第13話:迎えが到着
焔木瑞穂と焔木刹那は夢幻島へと船で向かっていた。目的はもちろん海人の連れ戻すためだ。もちろん生きていればだが。海人の体にはある仕掛けをしておりどこにいるかは把握することができる。たとえそれが死体であろうとも。
「ついに3か月経ちました・・・海人は大丈夫でしょうか?」
「きっと大丈夫よ。あいつはしぶとそうだし」
2人は海人の生存を信じていたが、それを面白くおもっていない連中もいた。焔木健太とその取り巻き達であった。
「はっ!とっくに死んでるに決まってるだろうあんな無能者は。とっくに魔獣のエサになってるさ」
「「そうだそうだ」」
「まったく時間の無駄だよな。死体回収なんてよ。」
刹那は彼らをみって柳眉を逆立てていた。
「文句があるなら来なきゃいいでしょ。それに海人が死んだとは限らないでしょ!」
「当主の命令でなければこんなところ来るもんかよ。それに生きてる訳ないだろ。あの無能者が剣だけでどうやって生き残るだよ」
「あんたが呪符を盗んだからでしょ!」
「あいつには過ぎた代物だからだよ。俺が有難く使ってやるって」
「あんたねー!」
「やめなさい刹那。相手にしては駄目です。島が見えてきましたよ」
瑞穂達は小舟に乗り換え島へと向かっていった。夢幻島の魔獣は強力であるため上陸には危険を伴う。そのため完全武装の一族の人間を何人か連れてきたのだ。その中に健太達が含まれてしまったのは誤算ではあったが。
「(それだけ深刻な人材不足ということですね)」
近頃、魔物や魔獣達の活動が活発であるため一族の主だった者達は出払っている。そのため若い者達で今回の上陸メンバーを構成せざるおえなかった。何事もなければいいが。
「ここが夢幻島ですか。私も来るのは初めてですが綺麗な島ですね」
「普通の人間が来るところじゃないからね。こんな島は」
夢幻島は今では魔獣を外に出さないよう常に結界で覆われ、罪人だけを送りだすような場所と化していた。刹那の言う通り普通の人間が来るような場所ではない。
「さあ海人の場所を探りましょう」
瑞穂は呪符を取り出し何事かつぶやき始めた。
「・・・かなり近いです。こちらに向かってきてますね」
「あいつ生きてるの?」
「あいつを食べた魔獣が来るんじゃないのか?」
悪態をつく健太を無視し、瑞穂と刹那は森の方に視線を向けた。すると奥から砂浜に出てこようとする人影が見えた。それも3人分の。
「ようやく迎えがきたか待ってたぜ」
それは海人であった。なぜかその隣には初老の男とメイド(?)がいたが確かに彼は生きていた。島に送られた時と違い全身に生気が満ち溢れ堂々とした姿での登場であった。
「海人!よく無事で!!」
「あんたやっぱりしぶといわね!」
瑞穂と刹那は喜びの声をあげて近づいてきた。
「これで俺は島を出れるんだろうな?」
「もちろんです・・・ところでそちらの2人は?」
「20年もこの島にいた変人の焔木桐生とずっと封印されていたメイドのゼロだ。こいつらも連れて帰る」
「え?なんですって?」
瑞穂は最初何を言っているか判らなかった。この島にずっといた?焔木桐生という名前には聞き覚えがあった。かなり前に島に送られ死んだとされた人物であった。だが封印されていたメイドというのは何なのか見当もつかなかった。
「よう嬢ちゃん。おれは海人についていくと決めたからよ。同行させてもらうぜ」
「私もマスターのメイドとして同行します。反論は許しません」
「・・・おいっ!好き勝手いってるんじゃないぞお前ら!」
健太が怒鳴りながら近づいてきた。とっくに死んだと思っていた海人だけでなく訳のわからない2人もいて気がたっていた。
「お前らなんぞを島から出すわけないだろ。海人お前もだ!どうせその2人に助けてもらって生き延びたんだろ。そんな反則で島から出せるもんかよ!」
「・・・なんだこのクソガキは。殺っていいか?」
「私がやりましょう。楽に死ねると思わないことです」
桐生とゼロが物騒な言葉を言い放ち殺気を出すと健太はひるんだように後退した。
「な・・・なんだお前らやるつもりか?」
健太も無能な訳ではない。2人が只者でないことはわかっていた。
「やめろお前ら。俺がやるよ」
海人が前に出てくるのを見ると、健太は口元を緩めた。落ち着いてみれば海人の今の実力を量れたはずだが、これまで格下と思っていた相手にその目は曇っていた。
「いい度胸だ海人。かかってこいよ!」
「言われなくてもいくさ」
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