第5話 襲撃


 やって来ました南門の衛兵詰め所、ちょっと広めの取調べ室みたいな感じ。

 よ〜しパパ、カツ丼出てきたら何でも喋っちゃうZOって息巻いていたら、衛兵さんBは不審者3名確保の報をお城に報告、衛兵さんAは不審者達の監視で残留。

 ここでザッキーが無駄に高いコミュ力を発揮、衛兵Aさん=ジョバンニ氏の家族構成・趣味・夜の悩みや将来の展望なんかを聞き出していた。

 

「子供は可愛いんですよ?だけど妻が私の相手をあまりしてくれなくなって…えぇ、よくやってくれてて感謝もしてますし、なるべく言葉にもするようにしてますよ?でも私もまだまだ燃え上がるモノがあるんですよ、いずれは出世して隊を率いる背中を家族に見せたい、そのための燃料といいますか、積み上げてる毎日のご褒美とかが明日の活力にですね?あ、そちらのお二人、聞いてます?」

 

(苦藁)かっこにがわら〜

 

(苦草)かっこにがくさ〜

 

「まー、連中は風にそよぐ植物だと思ってて下さい。それよりも…」


 そうやって、あれよあれよと市井の情報を聞き出すスペオペ全身スーツ。

 まー、クエストマーク付いてないNPCの話とか普段聞かないからなー、転生したからには現地の風習とか常識とかマストな情報だもんなー。

 転生したら一家に一名ザッキーさん、これマメな?


 ゲーム時代はマップ毎に昼夜が決まっていて、大体昼がデフォルトだったりした。

 アンセムも昼マップだったんだが現実は時の流れが当然あるワケで、世界が繋がった?のが深夜二時だったのがこちらでは午後二時、つまり十二時間の時差があるようで。

 ちなみに一日が24時間、一週間が7日で一月が30日、一年が12ヶ月プラスアルファ、何でも星読み衆とやらが閏年の日数とか導き出して年末に「年納めの節」とかゆー5日だったり6日だったりの基本休日になる日数を決めるんだとか。

 特筆すべきは「星読み衆」と書いて「スターゲイザー」と読むらしい、やべぇーなんかカッコイイ、左眼の奥が疼くような気がするZE。


 興が乗ったのかザッキーさんの尋問が進み、ジョバンニ氏の上司に連れられてった奥さんにはナイショのお店が思いの外楽しかった件を涙まじりに懺悔する頃には三時に差し掛かっていた。

 そろそろ城突するか饅頭とお茶を要求するかパイセンと真剣にディベートしていたらパンパンと花火めいた乾いた音が屋外で響く。


「アレは…三時のオヤツの祝砲!?」

 

「個人的にはオヤツよりラーメンかなー?今の腹具合的に?ハラグアイだぜ?良かったな!今俺が地球儀を持ってなかった事に感謝しな!」

 

「空腹で若干凶暴性が上がるとかやめて下さい、ジョバンニさん?今のは?」

 

「分かりません、ちょっと見てきますね。皆さんはこちらでお待ち下さい。」


 ジョバンニ氏は剣帯と槍を確認すると扉を出ていった。

 扉を眺めながら、事態を考察する三人衆。


「銃声かなー?「乱射・オブ・ザ・デッド」ってアレだよな?画面外撃ってリロードするタイプで弾数無限でしょ?6×∞だっけ?」

 

「初代はリボルバーだからそうだけど2以降だとタイトルによってオートマチックで8×∞+1だったりするな」

 

「違うゲームかも知れませんし、想定はしても決めつけない方がいいでしょうけど…撃ってる奴がこちらを撃ってこないという保証は何も無いですからねぇ」

 

「パイセンは何か武器持ってる?ザッキーはインベントリー空っぽだったよな?」

 

「初期装備は何にもない、全部現地調達はお約束だぜ?」

 

「夢と希望が詰め込んであれば良かったんですけどねぇ」


 つーワケで、何かあればサエキさんの超能力が対飛び道具で通用するかどうかが鍵となってくるのね。

 岩をも砕く鉄の拳をガードしてきたバリア様、どーか銃弾も防いで下さいまし…

 一応、パイセンも手が届く距離ならCQCで捕縛頑張ってくれるみたいだけど…そのスニーキングスーツって防弾仕様?ザッキーの初期装備スペオペスーツは対放射能とかで物理防御はあんまり期待出来なかった筈で…色々不安だ。

 未だに散発的に響く銃声、流石にジョバンニ氏の安否も不安になってきたので様子を伺いにゴーアヘッド、フォーメーションD-Qすなわち一列縦隊でコーナーは直角に攻めるスタイル。


 南門の陰から外を伺うと、ジョバンニ氏を始め何人かの衛兵さん達が倒れてらっしゃる。

 いつでもバリア張れる様に注意しながらジリジリと近づくとパイセンもザッキーも阿吽の呼吸で全周警戒しながら付いてきてくれる、何だかんだで頼れる奴らだ。

 とりま仁王立ちして注意をひいてる間に二人が近くの衛兵さんから順にバイタルチェックしていく。

 かろうじて全員致命的な致命傷は免れたらしく生命の危険の危機は精々重傷止まりで流血を止血してゆく。

 ジョバンニ、死んでなくて良かったよ。


「…サエキさん、鎧は抜けてない。只しこたま弾を喰らってるから骨まで逝ってるかも知らん」

 

「こちらも同じ状態ですね…兜が無ければ即死だったかもしれないです」


 仁王立ちのまま二人の報告を聞き流しながらも、いつでもガードできる様に周囲に注意を配る。

 格闘ゲームで言う「レバーニュートラル状態」である。


 !!今、俺は二人の風上にいる…つまりここでスカシっ屁したらそれは正に「臭う立ち」!!



 

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