幕間:瑞穂と刹那の想い
刹那は船頭に立つ海人の背中を見つめていた。彼はすでに今後の事を考えているのかずっと沈黙を貫いている。その心境がいまだに判らずにいた。彼にとって焔木一族はすでに憎しみの対象なのか。それとも興味がないのか。そもそも自分のことをどう思っているのか何もわからずにいた。今後は護衛として近くにいるのだから彼のことをもっと知りたいと思い話すタイミングを計っていた。できれば過去のことも謝りたいとも思っていた。
「はぁ・・・」
「何をため息をついてるの瑞穂。あいつと話したいのなら私が連れてこようか?」
「いいえ。今はそっとしておきましょう。話す機会はこれから山ほどあるでしょうから」
「そう?ならいいけど」
本音を言えば話しかけたかった。この行動力のなさが自分の欠点だという自覚はある。何でもズケズケと話す刹那の事がうらやましいし、そばにいてくれて頼もしくもある。だが拒絶されるのが怖くて仕方ないのだ。彼を開放するためとはいえ夢幻島へ送る提案をした時は本当に嫌われる覚悟をしていった。だが実際に会って話した時にどうしようもない恐怖が自分を襲ったのだ。
「私はダメですね・・・欠点だらけです」
「何をいってるのさ。今後の焔木を導くのは瑞穂だと私は思ってるよ。だからそばにいるし守りたいと思ってる・・・あいつがどう思ってるかは知らないけど」
刹那も正直なところ海人とどう接して良いか悩んでした。夢幻島で生き抜いたら自分が鍛え上げてやろうとも思っていたが、今のあいつは得体が知れない。島へ行く前の無気力な空気が完全に霧散している上にまだまだ実力の底が見えない。刹那は一族の同年代の仲では飛び抜けた実力の持ち主だが、それでも今の海人がどこまで強くなっているのかが判らなかった。もし想像以上に強くなっているのであれば今後どうなっていくのかも。
「まさかあいつ・・・当主の前で暴れたりしないよね」
「それはない・・・と思いたいですが今の彼は何をするかわかりません。事前に釘はうっておきましょう」
当主と海人は面識がある。それは彼の父親が当主の側近の1人だからだ。そんなに悪い印象は持っていないとは思っているが問題は周りの連中だ。父親に関しても今はどう思っているか。やはり幽閉された6年の歳月は長すぎた。彼の事について知らないことが多すぎる。
「当主と会う前に一度彼と話し合いましょう。気になることは山ほどありますし」
「気になることっていえばあの2人もね。しかも1人は島に送られるような罪人だったんでしょう?」
「そのようですね。私も彼のことは良く知りませんが、単独で島送りにされるとなるとそれなりの罪を犯したはずです。それでも20年も島にいたというのであればとっくに罪は許されているはず。最もとっくに死人扱いされてるでしょうが」
「あっちのメイドは?海人にべったりだけど」
「彼女は・・・良く判りません。刹那はどう思います?」
「私もよくわからない。氣も読みにくいし・・・強いとは思うんだけど得体がしれないよ」
海人も心配であったが一緒に連れてきた2人はより不安であった。騒乱を起こしそうな匂いがプンプンしているのだ。何よりあのメイドは海人と距離が近すぎないだろうか。果たしてどんな関係なのか・・・。
「聞くことは本当に沢山ありますね・・・ええ本当の沢山・・・」
「・・・ちょっと顔が怖いんだけど瑞穂・・・」
今後どうなっていくか。まだまだ前途は多難であった。
焔の幽閉者!自由を求めて最強への道を歩む!! 雷覇 @raiha25
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