第9話:心氣完成!その名も『奪焔神刀(ダエンシントウ)』

「心氣顕現が使えるだと?本当なのか?」


「もちろんです。むしろマスターは使えないのですか?無能ですね」




海人の額に血管が浮き出た。無能とは幼いことから言われなれてきたことだが初対面の人間にいわれるとやはりくるものがある。




「・・・悪かったな。俺は氣のコントロールができないんだ」


「そうでしょうね。あなたの氣量は異常な数値です。通常の使い手とは習熟難度がはるかに高いでしょう」


「気量の数値だと?そんなことがわかるのか」


「はい。あなたと違い私はとっても優秀ですのでそのくらい朝飯前です」




言い方はいちいち気になるが氣量を測れるらしい。半分ロボットみたいなもんなのかこの毒舌メイドは。




「俺の氣量ってそんなにすごいのか?どんな術を使おうとしても暴発するんだが」


「そうですね。通常の術者の100倍はありますね」


「100倍!?」


「術が暴発するのも無理はありません。例えれば通常の者が銃に弾をこめるような行為もマスターにとっては銃にミサイルをこめるようなものです」


「・・・なら俺はやはり術は使えないのか」


「心氣顕現を会得すれば解決するでしょう。私がサポートするのでやってみましょう」




そういうとゼロは両手に氣を集め始めた。


「心氣顕現。煌めく守護星ガーディアンスター」




ゼロの両手に盾が顕現された。西洋でいうバックラーというタイプの盾のようだ。それが両手持ち。




「それがお前の心氣顕現なのか」


「そうです。防御において私の右に出るものはおりません。そして特殊能力があります」


「特殊能力。そういえばそんなのがあるとか言ってたな」


「能力はその人が持つ資質や経験または欲望を元に顕現されることが多いです。あなたも会得すればそれにふさわしい能力が身につくでしょう」


「さあ準備できました。心氣顕現をおこなってください」


「だが爆発するかもしれんぞ」


「私の能力はバリアーです。それで暴走を防ぎますのであなたは全力で顕現に集中してください」


「・・・わかった」




海人は集中し手に刀を持つイメージで心氣顕現を行った。徐々に氣が刀のイメージになるが相変わらず不安定だった。




「ぐっ・・・ぎぎ!」


「刀の周りにバリアーを張ります。これで暴走はしません。刀の錬成に集中してください」




刀の周りが青い光に包まれた。これがバリアーなのだろう。暴走の恐れがなくなったことで海人は顕現にすべてを集中し始めた。そして先ほどゼロに言われた言葉を思い出していた。心氣は資質や経験または欲望を元に顕現すると。俺の経験なんてロクなもんじゃない。虐げられられるだけの毎日だった。そんな俺の欲望とはなんだろうか。




「(俺は奪いたい・・・これまでは奪われるだけの人生だった。すべてを奪い蹂躙できる力が欲しい!)」




自分の感情がこれまでにないほど高ぶるのを感じる。自分の身を守るだけの人生などもううんざりだった。守るよりも奪う方が強いというのが海人がこれまでの人生で学んだ経験であった。




「さあ顕現しろ!俺の武器よ!!おおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」




凄まじい氣の奔流にゼロのバリアーにヒビが入り始めた。




「これは凄まじいです。私のバリアーにヒビが入るとは・・・マスター!顕現の中止を!!」


「駄目だ!このまま続ける!!」




バリアーにさらにヒビが入る。ゼロは全力で抑え込もうとするが限界が近い。このままでは2人とも暴発で吹き飛ばされるかもしれない。




「うぉぉぉぉぉ!!!!!!」




海人がさらに氣を込めるとついにバリアーが破られゼロは爆風で吹き飛ばされた。人間離れした身のこなしと新たに展開したバリアーの力で壁に叩きつけられることはなかった。




「マスター!無事ですか!!」




海人は生身の人間だ。今の爆風で吹き飛ばされたのなら下手をすると死んでいる可能性もあると考えゼロはすぐに海人を探した。彼女の目はセンサーになっているためすぐに彼の姿をとらえられた。驚くべきことに最初の場所から移動していなかった。あれほどの爆風で吹き飛ばされなかったのだろう。やっと煙が晴れてくると彼の手には刀が握られていた。それは血のように紅い日本刀であった。




「・・・ふっ・・・はっはっはっは!やったぞ成功だ!俺は心氣顕現を会得した!!」


「おめでとうございますマスター」




ゼロは再度彼の氣の流れを見たが不思議なほどに落ち着いていた。荒々しくあふれていた気がウソのように穏やかになっている。完全に己の氣をコントロールしているのが見て取れた。




「それでマスター。その刀の名前は」


「名前は・・・顕現するときにフッと浮かんできた。この刀の名前は『奪焔神刀ダエンシントウ』だ」


「素晴らしい名です」


「感謝するゼロ。お前のおかげで俺は心氣顕現を会得できた」


「お役にたてたようで光栄です」


「すぐにでもこの力を試してみたい。ここを出るぞ。魔獣狩りだ」


「承知しました」




海人は誰でもいいので戦い衝動に襲われていた。そしてこの刀の力を試してみたい。すべてを奪う力を!

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