第4話 接続


 情報を整理しよう。

 

 冴城 獠、通称サエキさん、格闘ゲームキャラで基本的に近接では届かないトコからチクチクしてくるスタイル。

 エターナル・レヴェリー・オンラインではノーガード・ナイトとゆー前衛キャラをビルドしてた変態。


 パイソン・イェーガー、通称パイセン、ステルスゲームキャラで接近戦は活殺自在なCQCで、遠距離はスナイプでと万能にキルしてくるスタイル。

 エターナル・レヴェリー・オンラインでは殲滅系騎乗テイマーとゆージャンルを開発した変態。


 アイザック・ビショップ、通称ザッキー、SF開拓ストラテジーゲームキャラで基本的に開拓便利アイテムを開発・メンテナンスしてるけどキレると工具でキルしてくるスタイル。

 エターナル・レヴェリー・オンラインでは戦闘スキルは投擲のみで、ひたすら自作のヤヴァいポーションとか投げつけて攻略してた変態。



 ナチュラルにセレモニーをスルーして雑談に花咲かせる変態共を眺めてたら午前二時をお知らせされ…なんだコレ?世界が…歪む?新職業の転職クエストとかコンバート二次受付は午前九時からだし初日はver.Xの定着とコンバートの帳尻合わせくらいだから明日が本番だから!と息巻いて今夜はログアウトしてるプレイヤーも多いんだよね。

 そんなサーバー負荷も落ち着き始めてる頃に不具合?なのか?

 深刻なバグかなー?と訝しんでると歪んだ視界が戻っていく…なんだコレ?世界がクリア過ぎる?自分の手を見やると五指が自在に動く。


 ちょ!待てよ!俺ちゃんの五指はリアルでは分割キーボードの上なワケで、五指を動かすデバイスなんて存在しませんの事よ!

 あまりにもの衝撃に胸を抑えるとドキがムネムネで…鼓動?ナニコレ?


 ギギギと油の切れたロボットのやうに視線を変態共と交わすと

 

「なー、匂いって実装される予定だったっけ?草」

 

「もしかして、“草”を音声登録して“www”って変換してました?」

 

「それウケる藁」

 

「「“藁”変換乙!」」


 ひとしきり現実逃避した後に各自インターフェイスを確認すると見事にログアウトの項目がグレーアウト。


 そう、物凄く雑かも知れないけど「俺達のゲーム世界転生が始まった」のですよ。



「それでは第一回“俺達のゲーム的異世界攻略会議”を開催します」

 

「わーわードンドンパフパフっうっうぇっ…」

 

「無理して草生やすなよ、藁」

 

「諦めて藁で妥協したらそこで試合終了ですよ?」

 

「まー、お約束なんだろーけどさー、コレ戻れない系よな?戻れる系だとしてもこの世界での生活基盤?的な?そんなん確立した上でクエスト的なモンをクリア?的な?チェキラ?して世界を渡って戻る的な?みたいな?」

 

「白い部屋とか通過してないんで神との対話とかしてないですものねぇ、それともどなたか神様的なナニカと対話してます?」

 

「そんなヤベー薬キメた覚えはないなー、つか生きてく上で色々システム確認してく必要あるよな?」

 

「このゲームって“冒険者ギルド”とか無いよな?ヤベーわー、伝説の無職の工作員だわー」

 

「私のインターフェイスにはGMコールとか無いんですけど誰かあります?」

 

「俺のログには何も無いな…大樹からここ来るまでに襲ってきたゴブリンとか殴ったら謎の点数入ったんだけどさ…小パン一発で100点、パーフェクトボーナスで5000点だったかな?KOしたら逃げてったけどさ」

 

「あー、漏れ漏れも。素手CQCで投げ捨てたらポイント入ったわ。外伝だとこのポイントで色々購入出来たんだけどなー、そもそも無線コールも出来ないし購入先の周波数も分からんわダブリュー掛け3」

 

「無理して草生やさ無くていいですよ?サブスペだと点数的要素無かったですし、そもそも工具も開拓ツールもインベントリーにありませんしお寿司」

 

「皆、おちけつ。なんか南門のNPCがこっち指差してるお?」

 

「「mjd?」」


 新しい世界に繋がってしまった俺達に、ゲームだった頃は「ここはアンセムの街だ」しか言わなかった衛兵っぽいNPCが二人組でやって来た。


「あのー、もしかしてプレイヤーの方ですか?」


 意味が分からなかったが、よくよく聞くと事前に教会的な組織にお告げ的なモノがあり、各国に「異形のプレイヤー達が現れ、世界は様々な変化をしていくだろう」と伝えられたそーな。

 そーだよなー、近未来的な軽装なのとスニーキングスーツにスペースオペラな全身スーツじゃー世界観バラバラで異形さん御一行ですよねー。

 何でも国の方針とやらで「お告げの吉凶とかよく分からんけど、取り敢えず話をしてみるよ」との事でお城にGOがファーストステップらすぃ。

 南門の外にも何人か出ていったのを伝えたら探してみますとの事、まーログアウトしてるかもだが。

 そんでもってお城の前にはプレイヤーが多数居て渋滞するだろうと何とも親切なお告げもあって、しばらく南門で待機してて欲しい、との事。

 東西の門も同じ指示がされてるそーな。


「なぁ、草の?」

 

「なんだい?藁の」

 

「おや?新ジャンル植物系男子ですか?」

 

(藁)かっこわら〜

 

(草)かっこくさ〜

 

「遊んでないで話を進めてください」

 

「コンバート勢ってプレイヤーはプレイヤーでもコスプレイヤーだよな?」

 

「サエキさんのギャグセンスはサイキックっつーよりサイコパスよりだよな?」

 

「あんまり上手くないですよ?」


 口数の減らない系男子達であった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る