第9話 聞こえますか?


〈今、貴方の脳に直接話しかけてます…揚げ鶏下さい!〉


 各々のサポートA.I.のガイダンスが終わった頃を見計らって記念すべきファースト念話を華麗に飛ばす俺ちゃん。


〈ちょwwwお約束過ぎwwwあ、草生やせる機能が付きましたwww〉


〈これって端から見たらおっさん達がニヤつきながらアイコンタクトしてる風にしか見えませんよね?薄い本は断固阻止したいのですが…〉


「おけ、念話中は表情筋使用禁止にしようw(藁復活!流石パイセン、こーゆーの見つける天才だわ)」


「視線にも気を付けるか…視点動かさなくても狙ったアイコンがフォーカスされるのは凄く便利だな。流石超文明謹製UIだはwww」


「超文明ついでにお知らせがあります。どうやら“ミューラー”が周回軌道上で待機してます」


「「mjd!?」」


 説明しよう!ミューラーとは名作サブ・スペースに登場するアイザック・ビショップ大佐が個人所有・乗艦する宇宙航海機の名前である。

 種別としては中型工作用潜宙艦サブ・スペースであり宇宙航行と亜空間への潜宙が可能な未来でフューチャーなアレである。要は普通の船と潜水艦サブ・マリンの違いが宇宙行ったら宇宙船と潜宙艦のそれに当たると思って欲しい。

 アイザックは雇われた辺境惑星調査団により目標の惑星に先遣隊として内火艇で地上に派遣される。降下中に周回軌道上に待機していた調査団は、謎の攻撃を受けて潜宙していたミューラー号を除く全機撃墜。内火艇も攻撃を受けて墜落するが辛うじてアイザックのみが生き残る。そこは人類が生存可能な文明的には非常に原始的な世界であった。

 魔導整備士マギカニック(魔導具を中心とした総合的な機械全般をメンテナンスできるエリート整備士)であるアイザックはミューラー号のサポートを受けて再び宇宙へ戻る為、惑星開拓してミューラー号への帰還を目指す。とゆーのがサブスペのストーリーである。


「するってぇと何かい?サブスペみたいにミューラー号のサポートが受けられる、と?」


「うっは、宇宙ヤヴァいwww」


「既に受けられるサポートは受けてますねぇ、ほらサポートA.I.の大元データはミューラー号のマザーA.I.ですから。それに各種開拓ツールを中心に各種設計図データを受信してますよ、残念ながらミューラーに資材が無いのでデータのみですが…そして一番大きいのは基本工具がストレージに転送された事ですね。超文明技術万歳!」


「おー、未来の素敵ギミック工具ktkr。それで檻突破ゆゆうくさくね?」


「これで勝つる!脱獄スタートの俺達tueeeストーリー始まる?始めちゃう?www」


「ジョバンニ氏が良くしてくれましたけど、個人的には今の状態って不当逮捕なんですよねぇ」


「まーとりま明日の朝まで待ってみない?普通に眠いし、ここなら雨風防げるしさ…勘違い貴族とか出張って来たら諦めるけどさ、苦藁(←ちょっと気に入った)」


「眠いに一票www檻さえどーにかなれば力とパワーで何とかなりそーだし、苦草」


「脳筋ですなぁ、まぁ今は城に兵隊さん集めてるみたいですしねぇ」


 満場一致で明日に備える事に。ちなみにマップに反応があった時にはサポートA.I.が起こしてくれるらすぃ…いやぁハイスペックですなぁ。もちろんアラームはウィスパーヴォイスでお願いしました。



 ――――――――



「なー…物凄く拍子抜けなんですけどー?」


「それなwww」


「絵に描いた様なお役所仕事でしたねぇ…」


 適当に買ったホットスナックを朝飯にしながらベンチに並ぶ三人衆。

 結局、朝一にお役人さんが二人程連れ立ってやって来て簡単な聴き取りと謝罪して心ばかりの迷惑料を渡されて即釈放されました。


「お城組がカオスってるんだろーなー…」


「すっごい強調してたもんな…“貴方達の人権を侵害するつもりはないんです!”ってwwwどんだけ城組の連中詰めてるんだろーなwww」


「群衆心理とテンプレ権利主張なんでしょうかねぇ?後から南門のプレイヤーが不当に勾留されてたとかバレたらヤバいと思ったのではないか、と。多分、コンバート勢を除くプレイヤーの囲い込み政策の一環だとは思うんですよねぇ」


「ん?…あぁ、そうか。ゲームだった頃は狭い国土の経済を支えてたのは働き蟻の如くダンジョン通いしてたプレイヤーの役割りが大きいって事か。そりゃ逃したくないわなー」


「うっはwww只の経験値稼ぎとドロップ換金が経済回してるとか…あれ?けど多分デスペナってどーなるん?生き返る系?誰だって試したくないだろーから少なからず停滞するよな?」


「だから最低でも一定数の実績のある職業、特に上級職のプレイヤーを優先して囲い込もうとしてるのではないか?と。出来るだけ穏便にね」



 自分たちの事は一旦棚に上げて、考察する事で現実逃避する三人衆なのであった。




  


 

  

 

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