がモノ食ってる最中にオカシナ話すんなしwwwしかしマジ金取れるレヴェルだわコレ」


「しかも栄養バランスもしっかり計算されてますよ、どの栄養素を五つ取り出しても綺麗な五角形になります。今回はレーションなんでカロリー高目みたいですけどね」


「飯代浮くなら稼ぐ金額も抑えられるよな?それとも余裕もたせて当初の目標金額まで稼いどく?」


「あって邪魔なもんでも…あるか?オール貨幣だと重量問題が問題?どんなもんだい?www」


「最悪ストレージに放り込んでおきましょう。亜空間転送には時間的量的制限はありますけど腐るもんでもありませんし、お寿司」


 説明しよう!ネトゲ時代はインベントリとゆー数量的制限のあるアイテムボックスに色々しまっちゃうおじさんだったんだけど、STR準拠で重量制限があったんですよ。

 ザッキーさんはストレージとゆー固有の超未来アイテムボックスを持っていて、基本性能はインベントリと変わらないんですが、目玉なのはミューラー号と亜空間的に繋げる事が出来るんですよ。

 どうやら特殊なUI[トリニティ・インテグラ]で繋がってる俺達三人は夫々の元ゲームに準拠したシステムが割り当てられてるらしく、俺ちゃんはインベントリすら無くて(そりゃ格ゲーキャラなんか多次元なポケットでも持ってる設定でもなきゃ持ち物とかない罠)、パイセンはインベントリだけ持ってる(ポーチとか装備してても明らかに入らない量の弾薬とか持ってたしな!)。

 そして如何なるアイテムボックスも時間経過は普通にあるのが、この世界クオリティらしい。


「マジで一家に一名ザッキーさんな、マジ感謝!うれし~ザッキー感謝感謝♪」


「その歌と踊りはヤメとけ、炎上するぞwww」


「アニメ化した時には微妙にモザイク掛けときましょうね」


 どこまでもピクニック気分の三人であった。



 ――――――――



「おかしい…絶対におかしい。世界の秩序が乱れてね?」


 宿屋併設の酒場で魂の吐露する俺ちゃん。

 あ、狩りも換金も順調でしたよ。


「乱れてるのはサエキさんの脳波じゃね?www」


 相も変わらず草を生やすパイセン。違う世界線なら絶対に職業は農家とか園芸家のラノベ主人公だったに違いない。


「強いサイキックには強くて安定した脳波が必要ですよ?産廃になりたくなかったら自分を強く持って下さい」


 自分を強く?おーけー、俺ちゃんのアイデンティティを語るターンだな?物語とキャラ付けに深みを付けるチャンスだぜ!


「自分を強く持ってるヤツなんて、俺ほどの男はそうはいないはずさ。メガネ女子愛は人生のモーションだって語り尽くしてやろうか?ん?勉強させてやろうか?ぉおん?」


「やべwww何かスイッチ入ったwww」


「サエキさんの業の深さと強さの秘密の一端は良くわかりました。で、何が不満なんですか?」


「だってさー、普通さー、あの流れならボス湧くやん?ランダム湧きで他に狩ってる連中も見当たらないってゆー確率論的にも、緊張感なく気を抜いて遠足してるっちゅーフラグ論的にもさー?」


「あー、同じラノベ厨的にソレわかりみが深いわwww」


「そんな事ですか…いいですか?そもそも助けた高慢系貴族属とも衝突してなければ脱獄して反逆フラグも建てられないような人が何言ってるんですか?魔力使い切って総魔力量底上げする修行とかしてから物申して下さい…まぁ非推奨案件ですが」


「んな事言ったって魔力とか欠片も感じないし、何ならステータスとか表示されないんデスケド!?ソレっぽく集中しても超必ゲージが貯まるだけでオマケにソレだってマックス3本ナンスヨ!?」


「そのヨクワカラナイ理不尽さに対する怒りで潜在的な奥義とか習得できそな勢いwww」


「…分かってますか?今そんな事言ってたら今後モンスターに襲われてる馬車に出会えなくなる逆フラグだって事に」


 俺はそっとオクチにチャックした…



 

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