第11話:今後の方針会議

「・・・なるほどな。ウソみたいな話だが本当なんだろうな。この水晶の中にメイドがいたとはね・・・何だそりゃ?」


桐生は海人から事情を聞いたがあまりに現実離れした内容にうなっていた。


「桐生も知らなかったのか?この島は長いんだろ?」

「知るか。こんな場所があったことも気づかなかった。滝の裏にこんな空間があったとはね」

「誰にも見つからないように私は封印されていたのでしょう。平和な世に私は必要ありませんので」

「そういえばゼロの事を何も知らないんだよな。どのくらいあの水晶にいたんだ」

「そうですね。300年ほどです」

「「300年!?」」

「ババアじゃないか・・・ゴフッ!」


余計なことを言った桐生の腹にゼロの蹴りが入った。恐るべき速さの蹴りをかわすこともできず桐生はうずくまっていた。


「何かいいましたかジジイ。残り少ない寿命を削って欲しいのですか?」

「・・・悪かった。失言だった」

「判ればいいのです」

「ま・・・まぁそれはさておき何でメイド服なんだ?」

「創造主の趣味です」

「「・・・」」


2人はあまり突っ込まないことにした。余計なことを言うとまた蹴られそうだ。とりあえずゼロの創造主とやらが変態野郎ということはわかった。うん。


「ごほん。2人には先に話しておきたいことがある。俺は3ヵ月この島で生き抜けば外に出られる。お前たちも一緒に来ないか?」

「私はもちろん着いていきます」

「俺もか?ここの生活は気にいってるんだがな」

「桐生も来て欲しい。俺は一族へ復帰したらある女の護衛になる予定だ。戦力は一つでも欲しい」


自分がどんなに力をつけて戻ってもあの一族のことだ。簡単には俺を受け入れないとは思っていた。海人はまったく約束事など信用していなかったのだ。


「このまま逃げればいいんじゃないか?今のお前ならやれるだろ」

「約束したからな戻ると・・・それに俺は逃げ続ける人生はごめんだ」

「・・・焔木一族に復讐する気か?」

「復讐か・・・それも考えたが俺はそれ以上に奴らを屈服させたい。俺を認めようともしなかった奴らをな。そして本当の自由を得る」


瑞穂は当主になれば俺を開放すると言っていたが、俺はそれすらも信用していなかった。平気で約束を反故にするかもしれない。その時は一族すべてと戦うまでだ。


「・・・怖い目をしているな。一族の対応次第では全面戦争になるか・・・それも面白いか。一緒に行くとしよう」


桐生はニヤリと笑い、海人と一緒に島を出ることを約束してくれた。この男は戦う場所を常に求めている戦闘狂だ。それが同じ焔木一族であろうと関係ないのだろう。


「よし。残る期限は一月ちょっとだ。しばらくは桐生と修行を行い、期限が近くなったら島の中央部へ向かう」

「ほぅ?前に言ったよな。あの辺の魔獣はレベルが違うと」

「だから行くんだ。俺の最後の修行の場としてな」

「(この島の魔獣たちの力は出来る限り奪っておきたい。強力な魔獣を倒せば俺はもっと強くなれる)」


海人は幽閉されていた後に出会った一族達のことを思い出していた。あいつらはもう自分のことは死んでると思っているかもしれないな。俺が力をコントロールして戻ったらどんな顔をするだろうか。瑞穂と刹那はどうだろうか。案外喜んでくれるのだろうか・・・いやまさかな。


「さあ修行開始だ。時間は限られているからな桐生頼むぞ」

「おう。ただ俺は教えるのは下手だ。実戦で教えるから戦いながら覚えな」

「それでいい。頼むぞ」


そうして桐生との修行がはじまった。最初はひたすらに氣をコントロールすることに専念した。無駄のない桐生と違い俺はすでに大量の氣を垂れ流す無駄だらけの状態だったからだ。戦闘訓練を受けながら少しずつ氣をコントロールする術を身に着けていった。たまに森で魔獣を狩り氣を奪うことも忘れずに。ゼロは食事を作ってくれたりと生活全般をサポートしてくれていた。おかげで実に快適な生活を送れていた。そしてあっという間に一月の歳月が過ぎた。


「迎えが来るまであと1週間。いよいよ中央部に行くとするか」

「出来る限りのことはお前に教えた。後はお前自身が磨いていくだけだ」

「準備が出来ました。マスター出発しましょう」

「ああ。行くぞ2人とも」


3人は中央部へと向かっていった。すでに海人は尋常ではない氣をまとっており魔獣達も寄ってはこなかった。たまに襲ってくる魔物の瞬殺し何事のなかったのように歩みを進めた。強敵がいるであろう島の中央部に向かって。



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