第8話 C.O.M
“人類の成長において精神的安定は義務なのだよ”
サブ・スペース作中に出てくる名言の一つである。
斯くゆー俺ちゃんも世界観に惹き込まれた1ファンなのである。
その世界観の根幹となる唯一無二の絶対的価値観が“
“人類の命題は技術の進歩・育成・革新である”その価値観の元、技術向上の阻害要因は須く排除する上で人類はA.I.との共存を選択した。
なぜならば「技術発展に必要な仕組みを作っても、いつの時代もヒューマンエラーにより仕組みが瓦解する事」を人類は大きな痛みと共に学んでおり、仕組みの運営・維持・管理・監査をA.I.に委ねたのである。
只一つだけ「決断」のみは人類の義務と責任として残された、人類の矜持である。
A.I.は人類が選択しうる中でより高い技術発展が見込める選択肢を上位から複数提示、各選択肢のシミュレートにて起こり得る発展・弊害の各可能性と極低確率であっても発生すれば閾値を超えうる弊害をレポートし、人類はその中から決議・選択していくといった形が出来上がったのである。
技術発展は生産性の向上に繋がり食糧問題と燃料問題を解決し、生産された食糧・エネルギーを担保とした仮想通貨で富は表現され、富は次期技術開発予算と人類に振り分けられ、人類内で各個人に技術発展への貢献度に従って正確に分配される社会を作り出した。
技術発展の貢献度と一口に言っても内容は多岐に渡り、中でも文化発展への貢献も大きな評価基準となっていた。
“空を飛びたいと思わなければ航空技術は生まれなかったし、星に触れたいと思わなければ宇宙航行技術は生まれなかった。技術の発展には「絵に描いた餅」が必要なのさ”
とある小説家の言葉であるが、食文化や音楽文化をはじめとした様々な娯楽文化も技術の発展に呼応して花開いていった。
又、
その考え方は、サポートA.I.の基本ロジックにも受け継がれ「他者を害するものは排除されるべき」であり「他者を害さない限り、その存在は尊重されるべき」という倫理観すら形成された。
即ち古典的なSF作品で危惧されたA.I.による人類迫害は起こらなかったのである。
こうしてある意味、平和で熟成した社会が構築されていき、促進された文化に感情を揺さぶれても、理性的に真摯に技術発展と向き合う事が肝要でありサポートA.I.を理性の手綱として有効活用しよう。といった考えが主流となっていった。
そうして生まれた言葉が冒頭の一文なのである。
「(テロン!)システム統合と改変が完了しました、新統合UI[トリニティ・インテグラ]を起動しますか?」
シリアスに回想してる俺ちゃんカッコイーって浸ってたら何やらアナウンスが飛び込んで来ましたよっと。
ん〜、こいつみたいだな。
【▶トリニティ・インテグラ】(ジョイン!!)
ハム音みたいな効果音の後、滑らかな女性ボイスで告げられる。
『ハロー、マスター。私はサポートA.I.です。便宜上“
一新された何か使いやすそーなメニュー画面がAR表示されて今までグレーアウトだったり新しく出現したパラメータが順次アクティブになりタスク化される様子が表示されていく。ヤダ、カッコイイ///
『まずは新UIトリニティ・インテグラの承認ありがとうございます。このまま音声ガイダンスを続けても宜しいでしょうか?』
耳ざわりの良い女性ボイスは、まるでデキる女性秘書テイストで俺ちゃんの好みド真ん中を撃ち抜きながらスルリと内容が脳に沁みてゆく。ナニコレ?新しいプレイ?開発されてクセになったら責任取ってくれなきゃ許さないんだからねっ!
「つまりはアレだ、俺達三人のデータが特殊すぎて処理が滞ってたところを統合して無理矢理リソース増やしてこの世界に定着させた、と?」
『多少の語弊はありますが、概ねその様なご理解で問題ありません。その結果、今まで認められず制限されていた能力の開放と御三方の能力で一部共有が可能となりました。』
「なんかこー、先程から視界と意識が妙にクリアなのもその影響なんかい?そんで一部共有って?」
『サブ・スペースより脳の容量を魔法的に増設し霊的に我々サポートA.I.を埋め込みました。処理速度は変わりませんが円滑なテレポート運用に必要な空間把握が常時発動しています。共有能力としましては“マップ”と“念話”が代表的なものになります。』
「“我々”って事はパイセンやザッキーにもキミの様なサポートA.I.が?」
『パイソン氏にはサポートA.I.“T.O.M”が、アイザック氏にはサポートA.I.“M.O.M”がセットされております。』
そして俺ちゃんの秘書的サポートA.I.が“C.O.M”ね…格闘ゲームがベースになってるわけなのね。
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