第2話 建物へ。物語への入口。
書かれた住所は割と近いところにあった。ここからでも30分くらいで行けそうだ。
――でもバイトの店のある住宅街と真反対の位置にあるので、行ったことがない道を通るだろう。
しかも都会の方だ……苦手なんだよなぁ、人が多いところ。
車の免許は持っていないので自転車を走らせる。
普段はバスを利用しているため、自転車に乗るのは久しぶりだった。
冷たい風が身体に当たって、想像以上に寒かった。暦の上ではまだ秋だが、この寒さは冬に匹敵するだろう。
『50m先、左折です』
「――ここを左か」
周りは高い建物ばかりなので方向感覚を失いそうになるが、ナビのおかげで迷うことなく走れている。
大通りから抜けた。ここを道のりに進んでいけば目的地に着くそうだ。
*
「ここか……」
俺はあるビルの前に着いた。高さは30メートルくらいか。その近くにあるめっちゃでかいマンションに比べたら小さく見えるな……
窓には広告も貼ってある。――しかもあの書類に書いてあったのと同じ広告もあった。
「――入るか」
建物の中は外からよく見えないので入って確認することにした。
しかし、自動ドアは反応しなかった。鍵がかかっているのか無理やりでも開けることができなかった。
「帰ってまた今度来よう」
俺は振り返り、歩き出す。
すると、後ろからウィーンという機械音がした。
――ドアが開いたのだ。
しかし、中の様子は見ることができなかった。なぜなら、暗かったからだ。
そう、真っ暗だったのだ。
黒を極めた黒のような感じだ。――伝わるかな?
「どうなっているんだ……?」
俺は建物に近づく。
中からはものすごい暗黒のオーラのようなものが漂っている。
――うわぁ、絶対無理だこんなの……
正直俺は暗いところとかが嫌いだった。もちろん心霊とかも。
帰りたい……
俺はしばらく悩んでいた。
決断できない自分の頬を両手で叩いた。
「こんなのにビビってどうする俺! よく分からないけど助けに来たんだろ!」
と自分に活を入れる。
――そして俺は暗闇の中へと歩いていった。
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